自ら作品の企画にも参加し自然な流れで今作の演技に入れたという三津谷葉子

女優として活躍がめざましい三津谷葉子が、主演する最新作『欲動』で、すべてを晒(さら)し熱演! バリ島を舞台に夫婦の愛の彷徨を描いた美しい映像とともに全裸での性交シーンまで披露している。

この作品に至るまでの思いと葛藤、新たな挑戦に自ら期待するものーーすべてを語ってくれた!

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―なんと、今月8日で30歳ですか! おめでとうございます、でいいですかね(笑)。

三津谷 1年1年であっという間なんですけど、10年を振り返るとすごく長かったというか。やっと30になったっていう感じもあって、なんか不思議です。

―その10年でいろいろな経験をして今に繋がってるのではと。この『欲動』の前に、今年は『愛の渦』という出演作もセンセーショナルな話題となりましたが。

三津谷 撮影は全然『愛の渦』のほうが先ですね。ただ、『欲動』は企画から自分も参加させていただいて、撮影に入るまで1年という時間をかけて、脚本も何度も話し合って書き直してもらいながら作ったものなんで。

―そんな長いスパンをかけて! 『愛の渦』では秘密の乱交クラブを舞台にあからさまな性交描写が延々描かれてたり、なにか刺激になって影響もあったのかと。

三津谷 たぶん皆さん、それでこの『欲動』に関しても「脱いだ」とか「体当たりの演技をした」って目がいくんだと思うんですけど。本当にたまたま偶然続いただけで。

脚本の段階から参加させてもらって、監督と何度も話し合いを重ねてできたものだったので、こういうシーンがあるってわかった上で、自分の中ではすごく自然な流れだったんですね。だから、脱ぐけどどうしますか?って話し合いもまったくなかったし。

―特に覚悟を持ってとか、特別な思い切りでもなかった?

三津谷 まぁ、悔いを残さずにやりきって30代にいきたいって思いも個人的にはあったので、そういうタイミングもすごく重なってたでしょうし。本当に信頼できる人達の中にいて、自分でも必要だと思ったので。

『欲動』 ユリは異国の空気の中で、夫から離れ、地元のジゴロに誘われるがまま情事にふけってしまう…

グラビア出身ゆえの悔しい思いも

―今回の杉野希妃監督が同じ女性で、女優やプロデューサーとしてもマルチに活躍している方っていうのも大きかった?

三津谷 それは本当に。演じる方の気持ちもすごく理解してくださって、不安なことがあったらなんでも言ってくださいと。で、同い年なんですね。たくさんの刺激をもらったし、新しい世界も見せていただきましたね。

―そういう安心感もあって、ヌードでの演技含めチャレンジできたのかな?

三津谷 でも、どうなったら作品がよりよくなるかを考えて臨んだ気持ちが強いので。いろいろ外では言われてるんだとしても、本人的には全然あんまり気にしてないというか。そこの部分をきっかけとして作品を捉えてもらえるのはすごくありがたいですけどね。

―でも、例えば若い時、『東京大学物語』(2006年)に主演したくらいにそれこそ必要だから体当たりで脱いでって求められてもできなかったでしょう。

三津谷 それは絶対できなかったと思う。だから年齢的な部分だったり、こういう出会いがあって自分もやるべき、「え?やらないの?」みたいな、すごくいいタイミングだったんだなと。

―こちらが考えるほどそこに迷いとか、逡巡とかも特になかったんだ。

三津谷 もちろん、自分がした選択を後悔しないってところでは、より良い作品にしなきゃって思いましたけど。だから特別こうだとかいうことはなかったですね。

―では、『東京大学物語』くらいから女優としても経験を積んで。長かったというこの10年を経て、ようやくここに至ったみたいな?

三津谷 そうですね。デビューが10代でグラビアから始まり、たくさんよい経験をさせていただいたけど、20代になって女優に絞って仕事を始めたら、グラビアアイドルっていう印象がついて回って、なかなか次の段階に進めない感じがして。それが悔しかったし、邪魔だと思ったこともあったんですけど、でもそれは自分が成長してないからだと気づいて、力をつけなきゃって。

グラビアをやってたことによって今があるのはもちろん確かなことで、そういういろんな思いがあったからこそ、やっぱりお芝居が好きだって思えるようになったんですよね。

―やっぱり、そういう経験が今にちゃんと活きてるんだね。

三津谷 でも、自分の頑張りなんて本当にちっぽけなもので、なんでもっと頑張らなかったのかなって思うこともあったし。足りないものだらけでもがいてたんですよ。だから、『愛の渦』で門脇麦ちゃんが20歳で、それこそあれだけ体当たりの芝居をするのを目の前で見て、そういう影響とかはありましたね。

たぶん、20歳であれをやるっていうのは怖かったと思うんですよ。私も自分では頑張ってきたつもりでいたけど、ああいう素晴らしいなと思える刺激もあったからこそ、20代最後にやる作品に対して自分なりの頑張ってきたものを残したかったのかなって。そこで自分の心も動いたんだと思うんですよね。

自分を晒すのが苦手で怖かった

―いろんなタイミング、巡り合わせということだけど、今回は撮影自体もバリでのオールロケで。演じる上で影響はありました?

