2001年、北海道札幌市で創業。社名はオーストラリアにある世界最大級の一枚岩「エアーズロック」の正式名から 2001年、北海道札幌市で創業。社名はオーストラリアにある世界最大級の一枚岩「エアーズロック」の正式名から

『週刊プレイボーイ』で連載中の「坂本慎太郎の街歩き投資ラボ」。株式評論家の坂本慎太郎とともに街を歩き、投資先選びのヒントを探してみよう。金のなる木はあなたのすぐ近くに生えている!

今週の研究対象 
行政の入札(うるる)

ある日区役所を歩いていたら、入札募集の張り紙を見つけた助手。今どき紙って、アナログすぎやしないか!? そう思って調べてみると、これをチャンスに変えようと動く上場企業が見つかって......。

助手 先日、用事で区役所に行ったら面白いものを見つけました。

坂本 ほう。

助手 役所内の掲示板に「入札でパソコンを買うから、興味ある企業は3日後までに要申し込み」って内容の張り紙があったんです。張り紙で告知とは、非効率すぎやしませんか? 

坂本 サイトでも告知はされてるけどね。約9000もある自治体や行政機関のサイトを全部見に行くわけにいかないから、入札したい業者にとって不便なのは確か。市民にとっても良くないことではある。

助手 どういうことですか?

坂本 入札は適正価格で購入するために、広く参加者を募ろうとして実施するわけ。本当は、いろんな企業に案件の存在を知ってもらってこそ。行政だって改善したいはずです。

助手 関係者全員が困ってるってことですか。そういう大きな課題を解決できれば、儲かりそうですけどね。

坂本 そのとおり。うるるという会社の入札情報速報サービス「NJSS」がそれを狙ったビジネスです。

助手 すでにあるんですね。うるるはIT企業なんですか?

坂本 同社はちょっと変わった出自です。もともと、BPOサービスの会社として創業したんです。

助手 BPO?

坂本 ビジネス・プロセス・アウトソーシングの略で、企業が一部の業務を外部に委託してコスト削減を狙う戦略のこと。うるるはデータ入力などを請け負って、主婦などの在宅ワーカーに再委託していました。

助手 なるほど。でも、そこからNJSSまでの道のりが見えませんね。

坂本 もうひとひねりある。同社がBPOの次に取り組んだのが、クラウドソーシングサービスの「シュフティ」。BPOでは、うるるが営業して仕事を取ってきたり、成果物の品質を管理していたけど、その手間は相当なものです。それなら企業から直接、在宅ワーカーに発注してもらえば手間が省けるでしょ。

助手 なるほど。ただ、NJSSまではまだ遠そうですね。

坂本 いや。NJSSは、うるるが在宅ワーカーを使って始めた自社サービスなんですよ。クラウドソーシングで築いた在宅ワーカーの母集団と、BPOで磨いた在宅ワーカーへのディレクションノウハウをかけ合わせたサービスなわけです。

助手 まさか、在宅ワーカーが人力で入札情報を集めてるんですか?

坂本 そう。入札情報はサイトでも公開されるけど、ほとんどがPDFファイルでの掲載なんです。となると、サイトから自動的に情報を収集するプログラムでは対応できない。NJSSは企業向けの入札情報のデータベースだけど、最近はノウハウを生かして入札実務のBPOも開始したし、行政向けに入札を含む「調達」全体をカバーするデータベースも始めました。入札周りを「面」で取った場合のインパクトは大きいよ。

助手 そもそも入札情報にニーズがあると気づいたのもすごいですよね。

坂本 BPOやクラウドソーシングを提供しているから、発注状況を見れば何に需要があるかわかるんですよ。さらに在宅ワーカーへの報酬の相場なども知っているから事業化しやすい。実際、電話番サービス「fon desk」など在宅ワーカーを活用した自社サービスを次々と開発しています。在宅ワーカーの強みを横展開できる余地はまだ大きい。足元の業績はいまいちに見えるけど、前期が好調すぎたのと先行投資によるもの。長期投資で面白いよ。

今週の実験結果 
祖業からうまく事業を展開し、唯一無二のビジネスに育て上げた手腕は見事です!

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坂本慎太郎

坂本慎太郎さかもと・しんたろう

こころトレード研究所所長。ハンドルネームは「Bコミ」。日系の証券会社でディーラー、大手生命保険会社で株式、債券のファンドマネジャー、株式のストラテジストを7年間経験。ラジオNIKKEIや日経CNBCなどの投資番組へのレギュラー出演多数。著書に『プロ投資家が教える副収入1000万円の最短コース』(BEST TIMES books)など
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