携帯電話でのコンテンツ配信会社として、2004年に設立。06年に「ケータイ★まんが王国」を開始。20年、ぶんか社を子会社化した 携帯電話でのコンテンツ配信会社として、2004年に設立。06年に「ケータイ★まんが王国」を開始。20年、ぶんか社を子会社化した

『週刊プレイボーイ』で連載中の「坂本慎太郎の街歩き投資ラボ」。株式評論家の坂本慎太郎とともに街を歩き、投資先選びのヒントを探してみよう。金のなる木はあなたのすぐ近くに生えている!

今週の研究対象 
電子マンガ(ビーグリー)

コロナ禍で株価が爆上がりした、電子マンガ業界。市場は引き続き伸びているのに、株価はイマイチ振るわない。いったいなぜ? そのメカニズムと、今後が期待できる会社を探る!

助手 前回、5年間を通しての値上がり率ランキングを集計しました。コロナの巣ごもり需要で盛り上がった電子マンガ銘柄がランク外で、ちょっと意外でした。僕はまだマンガアプリを普通に使ってますし、周囲の友人にもヘビーユーザーが多そうです。なのに、なんで株価は上がってないんですか?

坂本 株価を左右する要素は業績と投資家の期待、このふたつなんだけど、いずれもコロナの初期がピークだったからね。まず、電子マンガ銘柄は、2021年期などに巣ごもり需要の追い風を受けて業績が大きく伸びました。同時期に投資家の期待も盛り上がって、株価も上値を追う展開になった。ところが翌期には伸びが鈍化したり、なんなら減益になる銘柄が増えたんです。それで投資家の期待が剥がれ落ちて株価が上がりづらくなった。

助手 でも、業績の成長が急に鈍化したのはなぜなんですか?

坂本 過当競争による値引き合戦が原因ですよ。当時、マンガアプリのほとんどは、出版社や電子書籍の卸業者である取次と配信契約をしてアプリに配信していました。つまり、どのアプリも仕入れ先が同じだから配信されているマンガも似通っていた。

助手 となると、ユーザー的にはどのアプリを選んでも同じですね。

坂本 そう。コンテンツが差異化されていないから、ユーザーは料金の安さや知名度を基準にマンガアプリを選ぶようになった。そこでマンガアプリ各社は大幅なポイント還元や宣伝合戦を繰り広げるハメになり、費用の増加で成長が鈍化したんです。

助手 確かにマンガアプリって、「マンガを読むのに必要なポイントを1万円分買うと30%増量」みたいなキャンペーンをいつもやってます。あれは実質、割引なわけですもんね。それじゃあ、いくら電子マンガのユーザーが増えても、業界構造的に儲からないのかぁ。

坂本 なので、最近は競争激化の原因であるコンテンツの横並びを解消しようと工夫する動きがあるんです。中でもうまくやっているのは『まんが王国』のビーグリーかな。

助手 どんな工夫をしてるんです?

坂本 まず、老舗出版社のぶんか社を買収しました。同社はレディースコミックなど女性向けマンガに強く、ユーザーの6割が女性のまんが王国と相性がいいんですよ。

助手 ぶんか社の既存コンテンツを独占配信する狙いですか?

坂本 それもあるけど、編集体制を獲得すればオリジナル作品を作れるからね。実際、ぶんか社買収後には日本テレビと資本業務提携を結んでいます。日テレ制作のドラマや映画をマンガ化すれば強力なコンテンツになるし、クリエーターの育成でも協力し合える。最近では動画配信サービス「Hulu」とも同様の取り組みを始めたし、大手芸能プロのアミューズと協業して小説コンテスト受賞作のコミカライズなんかも始めた。

助手 なるほど。成果の程は?

坂本 まぁまぁかな。24年12月期の営業利益は前期比19.4%増だった。まんが王国が好調だったというより、ぶんか社の書籍や雑誌の売り上げが好調だったことによるんだけどね。ただ、自社グループで押さえているコンテンツのファンが増えるわけで、今後、まんが王国も独占先行配信などで利益が上向く可能性がある。それに、ぶんか社で出した利益を原資にポイント還元の競争力も上げられます。電子マンガ銘柄の中では面白い存在だと思います。

今週の実験結果 
独自コンテンツの強化を図る同社は他社に比べて有利。長期的に投資するのがよさそうです

坂本慎太郎

坂本慎太郎さかもと・しんたろう

こころトレード研究所所長。ハンドルネームは「Bコミ」。日系の証券会社でディーラー、大手生命保険会社で株式、債券のファンドマネジャー、株式のストラテジストを7年間経験。ラジオNIKKEIや日経CNBCなどの投資番組へのレギュラー出演多数。著書に『プロ投資家が教える副収入1000万円の最短コース』(BEST TIMES books)など
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