一昨年、昨年に続く大人気恒例企画、今年もやります! 大化け株発掘の名手ふたりが、最新の四季報を片手に一年のトレンドを放談。今年の新NISA成長投資枠を何にするか迷っている皆さま、答えはここにありますよ!
■昨年は5倍株を見つけました!
――一昨年、昨年に続き、3回目の新春対談となります。
山本 昨年は渡部さんが挙げてたクオリプスの株価がすごかったね。大阪万博に出展するバイオベンチャーで、iPS細胞由来の心筋細胞シートを開発しています。
渡部 誌面に載ったときは2000円強でしたが、9月には一時1万円を超え、5倍株となりました。また、一昨年挙げた熊本関連の企業も、TSMCの稼働に伴って一気に株価を上げましたね。ぜひ今年も有望企業を見つけ出したいです。
――まずは『会社四季報』元編集長の山本さん、新春号の特徴を教えてください。
山本 なんといっても株価に大きな影響力を持つことですね。3月決算企業の通期決算に向けて、各記者は取材を重ねて業績予想を見直します。記者の今期業績予想が会社発表の予想を上回った銘柄は、投資家の注目が集まって株価が動きやすい。
さらに新春号では、来期業績予想とその理由を最低でも1行は書く決まりなんです。会社予想が公表されていないタイミングでも記者の予想は載っていますから、先回りして来期好調な企業を発掘できれば、儲けのチャンスになりますよね。
――四季報を通算100冊以上、全ページ読破し続けている渡部さんの読み方は?
渡部 いつも編集後記から読み始めます。ここ、編集長がその号の全体的な傾向を書いてくれてるんですよ。今号には【累進配当】(業績の良しあしにかかわらず、配当を増やすか据え置く方針のこと)などのワードが載っていました。
これに各企業の記者コメントに出てくるキーワードの増減なども併せて分析すれば、今後の市場環境や旬の投資テーマがわかるんです。
山本 あそこ、そんなにじっくり読んでくれる人がいたんだ。うれしいなぁ。
――新春号から予想する、今年の株式市場の行方は?
渡部 記者コメントでは前号比で【快走】というキーワードが増えた一方、【赤字】系のワードも増え、業績の二極化が進んでいる印象でした。銘柄選びがこれまで以上に投資成績に影響しそうです。
――なるほど。では早速、注目テーマと銘柄を!
■テーマ1【最高益】
渡部 前号で好調だったキーワードを今回も狙うという手があります。前号で記者コメントに【最高益】とあった113銘柄の株価は、代表的な株式指数・TOPIXをなんと約2%も上回った。
山本 運用のプロでも至難の業じゃない?
渡部 ええ、こんな結果を出せるプロはほとんどいません。ほかにも【連続増配】の銘柄は前号でTOPIXを約0.6%上回りました。前号から3ヵ月くらいの短期間でそうそうトレンドは変わりません。今号も同じキーワードが狙い目でしょう。
山本 【最高益】ならテクノスマートが面白い。過去のPERから見て割安だし、配当利回りも4.67%と高いよ。
■テーマ2【増益】
渡部 このほか、業績好調な銘柄を探すヒントになるのが巻頭の特集ページ「業種別業績展望」です。業種ごとに来期の業績の変化率が載っているから個別銘柄を調べる前にアタリをつけやすくなる。
展望によると【増益率】の上位はゴム製品とサービス業。【増益額】だと銀行と電気機器が上位で、いずれも業績の良化が見込めます。例えばゴム製品なら記者コメントの見出しが【連続増配】の住友理工は注目したいところ。
山本 電気機器なら半導体製造装置関連のサムコも【連続最高益】で良さそう。半導体製造装置はAI向けの設備投資で盛り上がっているからね。
■テーマ3【データセンター】
山本 それでいうと、注目したいのがAIの高速データ処理に欠かせない【データセンター】に関連する銘柄。データセンターは電力を大量消費するから、意外にも昭和チックな業界が恩恵を受けるんですよ。東京電力HD(ホールディングス)とか。
渡部 確かに記者コメントの見出しが、ズバリ【データセンター】ですね。
山本 「変電所など増設急ぐ」と書いてあって、高度経済成長期かと思ったよ。電力という視点だと裾野は広くて、丸全昭和運輸は「発電用原料の輸送も好調」。
国内最大級のバルクターミナルと、国内では数少ない10トン級のバラ積み船を保有しているのが強みなんです。
■テーマ4【船不足】
山本 船は最近全然足りていない。特に大型輸送船。造船も旬の投資テーマだね。
渡部 ええ。イスラエル・ガザ戦争でスエズ運河を避けて遠回りする船が増えたし、パナマ運河は水不足で通航できないことが多いんですよ。要は航路変更で航行日数が増えて、船が出払ってしまってるんですよね。
山本 環境対応で燃費のいい船に替える需要もあって、今後20年くらい、造船数は拡大を続けるという予測がある。
渡部 そうなると名村造船所が1番手。記者コメントの見出しも【最高益】ですし。
山本 ちょっとヒネって寺崎電気産業も面白い。船舶用の配電制御システムで高シェアなんです。大株主にも注目。昨年大ヒットした投資本『わが投資術』(講談社)の著者で資産800億円の清原達郎さんが第10位の株主なんですよ。なんか期待できそうでしょ?
