1916年に創業。本社は徳島県。もともとは和紙のメーカーだったが、その技術を生かし今では特殊紙や不織布に強みを持つ 1916年に創業。本社は徳島県。もともとは和紙のメーカーだったが、その技術を生かし今では特殊紙や不織布に強みを持つ

『週刊プレイボーイ』で連載中の「坂本慎太郎の街歩き投資ラボ」。株式評論家の坂本慎太郎とともに街を歩き、投資先選びのヒントを探してみよう。金のなる木はあなたのすぐ近くに生えている!

今週の研究対象 
今年激増の太陽フレア(阿波製紙)

昨年、本来観測できない地域でオーロラが出現したことを覚えていないだろうか。その原因は太陽フレアの増加で、今年ピークを迎えるという! 棚ボタ企業を探してみた。

助手 今年は太陽のせいで2週間くらいケータイが使えなくなるかもって聞きました。本当ですか?

坂本 たぶん太陽フレアのことですね。太陽は周期的に活動が活発になって大量の電磁波を放出するんです。そうなると、無線通信やGPS、携帯電話などに障害が出る可能性がある。でもあくまで可能性の話だし、障害が起こっても2週間ずっと続くわけじゃない。

助手 なるほど。もし重大問題なら、その対策で儲かる企業に投資できそうだと思ったんですが......。

坂本 電磁波対策関連銘柄も、あるにはあるよ。例えば阿波製紙は電磁波を吸収する「電磁波吸収体」の開発に成功しています。厚さ0.3~1.2㎜の薄さが特徴で、自動運転車で目の役割を担うミリ波レーダーの誤作動回避を期待できる。

助手 製紙会社が電磁波対策の製品なんて作れるんですね。

坂本 同社は社名こそ「製紙」だけど、印刷用紙や家庭紙といった普通の紙は作らない。一般的なパルプ以外から作る特殊紙の専業メーカーなんです。電磁波吸収体は特殊紙で培った技術で開発したんですよ。

助手 パルプ以外から紙を作る?

坂本 紙って、繊維が含まれるものなら幅広く原料にできるんです。例えば綿とか。和紙だってコウゾやミツマタという植物の繊維から作る。阿波製紙の本拠地・徳島県は古くから和紙の製造が盛んで、同社も和紙の製造から出発した経緯がある。その後、特殊紙の材料である繊維を扱う技術を生かして、機能紙や不織布のメーカーになっていったわけ。先の電磁波吸収体も、電磁波を吸収する炭素系素材に特殊な繊維を混ぜて薄くしたのがミソなんです。

助手 繊維の技術に関連してれば、幅広く製品を開発してるんですね。

坂本 そう。ひと口に繊維と言っても、化学繊維から金属繊維、鉱物繊維までいろいろあるから、組み合わせ次第で幅広い領域に進出できる。例えば、現在の売り上げ構成の半分を占める自動車関連資材には1960年代から進出しています。

助手 自動車に紙でできた部分なんてありましたっけ?

坂本 実はたくさんあるんですよ。まず、エンジン用の濾材は歴史が古いね。エンジン内でガソリンを燃焼させるには、外部から空気を取り込む必要がある。ただし、空気と一緒にほこりとかを吸い込むとエンジンを傷めてしまう。そこで、フィルターとして機能紙を使ってるんです。同様にオイルや燃料周りでも紙のフィルターが使われています。濾過する対象によって繊維の太さや材質を使い分けるところが同社の強み。

助手 へぇー。でも、EVシフトの時代に大丈夫ですかね?

坂本 そのへんも抜かりない。EVで使用する電池の断熱材やセパレーターなどの新製品を育成しています。それに同社には水処理関連資材という柱もある。こちらも、半導体というビッグウエーブが来てるからね。

助手 というと?

坂本 半導体の製造には純度の高い「超純水」が欠かせないんですが、阿波製紙は超純水を作るための逆浸透膜を支える分離膜支持体用の不織布を販売しているんです。AI時代の到来で半導体の需要も増えると見込まれているから、こちらの事業も要注目です。とはいえ、足元の業績は自動車業界の不調や設備投資の増加で思わしくない。面白い企業として覚えておいて、業績の底打ちを確認してから投資してもいいと思います。

今週の実験結果 
直近の業績は微妙ですが、市場のテーマに沿った事業をいくつも持った面白い企業です!

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坂本慎太郎

坂本慎太郎さかもと・しんたろう

こころトレード研究所所長。ハンドルネームは「Bコミ」。日系の証券会社でディーラー、大手生命保険会社で株式、債券のファンドマネジャー、株式のストラテジストを7年間経験。ラジオNIKKEIや日経CNBCなどの投資番組へのレギュラー出演多数。著書に『プロ投資家が教える副収入1000万円の最短コース』(BEST TIMES books)など
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