一連の暴落に対してトランプは「時には薬を飲むことも必要」と正当化した。いや勘弁してくれよ!
まさかこんなにムチャクチャだったとは!! トランプ米大統領が4月2日に相互関税の詳細を発表すると、世界中の株価が暴落した。まだまだ株価は下がるのか? 経済への影響は? 今後はどんな投資戦略を取るべき? 株式のスペシャリストたちに生き残るための知恵を聞いた!
■日経平均は歴代3位の大暴落
3月31日、日経平均は4.1%の強烈な下落に見舞われた。アメリカのトランプ大統領が、相互関税は全世界が対象になると発表したことを受け、時差の関係から世界に先駆けて日本の株式市場が被弾したのだ。
そして4月3日には、前日に発表された相互関税の全容を受け、米国を含む世界の株式市場も後を追い始める。
同盟国である日本にも24%の関税を課すというすさまじい内容に、週明け7日の日経平均は歴代3位となる7.8%もの大暴落を演じ、約1年半ぶりに一時3万1000円を割り込んだ。
そんな混乱もつかの間、9日には態度を豹変。報復措置を取らない国や地域に対して、相互関税の上乗せ部分を90日間停止することを発表し、株価は急激に値を戻している。
この数日の値動きについて、株式アナリストの岡村友哉氏が解説する。
「市場関係者はトランプ第1次政権を念頭に置いて、今回の政策も株式市場には結局プラスになると判断していました。だから4月2日に出た関税の内容を見て本気度を感じ、パニックになったのです」
著書に『カブ先生の「銘柄選び」の法則』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)があるマーケットストラテジストの田口れん太氏は、日本株における外国人投資家の存在感も大きかったと言う。
「東証の売買代金の約6割が外国人投資家によるもので、その多くが米国人だといわれています。彼らがトランプ関税にショックを受けて株式市場の出口に殺到した結果、関税とは関係のない日本企業の株も含めて叩き売りに遭ったということでしょう」
では、気になるこの先の展望についてはどうだろうか? 田口氏が続ける。
「3月末から4月9日までに、日経平均は約5400円、14.6%下げました。ではこれでリスク要因を出し切ったかというとそうでもない。というのも、4月11日に始まる米国の銀行・証券の決算発表で、今年の業績は厳しいという見通しが出そうだから。
そうなれば米国経済が厳しい=世界に景気悪化が波及すると投資家は判断します。相互関税の上乗せ部分を90日間停止する発表はありましたが、10%の相互関税は続きます。
また、日米の本格的な関税交渉は始まったばかりで、トランプがどう出るかは誰にも読めません。事情を株価に織り込むには時間がかかりそうです」
田口氏によると、2日に関税の詳細が発表される前に市場関係者が意識していた最悪のシナリオは、全世界に10%の相互関税をかけた場合の試算だという。この場合では、米国のGDPは1.2%、日本は0.9%押し下げられる。
「今は関税の90日間停止で当初の『最悪シナリオより悪い』が『最悪シナリオ』に戻った状態です。これからは相互関税を下げる交渉の中で、もう少し穏当な帰結に寄っていくことを期待したいところです。こうした事情を勘案して、私は日経平均の年内高値は4万円、そして安値は3万円を予想しています」
ここまでは株価の予測だったが、実体経済にはどんな影響を与えるだろうか? 真っ先に思いつくのは、自動車や和牛などを輸出する企業の業績悪化であるが、事態はそれだけにとどまらない。岡村氏は「景気が悪化する恐れがある」と警鐘を鳴らす。
「個人投資家たちは損失を意識しますから、消費意欲が減退しかねません。すると企業はこれまでのように値上げを断行できなくなり、業績が悪化します。せっかく徐々に賃上げムードが広がってきたのに、これでは台無しです。せっかく脱却の糸口が見えてきたデフレに後戻りしてしまう可能性もあるでしょう」
■安く放置されたお宝銘柄を探す!
とはいえ、このシナリオが実現するとしても少し先の話で、それを見通すにはトランプの動向を見守るしかない。であれば今できる備えは、逆説的に聞こえるかもしれないが、株式投資が一番手っ取り早い。
マーケットには、特に関税と関係ないのに売られ、割安に放置された銘柄がいくつも転がっているからだ。まずは田口氏に注目銘柄を聞いた。
「この先有望な銘柄は、3つの切り口で探せます。最初に、トランプ関税に関係ない銘柄。次に、関税で漁夫の利がありそうな銘柄。そして最後に、株主還元強化銘柄です。
まず無関係銘柄では、愛媛県を地盤とする地方銀行のいよぎんHDが面白い。業績予想を上方修正する好調ぶりで、関税がどうなろうと影響はごく小さい。かえって上昇余地が大きくなったとにらんでいます」
続いて"漁夫の利"銘柄は、産業用ロボットを手がけるファナックが挙がった。
「そもそもトランプ関税の目的は、輸入に障壁を設けて米国内の製造業を復活させること。そうなれば工場労働者が必要になりますが、今の米国ではあまりに賃金が高くなりすぎている。必然的に産業用ロボットに注目が集まります。つまりファナックは、トランプ関税がチャンスとなりそうなのです」
そして株主還元強化銘柄は、トヨタ自動車が有望だという。一見、関税のあおりをもろに受けそうな企業だが......。
「同社は経営効率の指標であるROE(株主資本利益率)の向上をうたっており、その手段として株主還元の大幅強化を行なうでしょう。数年後に配当が2倍になっても不思議ではなく、そうなれば配当利回りが今の3.8%から8%近くになる計算です。これはどう考えてもお宝銘柄ですよね」
一方、岡村氏は「個人投資家は先がわからない状況でムリに投資する必要はない」と前置きした上で、攻守のバランスを取った戦略を教えてくれた。
「安定業績で値動きが比較的小さく、かつ増配が見込める銘柄で安くなっているものがあれば、それは明らかに買いです。これを『守』としたら、不合理に下がりすぎている、急上昇の期待が大きいものを選ぶのが『攻』になります」
守りの銘柄では、住友不動産が面白いという。増収増益続きに加え、海外の投資ファンドが株主となったことで、利益還元がより強化される期待も持てるそうだ。
「攻めの銘柄では、半導体メモリー製造のキオクシアHDがいいですね。黒字転換を見込んでいますが、PER(株価を1株当たり利益で割った指標)は衝撃の3.5倍! 爆上げにかけたいところです」
両氏の注目銘柄を表にまとめてあるので参考にしてほしい。株を持っている人にとってはこの暴落はピンチだが、機を見極めれば日本人の誰もがチャンスに変えられるはずだ!