三津谷 撮影自体は10日くらいですけど、物語の中で夫婦が向き合えない葛藤があって、この異国の地に行ったからこそぶつかりあうことができたっていうのと同じで、感情でも余計なものが気にならなくなったというか。それは大きかったですね。

―解放されるというか、タイトル通り、根源的な欲がうごめいてさらけ出された感じ?

三津谷 自分をさらけ出すのって、すごく怖いし難しいし。私自身、そういうのが苦手で良いコでいなきゃとか、こうあるべきなんじゃって仕事でもずっとあって。失敗を怖がってしまうのがお芝居にも影響してたと思うんですよ。

―その殻みたいなのを破れた?

三津谷 いっぱい感情があったものがたまたまリンクして、自分の中で爆発するっていう部分はあったかなと。最後、すごい泣く時のシーンとかは自分でもなんともいえない……。

―それは伝わりました! あのシーンはすごく印象的ですよね。とても自然だったし。

三津谷 最初の台本では全然泣くなんてことになってなくて。直前の打合せで、そうしたら?みたいな話になって。でもほんと勝手に感情がそういうふうになったんですよね。

―それもすごい…。

三津谷 あの場所の空気にそういう魔法があるような気もして。10代の時のグラビア時代は何度も行ってたんですけど、その頃は小娘ですから解放も何も(笑)。でもやっぱり今だからこそ感じるものはありましたよね、きっと。

―そこで、このユリという妻役にシンクロすることもできたのかな。

三津谷 共感できるところはたくさんありました。やっぱり人ってどこかで我慢してたりとか、葛藤だったり諦めだったりって絶対的に抱えてるじゃないですか。毎日仕事しながら、どこかで見ないふりをして逃げてたりとか。

向き合うべきことに向き合えてない中で、異国の地で魔法の空気を吸いながら、いろんな人に出会って生と死に向き合わざるをえないところに立たされて。最終的に夫婦がどんな形であれ、ぶつけあうことができたのがいいなと思えたし。女性が持ってる、頭で考えるんじゃなく本能で動く気持ちに共感できたんじゃないかと。

頭で考えず心のまま動けたら

―病を抱えてナイーブになってる夫との冷めた関係に悩むユリが、現地のジゴロとその場限りの関係を持ってしまうけど、それも変化のきっかけとして必然だった?

三津谷 たぶん、頭じゃなく今求めてるものに動いた時、新たに見えるものがあって。後悔もあったかもしれないけど、最終的に向き合うためには必要だったんじゃないかって。

ほんと、お芝居も頭で考えてたらできない、とにかく心が動くようにできたらいいなと思って臨んだので。それまで1年間やってきたものをそのまま取り込んだ感じですね。

―思い返すと、そういう感覚も不思議?

三津谷 そうですね。でも、ほんと人生って思い通りにいかないじゃないですか。自分の中で、今できることを全力でやっていきたいってすごく思えるようになったし、その先に思い描く未来があるんじゃないかって。だから、やるって決めたら全力でやっていきたいし。

今回、このご縁もすごいありがたいなと。いろんな出会いがあって財産になってると思うから、そういうものを大事にして30代はやっていきたいなって思ってますね。

―若い頃は葛藤してたけど、やっと頑張れる自分が見つかった感じかな。

三津谷 ちょっとずつですけどね、周りがどうとか、どう見られてるとかってすごく気にしいだったりするんですよ、こんな風に見えて(笑)。でも私の人生だから、悔いなくちゃんと信じられるものを選択してやっていける30代にしたいです。

―じゃあ、実際の恋愛でも同じく全力で?

三津谷 そうですねーー。なんか自分も癖はいっぱいもってるんで(笑)。変わっていかなきゃいけない部分はたくさんあると思うし、人間の幅を広げていきたいなと。そうすれば恋愛だろうが仕事だろうが絶対にいい影響は出て活かされると思うので。

―充実して得られたものがプライベートにもね。

三津谷 力になればいいなと。ほんと潤(うるお)いたいですよー(笑)。絶対的に女性として本能的に男性に愛されたいってのはあるし。そういう気持ちは持っていたいですから。

―では、まずこの作品がたくさんの人に届いて、何かを感じてもらえれば!

三津谷 釜山の映画祭に行かせていただいて、高い評価をもらって希妃さんも最優秀新人監督賞を獲ったり。試写を観た人たちからも良かったって言葉を聞くと、まだ公開されてないけどほっとする部分はありますね。

なんか、私にとっては愛着がありすぎて客観的に観れない部分があって。全部がすごい思い出なんですけど。ほんと特別な作品になったんじゃないかなって。ずっと自分の中に残るような…。

三津谷葉子 1984年、埼玉県出身。小学校6年生でホリプロスカウトキャラバンに応募し優秀賞を受賞、写真集デビュー。その後、グラビアアイドルとして各誌を席巻する。2006年に『東京大学物語』で映画初主演、女優として幅広く活躍し現在公開中の『花宵道中』にも出演

『欲動』

夫婦は向き合えたのか…11月22日公開!

ユリ(三津谷)と夫・千紘(斎藤工)は千紘の妹(杉野希妃)の出産に立ち会うためバリを訪れる。ガムランの音楽やケチャの踊りが幻想的に彩る異国の空間で、隙間を抱えたセックスレスの夫婦が愛を取り戻すことができるのか…。男女の生と性を描いた物語。

11月22日より新宿武蔵野館にてレイトショー公開(1週目は午前上映もあり)

(取材・文/週プレNEWS編集部 撮影/五十嵐和博)