昨年、最も華やかに再ブレイクを果たしたのは坂上忍であろう。彼にいち早く注目していたのが、プロインタビュアーの吉田豪(よしだ・ごう)氏だった。
「僕が書いた単行本『人間コク宝』の最初に出ているのが坂上忍さんなんですよ。インタビューしたのが2001年なので、僕が坂上さんをブレイクさせたわけではないんですけど、面白い人だなって目をつけてはいましたね。
そのときもブス嫌いのことや潔癖症のことを話していましたし、毎年、全財産をギャンブルに使うって言ってました。確か、取材自体も競艇仕事の後だったと思います。あの頃からキャラはあんまり変わってませんね」
その吉田氏が、今年再ブレイクしそうだというのが、カブキロックスの氏神一番(うじがみいちばん)氏だという。
カブキロックスは、バンドブームに火をつけた人気音楽番組『イカ天(三宅裕司のいかすバンド天国)』でブレイクしたバンドで、沢田研二の『TOKIO』をアレンジした『お江戸-O・EDO-』でメジャーデビュー。歌舞伎役者をイメージした奇抜なメイクや衣装などで人気を集め、1990年の全日本有線大賞新人賞を受賞した。
しかし、イカ天の終了やバンドブームの終息とともに人気が低迷。その後は、地道な活動を続けている。
本当に詰めが甘くて、面倒な人
「氏神さんにインタビューしたのは10年くらい前ですが、フルメイクしているのに猫背でボソボソとしゃべりながら、ストローでジュースを飲むんですよ。そんな姿を見るだけで面白いんです。
それに、江戸時代の京都で生まれて、タイムスリップして現代にやって来たという設定なので、自分のことを“拙者(せっしゃ)”って言わないといけないんですけど、それを忘れて“俺”って言ってたり、インタビューの合間に『ねえ、俺の人生って大丈夫かなあ?』って真顔で聞いてくる。本当に詰めが甘いんですよ。
それで、取材が終わった後に電話番号が書かれたメモを渡されて『友達になってほしい』って言ってくるんです。50歳を過ぎたおっさんがですよ(笑)。
で、そのことをラジオでしゃべったら、本人から電話がかかってきて『ラジオ聴いたで。ひどいやないか。でも、キミの場合は愛があるから許す。それよりも、なんで拙者に電話をかけてこない。友達なのに』って、すごく面倒くさい人なんです」
ヘンな格好をして、いじり放題のひどい人
氏神氏の天然ボケは吉田氏だけに放たれるものではない。
「アーティストのKERAさんのトークライブに氏神さんが呼ばれたことがあったんです。氏神さんは、なぜか『自分は聞き出しのプロだ』みたいな自負があって、事前に下調べをしてKERAさんはテクノポップのDEVO(ディーヴォ)っていうバンドが好きだっていうことを知ったんです。それでライブで『KERA殿はディーバが好きでござるよな』って言って、KERAさんが絶句。本当にツッコミどころ満載の人です。
忌野清志郎(いまわの・きよしろう)さんが亡くなった直後のエレキコミックのやついいちろうさんとのトークライブでも、突然、氏神さんが『拙者が清志郎殿の魂を受け継いで…』とか言い始めたので、やついさんが『氏神さん、RCの曲とか知ってるんですか?』って聞いたら、氏神さんは、『あ、あ、「雨あがりの夜空に」とか知ってるよ』って答えたので、『じゃあ、なんのアルバムに入ってますか?』ってさらに尋ねたら、無言になって『おまえだって知らないだろう!』って怒りだしたり。
お葬式とかでもフルメイクで行くんですよ。『なんでですか?』って聞いたら、『目立ちたいんや。メイクをしてるとワイドショーがコメントを取りにくるんや』って。本当にひどい人なんですよ」
吉田氏は、一度、トーク番組などに出演すれば、氏神氏は再ブレイクできるとにらんでいる。
「こんなにヘンな格好をして、いじり放題の50歳過ぎの人がいるということが知れ渡れば、大爆発すると思うんですけどね」
(取材/村上隆保)