突然だが、「人外娘(じんがいむすめ)」あるいは「モンスター娘」と呼ばれる美少女(?)たちをご存知だろうか? 実はいま、この“人間ではない美少女”に萌える人が急増中なのだ。
シーンを牽引するのは2012年に『月刊COMICリュウ』(徳間書店)で連載がスタートした『モンスター娘のいる日常』(以下、『モン娘』)。現在、コミックが5巻まで発売されており、その売り上げ部数は、なんと累計100万部だ。
その人気は国内だけにとどまらず、昨年10月に出版された英語版の1巻は『ニューヨーク・タイムズ』紙の日本のマンガランキングで2週連続の1位を獲得。しかも、それまでトップに立っていたのはなんと『進撃の巨人』! あの人気作を引きずり下ろし、その後、6週にわたってベスト10内をキープするという快挙を成し遂げたのだ。
もちろん、人気作は『モン娘』だけではない。先月中旬には『セントールの悩み』『ヒトミ先生の保健室』『深海魚のアンコさん』といった、人外娘が登場するコミック最新刊がほぼ同時に発売され、秋葉原や一部の書店はちょっとした人外娘祭り状態になっている。
古くは『うる星やつら』のラムちゃん(宇宙人)や猫耳キャラなども人ではないが、マンガに詳しいライターの小林聖(あきら)氏によると、「今はもっと見た目からわかりやすく人間じゃないものを人外娘と呼ぶ傾向にあります」という。
しかし、容姿が普通の人間から離れれば離れるほど、恋愛の対象からも離れていくように思えるのだが……。人外娘に萌える、その理由はなんなのだろう。小林氏が続ける。
『モン娘』担当者が語る、人外が受け入れられる理由
「人外娘は普通の人間とは姿形が違いますから、それがコンプレックスとして設定されている場合が多いんですよ。普通の女のコにたとえるなら、太っているとか背が低いとか鼻が低いのと同じ。そういう悩みを抱えながら恋愛している姿を見ていると、親近感がわくんですね。僕も特に人外娘が好きというわけではありませんが、読んでいるうちに不思議と人外娘がかわいく見えてくるんですよ(笑)」
ブームの火つけ役である『月刊COMICリュウ』の副編集長で『モン娘』の担当編集者でもある徳間書店の猪飼幹太(みきお)氏も、その反響には驚いたという。
「くすぶっていたところに小さな火種を投げたら一気にワッと燃え広がった感じですかね。読者には30代以下が多いんですが、みんなゲーム世代なんですよ。『ファイナルファンタジー』や『女神転生』シリーズにはラミア(半人半蛇の怪物の女性)やハーピー(半人半鳥の魔物)、悪魔が登場しますが、そういったキャラクターに子供の頃から慣れ親しんでいるんですね。しかも、その手のキャラには女性キャラも多いですから、それで性的に目覚めた人も少なくない。そういう人たちには少なくとも抵抗はないんですよね」
時代が変われば美人の顔も変わるというが、もはや人間である必要もなくなっているようだ。
(取材/井出尚志[リーゼント])
■週刊プレイボーイ16号「もう普通の恋愛はできない!? 人外娘に萌える人々急増の理由」より