3月2日、大阪で行なわれた声優・田村ゆかり(38歳)のコンサートの最中、男性ファン(34歳)が突然、ステージに近づき、彼女めがけて携帯ラジオを投げつけるという事件が発生した。
威力業務妨害で逮捕された男性は、警察の調べに「気持ちを断ち切るためにやった」などと供述。そして、マスコミがこの事件を報じる際、「“永遠の17歳”をキャッチフレーズに活動していた田村さんが、最近、実年齢を公表したことで話題になっていた」とつけ加えたことから、彼女の実年齢を知った男性ファンが「ダマされた!」と逆上し、犯行に及んでしまったとの見立てが一般的に定着した。
しかし、声優業界に詳しいライターの西中賢治氏は首を傾げる。
「実年齢公表でキレるというのは考えにくいです。というのも、あくまで“永遠の17歳”はネタで、ファンはそれに乗っているだけでしたから。むやみに17歳と信じているファンなんて基本的にいないし、彼女もライブのMCで『田村ゆかりさん……じゅうななさいです』みたいなことを平気で言っていた。また、声優業界では“17歳教”という言葉もあるくらいで、“永遠の17歳”を公言している人はほかにもたくさんいるし、そこに信憑性を求める向きもない」
田村ゆかりファンのある男性も「“永遠の17歳”設定はデーモン閣下の10万×歳と同じようなもので織り込み済み」と語る。
一方、ある声優業界関係者からはこのような指摘も。
「田村ゆかりファンはほかの声優ファンとは性質が少し違うんですよ。彼女と彼女のファンらは、まとめて“ゆかり王国”とも呼ばれている。これは特殊な世界観を醸す彼らのことを第三者が評したことから始まった言葉です。
現在の声優業界で圧倒的な人気を誇るのは、水樹奈々と田村ゆかりのふたり。水樹の場合は紅白歌合戦に5年連続で出場するなど、活躍の場を広げている一方、田村はほとんど“外”に出てこない。結果として、声優業界でのポジション、ファンの濃さも他の追随を許さないほどになっている。ライブでの一体感、一糸乱れぬ“王国民”(田村ゆかりのファン)の動きなど圧巻で独特です。いうなれば、ガチな人ばかりといったところ」
容疑者を愚挙に駆り立てたのは?
そんな背景もあってか、ネット上では、実年齢公表以外の田村ゆかりの“キャラ変更方針”が、ガチな王国民を悲しみの底に突き落とし、容疑者を愚挙に駆り立てたのではという見方が根強い。
実際、事件前日に広島で行なわれたコンサートで、田村は「ゆかりは魔法使えないよ」「ゆかり王国って何? ここは日本だよ」とちゃぶ台返し的に設定を覆す発言を繰り返しており、ネット上でも驚きの反応が寄せられている。
「でも、一般の王国民は、いまさらキャラ変更で裏切られたという反応はないですよ。そもそも彼女はMCで毒舌や自虐ネタをバンバン入れてくる人で、今回の一連のネタもその範疇に収まるレベル。キャラ変更に怒ってファンが暴走というのは、話としては面白いですけどねぇ……」(前出・西中氏)
最後に、今回の騒動について、田村ファンの男性会社員が憤る。
「容疑者がどうして思いを断ち切りたかったのか、それは彼にしかわからない。実年齢公表や王国解散宣言でキレたのかもしれない。でも、そうだとしたら、それってものすごくイレギュラーな反応です。にもかかわらず、マスコミの報道や、ネット上の書き込みは、俺らのことを“30代後半の大人の女性を、魔法が使える17歳のお姫さまと信じきって応援しているイタいヤツら”と決めつけ、面白おかしくストーリーを仕立てている。それってなんかおかしくないですかね?」
王国民はみんな怒っている。
(取材・文/コバタカヒト[Neutral])