甲冑(かっちゅう)を身に着けたカワイらしい女のコ、騎馬にまたがった筋骨隆々(きんこつりゅうりゅう)の漢(おとこ)……様々な個性的“武者絵”が集まっているのは、本日11日(木)から東京・秋葉原のアールジェネシス秋葉原で開催されている「第3回 武者絵展『武者絵百人展』巡回展」だ。
会場内にずらりと立ち並ぶ武者たちはなんとその数、104人(枚)。105人(1枚は合作)のイラストレーターや漫画家、メカデザイナーたちが描き下ろしでオリジナルの武者を描いている。
そのメンバーは錚々(そうそう)たる顔ぶれ ! 「週刊ヤングジャンプ」でも活躍しコメディ4コマ漫画を得意とするさんりようこ氏や恋愛漫画『クピドの悪戯(いたずら) 虹玉(にじだま)』がドラマ化され人気となった北崎拓(たく)氏。今なおファンの多い『ツルモク独身寮』の窪之内英策(くぼのうちえいさく)氏に、本誌「週刊プレイボーイ」で『ワーキングガールH』を連載していたもんでんあきこ氏、「週刊少年マガジン」で『哲也-雀聖と呼ばれた男』を描いていた星野泰視(やすし)氏など漫画家だけでもこのメンバー。
さらに、アニメ『機動戦士ガンダム00 -Second Season-』でメカデザインを担当した福地仁(ふくちひとし)氏、大ヒットアプリゲーム『パズル&ドラゴンズ』のイラストレーターのひとり、安達洋介氏など各方面で絵に関わるバラエティに富んだジャンルの人々が集結している。
垣根を越え、こうして彼らが集まった理由となったのは東北の復興支援。自身もアニメーターやイラストレーターとして幅広く活躍、「武者絵展」実行委員会の共同代表として主催する横田守氏が開催のきっかけを話す。
「東日本大震災が起きた当時、原発などの関係もあって、風評被害などネガティブなイメージが先行していたじゃないですか。でもその地元で頑張っている人がいるわけで、彼らの心の支えになっていたのが、『相馬野馬追(そうまのまおい)』というお祭りだったんですよ。そこでお祭りを知ってもらうひとつとして、イラストをお願いされたんですよ 」
「相馬野馬追」とは南相馬市で1千年以上続く神事。平将門が行なったという“野に放たれた馬を捕らえる軍事訓練”と、その馬を神前に奉納したことが由来とされている。数百の騎馬武者が雲雀ヶ原(ひばりがはら)一面で御神旗(ごしんぎ)を奪い合う「御神旗合戦」は大迫力! 海外でもファンが多く世界的に評価されている。展示会で“武者絵”をテーマとしたのはそのためだ。
作家に遭遇のチャンス!?
「自分の親族が岩手出身というのもあって東日本大震災後、4月くらいからボランティアとして東北に行っていたんです。そこで現地の人々から『同情されたいのではなく、忘れないでほしい』という声を聞いていました。なので、その一環でキャッチーなものとしてイラストがその“入り口”となればと、他のボランティアに関わっていた絵に関係する知り合いに声をかけたんです」
2012年の7月から始まった第1回では、イラストだけでなく、当時の写真やお祭りの説明なども展示。ただ準備期間が短く、当日に現場で設営したりと本当にバタバタだったとか。
「急な話でしたし、1度だけで終わるつもりだったんですけど、思いのほか地元の皆さんに喜んでもらえて。『相馬野馬追』のPRとして続けていければと。参加している作家はもともと36人だったのが、私や知り合いの誘いを通じて有志が増え、今では100人を超えました。皆さんも普段の仕事がある中で描いてくださり、ほかにも多くの人がボランティアとして参加してくださっています。人の縁が繋いでここまで大きくなって、本当に嬉しいですけど。大変ですね(笑)」
展示されているイラストはそのすべてがオリジナルの一点もの。会場で販売されている全作品をまとめた図録(3000円)以外では、二度とお目見えする機会はないかもしれない。
さらにファンにとって喜ばしいのは、横田氏はもちろん、ほかの作家たちも来場している可能性があるのだ。応援している作家が目の前にいることはまたとないチャンス! 開催期間中に何度でも足を運び、運が良ければ勇気を出して声をかけてみるか!
(取材・文/週プレNEWS編集部)
【第3回 武者絵展「武者絵百人展」巡回展】 ■東京巡回展 会場:アールジュネス秋葉原 期間:9月11日(木)~17日(水) 時間:11:00~19:00(最終日のみ18:00終了)
■岩手巡回展 会場:岩手県公会堂 期間:10月30日(木)~11月2日(日) 時間:未定