業績計画が非常に保守的なことで知られ、昨期も上方修正を実施。直近では特別利益が多く出たため、各種指標も割安に出ている
『週刊プレイボーイ』で連載中の「坂本慎太郎の街歩き投資ラボ」。株式評論家の坂本慎太郎とともに街を歩き、投資先選びのヒントを探してみよう。金のなる木はあなたのすぐ近くに生えている!
今週の研究対象
湾岸エリアの再開発(巴コーポレーション)
所長の事務所がある、東京・勝どきはまさに再開発が進行中。それに伴い人口は増え、地価は高騰している。この恩恵を受けられる上場企業はないものか? 勝どきに本社を構えるこの会社に注目!
助手 所長の事務所の辺り、近頃新しい建物ができてきてますね。
坂本 事務所がある東京の勝どき駅周辺は、一昨年から再開発が進んでるんです。老朽化した団地の跡地に商業施設やタワーマンション、オープンスペースなんかを造っているらしい。もともとこのエリアは人口流入が続いていたんだけど、再開発でさらなる人口の増加や不動産価格の上昇が期待できる。恩恵を受ける地場の企業も多いかもね。
助手 この再開発で恩恵を受けそうな上場企業ってないですか?
坂本 再開発っていっても該当エリアが広くないからなぁ。そうだ! 巴コーポレーションがある。同社はふたつの理由で、なかなか面白い存在かもしれない。
助手 何をやってる企業ですか?
坂本 大空間構造建築に強みを持つ建設会社ですよ。
助手 大空間構造建築?
坂本 大きな空間を確保するために柱同士の間隔を広く取った構造の建築のこと。例えば商業施設とか、イベントのパビリオンとか、学校の体育館とか。同社は戦前に創業者が、大空間構造建築に欠かせないトラス構造をさらに改良した「ダイヤモンドトラス構造」を開発。国内の代表的な大空間構造建築を数多く手がけてきました。東京駅八重洲口のグランルーフとか。
助手 あぁ、あの傘みたいな庇が張り出してる所ですね。
坂本 そう。札幌や長野のオリンピック会場や、東京ビッグサイトも同社の仕事です。長野オリンピックの会場では、屋根部分を地上で造ってからジャッキで持ち上げる新工法を開発して工期を一気に短縮しました。
助手 マイナーな会社だと思ってましたが、著名な建築物を手がけてるんですね。
坂本 同社は創業以来「独自技術」や「日本初」の事例に事欠かない。常に先端的な技術を開発することで各時代を代表する建造物に多く携わっているんです。送電用の鉄塔や電柱の国産化に初めて成功したのも同社だし、その技術を生かして東京スカイツリーの鉄骨も手がけました。
助手 そうそうたる実績ですね。
坂本 そうだ、君の卒業した小中学校の体育館ってどんな形だった?
助手 ごく一般的な体育館だと思いますよ。かまぼこみたいな屋根の。
坂本 実は、かまぼこ屋根の体育館も巴コーポレーションがトラス構造の独自技術で開発したものなんです。
助手 なんと! あの体育館って全国どこにでもあるじゃないですか。さぞかし儲かったんでしょうね。
坂本 独自の技術力がある企業は新たな市場をつくって総取りできる可能性があるし、参入障壁が高いから利益率も高く、儲けが大きいんですよ。これからも世界的イベントの誘致や、リニア、新幹線などの大規模インフラの整備があれば、巴コーポレーションに声がかかるはず。安定的に大儲けできるわけじゃないけど、チャンスが巡ってきたときの爆発力には期待できる。
助手 なるほど。同社が面白いふたつ目の理由って?
坂本 巴コーポレーションは本社が勝どきにあって、エリア周辺に不動産も持ってるんです。つまり、勝どきの再開発で同社所有の不動産評価額も上昇する可能性がある。その含み資産額が評価されて、株価も徐々に上がっていくかもしれない。加えて同社は財務が盤石だから、今後、株主還元を充実させる可能性もある。長期投資で面白いと思います。
今週の実験結果
独自技術を持っているので利益率が高いのが特徴。長期投資に向いています!