警備会社の上場企業は日本に7社あるが、関西では東洋テックが唯一の存在。東京五輪の際も警備員を東京に派遣した実績がある 警備会社の上場企業は日本に7社あるが、関西では東洋テックが唯一の存在。東京五輪の際も警備員を東京に派遣した実績がある

『週刊プレイボーイ』で連載中の「坂本慎太郎の街歩き投資ラボ」。株式評論家の坂本慎太郎とともに街を歩き、投資先選びのヒントを探してみよう。金のなる木はあなたのすぐ近くに生えている!

今週の研究対象 
大阪・関西万博(東洋テック)

株式投資の王道は、経済効果の大きいイベントから逆算して銘柄を探すこと。では、4月に開催される大阪・関西万博関連で儲かる上場企業といえばどこ? 目をつけたのはゼネコンでもホテルでも鉄道でもなく......?

助手 2025年の一大イベントといえば、4月開幕の大阪・関西万博ですよね。2.9兆円の経済波及効果があるっていう報道を見まして。万博で儲かる企業に投資できませんか?

坂本 経済産業省による試算だね。経済波及効果って、イベントとは直接関係ない周辺の飲食店や宿泊施設、交通機関とかが受ける恩恵まで含んでます。範囲が広いだけに各企業が受ける恩恵は濃淡があるので、銘柄選びは意外と難しいよ。

助手 パビリオンの建設費が膨大だって話があったような。ゼネコンは儲かるんじゃないですか?

坂本 建設費が膨れ上がったのは資材や人件費が想定よりもかさんだから。ゼネコンはそれほど儲かってないんじゃないかな。それよりも警備担当の東洋テックが面白いと思う。

助手 聞いたことない会社だなぁ。

坂本 関西地盤だからですよ。関西の警備会社としては唯一の上場企業なんです。万博では筆頭株主のセコムと一緒に会場警備を担当します。万博実施に合わせて公共交通機関からも警備の依頼を受けているから、まさに万博外でも波及効果をフルで享受しているといっていい。

助手 セコムが筆頭株主なんですか。

坂本 そう。警備は人員の手配なんかが必要で、地元企業に一日の長がある。だから関東地盤のセコムは、関西の案件を受注したときに東洋テックに委託することも多いんです。関係強化のために株を持ってるわけ。

助手 なら、東洋テックは下請け的な立ち回りになって、利益も企業としての伸びしろも少ないんじゃ?

坂本 いや。同社にとって万博などのイベント警備は主力業務じゃなく、ほかに安定的な収益源があるんですよ。だから万博は、例年の業績に加えて上積みを期待できるボーナスみたいな立ち位置なんです。

助手 どういうことですか?

坂本 同社の警備事業の3.5割を占める主力は機械警備。建物にセンサーを設置して、異常があれば駆けつける手法です。東洋テックはもともと銀行の関連会社で、金融機関向けの警備会社だったんです。同社設立当時、機械警備は欧米の金融機関が採用していた最先端の技術だった。

助手 ひと口に警備って言っても、いろんな手法があるんですね。

坂本 ええ。ほかに常駐警備も強い。銀行とかの前に警備員が立ってるあれね。そういう専門性の高い警備は、契約打ち切りが少なく収益は安定的です。サブスクみたいなもんだね。

助手 なるほど。

坂本 さらなる収益源として、不動産事業とビル管理事業に進出してるのも同社の面白いところです。

助手 警備会社と不動産? つながりが見えないんですが。

坂本 ビル管理って、設備管理・清掃・警備をそれぞれ別の会社に委託することが多くて発注側にとっては面倒なんです。東洋テックは警備のノウハウや人材を横展開して、それらの業務をまとめて受注できるんです。そして、ビル管理の顧客を集めるために、不動産仲介業も営んでいる。仲介をやってれば、ビルの建て替えやオーナー交代の情報が入ってくるから営業に行けるでしょ。

助手 うまいですね。

坂本 そう。こういう安定的な収益を確保しつつ、最近はイベント警備が得意な会社を買収して業績の上積みを狙える体制になりました。イベント警備はイベントがあるときだけバイトを雇えばいいから、人件費も安いし効率的に儲けられる。長期投資で面白い企業になったと思います。

今週の実験結果 
安定的に儲ける仕組みを整えている。万博で利益を上積みできそうです!

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坂本慎太郎

坂本慎太郎さかもと・しんたろう

こころトレード研究所所長。ハンドルネームは「Bコミ」。日系の証券会社でディーラー、大手生命保険会社で株式、債券のファンドマネジャー、株式のストラテジストを7年間経験。ラジオNIKKEIや日経CNBCなどの投資番組へのレギュラー出演多数。著書に『プロ投資家が教える副収入1000万円の最短コース』(BEST TIMES books)など
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