『モンスター娘のいる日常』(作者:オカヤド氏、以下『モン娘』)という漫画をご存知だろうか? 『月刊COMICリュウ』(徳間書店)にて連載中のこの作品は、5巻までの累計発行部数がなんと100万部を突破。さらに、海外でも英語版が日本のマンガランキングで1位になるなど、今、大ヒットしている漫画なのだ。

その内容は、ヘビ娘、ケンタウロス、スライム娘、人魚、クモ娘など、数々の「人間ではない美少女=人外娘(じんがいむすめ)」が登場するハーレム系ラブコメ……と、今イチ理解できない人も多いだろう。だが、実は今、こうした「人外娘萌え」がひとつの“萌えジャンル”として確立しつつあるのだ。

以前から同人誌の世界ではチラホラ見かけた「人外娘モノ」が、今では一般コミックにも進出し、『モン娘』以外にも『セントールの悩み』『ヒトミ先生の保健室』『深海魚のアンコさん』といった作品が、それぞれ大人気となっている。

この現象を、実際のマニアはどう思っているのだろう。人外娘Only同人誌即売会「人間じゃない♪」の主催、S-BOW氏に聞いた。

「人外娘が人気だとこうして取り上げていただくのは素直にうれしいですね。私が人外娘の同人誌だけを扱う即売会を最初に開催したのは2011年11月ですが、そのときに参加したサークルは13しかありませんでしたから。昨年、4回目の即売会を開いたのですが、今のところ40のサークルに参加していただけました。3倍になりましたね。

ただ、初回からお客さんの数は多かったんですよ。普通この手の即売会ってサークル数×10倍のお客さんが来れば成功と言えるんですけど、200人近くのお客さんが集まりましたから。しかも、どのサークルも自分たちの作品が売れると思ってないから、刷り部数が極端に少なかったんです(笑)。案の定、どこもすぐに売り切れて、開始15分ぐらいで終わってしまいました。それまで同じ趣味の人同士で集まって、話ができる機会がなかったんだと思います」

つまり、潜在的には多くの「人外娘好き」が存在していたのだが、それをひとつのマニアとして扱う場が無かったということだ。

人外娘好きにはM属性の人が多い?

では、「人外娘好き」にはどんな人が多いのか?

「簡単に言うとM属性の人ですね。ヘビ娘に絞められたり、スライム娘に溶かされたいって人が多い(笑)。

ただ、好みはすごく細分化されていて、だいたいは何かしらの目覚めのきっかけがあって、ずっとそれを追っている。ある人は小学生のときに見た『セーラームーン』に出てきた『ジャーマネン』というスライム系のキャラで性に目覚めて、30代ですがいまだにジャーマネンさんひと筋です。リアルの女のコには興味がありません。そのぐらいこだわりを持っている人は多いですね。

だから、実は人外娘の定義もすごく曖昧(あいまい)なんです。私のサークルは“人間じゃないもの”、つまり、たとえネコ耳がついているだけでも人外娘だと思っているんですが、『そんなものは人外娘じゃない』という人もいるし、もっと言えば単眼娘(ひとつ目娘)も微妙なんです。目がひとつないだけで形は普通の人間ですから『あれは人外娘に入れてくれるな』という人もいる。ほかにも『虫はカンベンしてくれ』とか『顔だけは絶対にイジるな』とか『下半身だけでなく上半身もウロコだらけで』とか、本当に千差万別です」

よくまとまりますね(笑)。

「正直言うと今は、あっちにも居場所がない、こっちにも居場所がないという人が集まって人外娘ファンというものを形成してる気はしますね。もし、もっと人外娘好きが増えたら、集まりも細分化するかもしれないです。結局突き詰めると個人の好みになってしまうんですよね」

とはいえ、『モン娘』などのヒットにより、ライトな人外娘ファンが増えているのは事実。まだブームと呼ぶには小さなうねりかもしれないが、今後の動きにも注目したい。

(取材/井出尚志[リーゼント])

■人外娘Only同人誌即売会「人間じゃない♪×5」日時:2014年5月25日(日)12:00~場所:川崎市産業振興会館4Fhttp://nothuman.info/