10月19日時点での放送回数は2436回。『笑点』(日テレ系、毎週日曜17時30分~)は1966年5月の放送開始から48年続く、いわずとしれたご長寿番組だ。しかも、未だに高視聴率番組でもある。
あの陽気なテーマソング、カラフルな着物を身にまとった落語家たちの楽しい丁々発止……日本の日曜夕方の顔『笑点』は、1966年5月にスタートした。日本のテレビ界において、タイトルも変わらずに、ここまで長く続い ているバラエティ番組は、『笑点』ただひとつである。
これまでの最高視聴率(関東地区ビデオリサーチ調べ)はなんと36・1%(74年10月)、この1年の平均視聴率(同)は16.5%で、時には約20%にも達するという。名実ともに国民的番組として愛さあれ続けている。
しかし、『水戸黄門』も『暴れん坊将軍』も終了し、時代劇というコンテンツは地上波から姿を消している。なのに、なぜ同じく高齢者ファンが多いはずの『笑点』は、今も高い人気を誇っているのか?
「もちろん、主な視聴者層は還暦以上の方々ですが、結構な割合で小学生が見ているんですよ。実際にお手紙などで一番反響が多いのは子供たちです」
そう語るのは、現在『笑点』のプロデューサーを務める日本テレビの中村博行氏だ。
「世の中の様々なものが次々と変わっていくなか、『笑点』は変わってほしくないモノの候補に入っているんだと思います。『笑点』は番組開始時から一切変えてない。変わったのは、メンバーの皆さんが以前より年を取られた、それだけです。
視聴者の皆さんが寄席を見に来ている気持ちになってもらえることが基本方針なので、必要以上にテロップも入れませんし、客いじりをしても、客席の映像を入れるといったことはまったくしていません」
確かに『笑点』の編集は至ってシンプルだ。現在のバラエティでは当たり前となった、過剰なテロップや効果音、ワイプなども一切登場しない。
「(林家)たい平師匠がふなっしーのマネをして横に勢いよく飛ぶというのを最近よくやるんですが、ある収録で、(三遊亭)円楽師匠が飛んできたたい平師匠を、ネタとして手に持っていた時刻表で野球のように打ったら、時刻表の角が当たってしまうハプニングが起こり、すごい笑いが生まれたんです」
わからないこともカットしない
しかし、実際に角に当たったのがよく見えないということで、編集段階でその瞬間をスローで入れ込んだ。現在のテレビ番組ではごく当たり前の演出だ。
「通常のテレビのセオリーでいうと、そのスロー映像は見ている人に親切だし、確実に面白さも増します。でも、最終的にはスタッフの総意として、スローを入れるのはやめました。それをやることで『笑点』らしさがなくなると思ったんです。そういう演出も含め、『笑点』のフォーマットはひとつも変わっていません」
変わらないフォーマット、それが『笑点』を安心して見ることができる理由のひとつかもしれない。しかし当然ながら、それだけでは飽きられてしまう。
「ネタに関しては、お題づくりも含め、出演者、スタッフ、全員が意識的に冒険しています。まだ世間的にはブレイクしてない頃の“ももクロ”をネタにしてみたり、今だと『妖怪ウォッチ』みたいな新しい要素も盛り込んだり」
冒険はまだある。
「以前、歌舞伎の『白浪五人男』を知らないとまったく笑えない回答があったんですね。でも、そういった歌舞伎や落語の知識がないとわからない答えが出てきたときは、意図的にカットせずに流します」
なぜか。中村氏の小学生の娘さんは、『笑点』でわからないネタがあると、自分からネットなどで調べるという。
「何が面白いのか知りたくなれば、調べたくなるんですよ。そういう古典的な素養が必要な答えをカットしないことで、出演者の皆さんも、落語家らしい気の利いたことも言ってくれるんです」
これまでずっと変わらずにテレビに映る『笑点』。将来どうなっているのだろうか…。
「その時代時代のおいしい食べ物があっても、日本人にとっての白いご飯のように、これからもずっとあるのが『笑点』という番組だと思います」
時代に迎合せず、さまざまな工夫で出演者の魅力を引き出す裏方の存在が高い人気を保っているのだ。
(取材/モリタタダシ[Homesize])