『ダウンタウンDX』(日本テレビ系)などの演出を担当した西田二郎氏(左)と『水曜どうでしょう』を手がける藤村忠寿氏(右) 『ダウンタウンDX』(日本テレビ系)などの演出を担当した西田二郎氏(左)と『水曜どうでしょう』を手がける藤村忠寿氏(右)

北海道と大阪。それぞれがローカル局に在籍しながらも、プロデューサーとして手がけた番組が全国で話題になる藤村忠寿氏(『水曜どうでしょう』など)と西田二郎氏(『ダウンタウンDX』など)。

互いに「藤やん」「二郎ちゃん」と呼び合うふたりが語った、視聴率の問題点、そしてテレビ業界の未来とは?

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藤村 本来、視聴率はCM枠の売り買いの指標であって、番組の良し悪しを測るものではないはずなんだよね。

西田 ホントにそう。視聴率に関係なく面白い番組はたくさんあるんです。スポンサー企業と番組の関係って、単なるビジネスだけのものではなく、人と人の情でつながる部分もある。

ガリゲル』(2012年に西田氏が立ち上げた深夜番組)もスタート当初、スポンサー企業であるNTTドコモさんが「自分の信じたものを作ってください」って熱いエールを送ってくれたんですよ。僕ら制作スタッフは、その言葉にどれだけ後押ししてもらったことか。

藤村 視聴率という数字だけを見られるより、そっちのほうが実はシビアだよね。数字が獲れても人を傷つけるものを作ればスポンサーが降りるし、反対にアチコチで何か言われようとスポンサーが理解をしてくれれば番組が続く。

西田 理想的な関係!

藤村 今は視聴率がいいからって(CMに出た)商品が売れるわけじゃない。そんな時代だからこそ、企業のイメージと番組内容が合致すれば相乗効果で広告価値も上がるはず。本来の意味でのスポンサードってそういうことだし原点に立ち返ってほしいよね。

ふたりが考えるテロップのあり方

■最近ではテレビに「わかりやすさ」が求められるためか、バラエティ番組でテロップが多用されることも目立つ。その点について、ふたりはどう感じているのか?

藤村 テロップには賛否両論あるかもしれないけど、センスが感じられるものや演出の意図がしっかりしていれば全然アリじゃない?

西田 いただけないのは「バラエティってこういうものだから」と何も疑問に思わずに入れているテロップ。若いテレビマンたちによく言うんだけど、先輩たちが築き上げたものに従うのではなく再構築する勇気を持ってほしい。

例えば、お父さんからもらった服があって、サイズが違ったらハサミで切ったり丈を詰めたりしていいと思う。若いのにだぶだぶのジャケットを着ていたら、やっぱりダサいやん。

藤村 でも再構築って実はすごくリスクが高いんだよね。結果が出なかったら全部自分の責任になるから。

西田 テレビの慣習に乗った番組作りをしても、そこに気持ちが入っていればいいんです。表現には必ず個性があって、いろんな花の咲き方があるわけだから…って、今日のオレ、めっちゃええこと言うやろ?

藤村 確かに、今日の二郎ちゃんはいつもと違うで(笑)。

■これからのテレビ業界にふたりが期待したいこと、自分たちが実現していきたいこととは?

西田 さっきの再構築と重複する部分があるけど、作り手は表現がオーバーランすることを恐れちゃいけないと思う。意図せずハミ出ちゃったところにこそ視聴者がハッとするモノがあったりするから。タイ焼きでいうところの、型からハミ出たビラビラと一緒。

藤村 食べると、それが意外においしいんだよな。

ゼロから文化を作り直すぞ!という気概

西田 けど、そのビラビラを狙って作って、売り物にしてはダメ。やっぱりテレビはカルチャーであるべきで、ビジネスと直結してしまうと、“ハッとするモノ”は作れないんですよ。

藤村 テレビカルチャーという点では、現場でバリバリ働く30代、40代に「もういっぺんゼロから文化を作り直すぞ」という気概を持ってほしいね。

テレビの強みは、誰にでも公平に届く電波を使っていること。まだまだインターネットより強いメディアだと思うので、その電波をどう利用していくかをあらためて考える必要がある。テレビという四角い受像器の概念を忘れて広い目で見ると、新しい価値、面白い価値が生まれるんじゃないかな。

西田 テレビ局同士がタッグを組んでもいいし、SNSと融合してもいい。番組制作部門だけではなく、これからはテレビに関わる人すべてがクリエーターであるべき。

まぁ、長いこと話したけど、最後にオレが言いたいのは、テレビで大切なことはタイ焼きから学べってことやね。

藤村 それが締めの言葉かい!

(取材/高篠友一 撮影/本田雄士)

●西田二郎 1965年9月28日生まれ、大阪府出身。大阪市立大学卒業。89年、読売テレビ(日本テレビ系)入社。これまで『11PM』や『EXテレビ』『松紳』『ダウンタウンDX』『ガリゲル』などを担当

●藤村忠寿 1965年5月29日生まれ、愛知県出身。北海道大学卒業。90年、北海道テレビ(テレビ朝日系)に入社。96年に『水曜どうでしょう』を立ち上げ、爆発的な人気を得る。現在はテレビだけではなく、舞台などにも出演している

■週刊プレイボーイ3・4新春特大号(1月5日発売)「どうする、どうなる!? テレビ業界2015」より