■テーマ5【航空機不足】
山本 船だけじゃなくて、航空機も足りてないよね。
渡部 コロナ明けで旅客数が回復して機体の発注も右肩上がりなんですが、米ボーイング社の生産がストライキなどの影響で滞ってるんです。
航空各社は中古機体のリースでしのいでいる状況だから、航空機の貸し出しが増えて【最高益】のリース大手・東京センチュリーなんて狙い目でしょうね。
山本 古い機体を改修して延命する需要も伸びている。「航空機部品フル稼働」とある遠藤製作所にも注目です。そしてここにも、第2位株主に清原さんが出てくるんだよねぇ。
渡部 さすがですね。
■テーマ6【株主にあの有名人が!】
渡部 最近は四季報の株主欄で、清原さんみたいな大物投資家の銘柄を追いかける人も増えてるとか。
山本 まったく吟味せずに買うのは褒められた話ではないけど、大物がどうしてその銘柄を選んだのか考えるのは勉強になるかもしれない。
渡部 清原さんなら、成長性が高いのに割安な小型株、みたいな傾向があるから参考にしたいところです。
山本 海外の大物だと、ウォーレン・バフェットの口座も株主欄に載ってるね。
渡部 伊藤忠商事の3位「BNYM・AS・AGT・CLTS10パーセント」というのがバフェットですよね。伊藤忠はバフェットが投資してから株価が急騰した経緯がある。やはり大物投資家の動向は追っておいて損はないかもしれません。
■テーマ7【進撃のインド】
山本 話は航空機に戻るけど、ボーイングに過去最大の発注をしたのは実はインドの航空会社でした。インドが買い手としての存在感を増してると思って注目してるんだけど。
渡部 中国が不景気で振るわない今、インド市場が業績の下支えになってる日本企業もあるでしょうね。
山本 調べたら、インド関連企業はけっこうある。関西ペイントには「インドが牽引役」と書かれているし、丸紅にいたっては見出しタイトルが【インド】。成長市場で地政学リスクも少ないインドに食い込めている企業は、今後投資先として選ばれるんじゃないかな。
■テーマ8【海外マネー】
渡部 世界情勢は2025年の相場を語る上で避けられないテーマですよね。1月のトランプ米大統領就任に始まり、2月にはEUの要・ドイツで総選挙が予定されています。
日本でも7月には参院選がある。多くの主要国で選挙や政権の交代があるわけです。加えてアメリカやドイツ、それにフランスでも社会の分断と対立が進み、政治が不安定です。
となると、相対的に安定している日本の株に追い風が吹くと思います。いったん米国の相場が崩れれば、海外の機関投資家がこぞって日本に資金をシフトする可能性がある。1990年以来の日米株価の逆行が起こってもおかしくありません。
山本 海外の機関投資家なら、時価総額が大きい銘柄から買っていきそうだね。
渡部 運用額がケタ違いですからね。トヨタ自動車やソニーグループあたりから買われていくんじゃないでしょうか。その次に半導体関連という流れかな。
山本 2025年は激動の相場になりそうだね。
渡部 激動の末、株価は上がると思います。歴史的に見ると巳年は72.7%の確率で株価が上昇しています。さらに西暦の下1桁が5の年は、なんと株価上昇率が100%なんです。2025年が日本株の新時代の幕開けになることを期待しましょう!
*データはいずれも 1月20日時点