現在の社長は元証券マンの藤川祐樹氏(36歳)。社名は、新約聖書の『マルコによる福音書』を書いた修道士サン・マルクに由来する 現在の社長は元証券マンの藤川祐樹氏(36歳)。社名は、新約聖書の『マルコによる福音書』を書いた修道士サン・マルクに由来する

『週刊プレイボーイ』で連載中の「坂本慎太郎の街歩き投資ラボ」。株式評論家の坂本慎太郎とともに街を歩き、投資先選びのヒントを探してみよう。金のなる木はあなたのすぐ近くに生えている!

今週の研究対象 
飲食店の買収(サンマルクホールディングス)

カフェでおなじみのサンマルクが、ひそかに一世一代の大勝負をかけていたことをご存じだろうか? ふたつの牛カツ専門チェーンを大胆に買収。これは投資のタネだ!

助手 すかいらーくホールディングスが買収した「資さんうどん」って有名なんですか? SNSで「あの味が全国区に!」って盛り上がってましたけど、どうもピンとこなくて。

坂本 九州以外ではほとんど展開してなかったから無理もない。北九州地盤の会社で、福岡県特有の軟らかいうどんを出す店ですよ。

助手 ずいぶんローカルな企業みたいですけど、買収の理由って?

坂本 すかいらーくは成長戦略として駅前への出店や多業態化を掲げているから、狙いはそのあたりかな。うどん店は狭小テナントにも出店できるから駅前進出も可能です。系列にうどん店がなかったから、多業態化を進める上で欲しかったのもある。

助手 なるほど。

坂本 実は外食業界では買収が増えています。人口減少で市場規模が縮小する中でも業績を拡大しようと、大企業が非上場企業を買ってるんですよ。サンマルクホールディングスなんて、牛カツ店の運営企業をわずか2ヵ月ほどで一気に2社も買ったからね。「牛かつ もと村」と「牛カツ京都勝牛」って知らない?

助手 知ってます! 東京ではインバウンド客が行列してますね。ただ、「サンマルクカフェ」の企業が牛カツ店を買ってメリットあります?

坂本 同社は今でこそカフェのイメージが強いけど、祖業は焼きたてパンを出す中価格帯のレストラン「サンマルク」。そして「鎌倉パスタ」や「神戸元町ドリア」を含めたレストラン事業は、まだ売り上げの半分以上を占めています。つまり、レストランの運営ノウハウ自体は持ってるわけ。喫茶事業は後から開発して成長の牽引役になったものです。

助手 へぇー。にしても、牛カツを選んだ理由って? 10年前の大ブーム以後、今では行列も短くなったような。にもかかわらず一気に2社買収なんて、相当な自信ですよね。

坂本 牛カツ業態の買収にはふたつの理由があると思います。まず、単純に儲かる商材なんです。牛肉を使うから豚カツよりも単価を高く設定できる。さらに、レア気味で食べるために揚げ時間はたったの1分ほど。調理に時間がかからないから、客席の回転率も高いんです。

助手 高単価と高回転率の掛け合わせなら確かに儲かりますね! 

坂本 そう。加えて、海外展開も狙ってるはず。牛肉は外国人にもなじみやすいからね。インバウンド客が行列を作ってるのが何よりの証拠。実際、「もと村」は直営で2店舗を海外展開してるし、「勝牛」はFCだけど海外に21店舗ある。一方でサンマルクは東南アジアや中国で海外展開に失敗しています。牛カツ業態は、成長余地のある海外に打って出るための起死回生の策なんでしょう。

助手 その策は当たりそうですか?

坂本 筋は悪くないけど、気になるのは買収価格が高いこと。特に「もと村」は同社純利益の20倍以上の価格で買っています。一般的に、飲食の買収は純利益の10倍の価格がつけば上出来だから相当高いよ。万が一、買収事業が軌道に乗らなかったら会計上「損失」として処理する必要があるんだけど、そうなれば高値づかみの分、損失は大きくなる。

助手 じゃあ投資はできないかぁ。

坂本 いや。とりあえず来年度は買収効果で営業利益が約1.5倍になる計算です。それに、海外進出に成功すれば、企業利益は一段上のステージになる。大勝負をかけたサンマルクの頑張りに期待して、長期投資も面白いと思います。

今週の実験結果 
牛カツ店買収は海外進出の足がかり。当たれば大きいですよ!

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坂本慎太郎

坂本慎太郎さかもと・しんたろう

こころトレード研究所所長。ハンドルネームは「Bコミ」。日系の証券会社でディーラー、大手生命保険会社で株式、債券のファンドマネジャー、株式のストラテジストを7年間経験。ラジオNIKKEIや日経CNBCなどの投資番組へのレギュラー出演多数。著書に『プロ投資家が教える副収入1000万円の最短コース』(BEST TIMES books)など
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