1990年代後半、“シノラー”ブームを巻き起こした篠原ともえが、今、再び注目されている。
特に近年は、宇宙に興味のある“宙(そら)ガール”としての活動も増え、昨年は彼女の名前を小惑星の名前として登録、さらに『宙ガール☆篠原ともえの「星の教科書」』も刊行した。
タレントやファッションデザイナーとして個性的な魅力を発揮してきた彼女だが、全ての原点は星にあるという。
―『宙ガール☆篠原ともえの「星の教科書」』の出版、おめでとうございます! でもシノラー時代をTVで見ていたので、星っていうのが意外でした。もともと興味をもったきっかけはなんだったんですか?
篠原 今回の表紙には伊豆諸島の青ヶ島で撮影した星空を使っているんですよ。そこは、おばあちゃん家があるんですけど、初めて7歳の時に家族旅行で行って、海に囲まれた小さな島で光害がないので、星がつやつやぴかぴかしていて印象的だったんです。それが星を好きになったきっかけで。だから、恩返しをする気持ちで今回これを書いたんです。
―“つやつや”っていうのもさすが独特の表現! たしか、そこでは2010年にライブもしてるとか?
篠原 そうです、15周年記念で。その時は、前日に尾山展望台っていうところで撮った星空をスライドショーでお見せしたんですよ。すると、普段見ている星空なのに島民の皆さんから、「わぁーー!」って歓声があがって盛り上がったんですね。それでみんな、星に感激する気持ちが溢(あふ)れているんだなと思って。ライブ終演後にリアル星空解説したんですよ、みんなで星座などを声を出して。
そしたら小さい子もご年配の方も一生懸命覚えてくれて。やっぱり、みんなきっかけがあれば、星に興味を持ってくれるんだなと思いました。
―たしかに、普段見ていても知ってる人がいないと、どれがどれだかわからないですもんね。他に印象に残ってる天体観測とかってありますか?
篠原 今年も4月4日に月食があるんですけど、以前、月食ナンパされたんですよ! ビルの屋上で望遠鏡を覗(のぞ)きながら月食を待っていたら、小学2年生くらいのコが来て、「あーー!、それ反射板式? 屈折式? 僕にも見せてよ」って。
―えっ! 小学生ですか?
篠原 そうなんです(笑)。でも、そのコ、すごい星に詳しくて望遠鏡トークで盛り上がって。「お姉さん、今度いつ来るの? また会いたいな、一緒に見ようよ」って目をキラキラさせてるんですよ! ホント、ときめいちゃって…。一時のラブロマンスを感じたんですよ。あとから親御さんも来たんですけど、「僕、まだ帰りたくないよ」ってかわいかったですねー。
逆ナン経験もアリ!
―すごいピュアですね。でも星を見てたら出会いもありそう(笑)。
篠原 特に、星に詳しい方は絶対モテモテですよ! パッと見た星の名前を言えたり、この本にも書きましたけど、日本人がどう星を活用していたのか、どう愛(め)でてきたのかという伝統など、知っていたらいいですよね。もちろん知らない場合でも、星空アプリがあるので一緒に眺めたり。あと、逆に私たち宙ガールにも、オススメの望遠鏡とか聞いてくれたら喜んで教えちゃいます!
―なるほど! ふとした時に「あれは○○って星座だよ」とか言えたら知的な感じもしますね!
篠原 そうですね! それに、天体仲間ができると楽しいんですよ。私は星クラスタなんですけど。
―ちょっと待ってください、星クラスタ?
篠原 あっ、私は星自体が好きなタイプなんですね。名前を覚えたり、ちょっと学術的な感じですね。でも、天体好きって、望遠鏡がひたすら好きな機材クラスタや写真撮るのが好きな人に分かれるんですよ。なので、私は他の方に撮り方を教わって、代わりに星の名前を教えたり、みんなで輪を組みながら観測するんですよ。
―なるほど、鉄道好きみたいなもんですね。
篠原 そういえば、最近その天体仲間で栃木県の赤城山にペルセウス流星群を見に行ったんですよ。そしたら、そこにひとりですごく大きな望遠鏡を持って見ている人がいたので、持っていたお菓子を渡して。その時は篠原からお声がけしちゃいました(笑)。何を撮影しているとか望遠鏡の話やオススメスポットを教えあったり、出会いの場でもありますね!
―また、ナンパ話ですか(笑)。この本にあるオススメスポットに行ったら篠原さんからナンパされるかも(笑)?
篠原 そうですよ! ホントにプライベートで行くところなので、ぜひお声かけください(笑)。ファミリーとかにもお菓子配ったりしているんですけど、夜で光もないから全然、篠原って気づかれないんですよ。だからモコモコファッションでお菓子配ってる人がいたら、それは篠原です!
星に選ばれし宙ガールだった?
―では、声もしっかり覚えておかなくちゃですね!
篠原 それから、2008年の双子座流星群では、栃木まで天体仲間と観測しにいったんですけど。
―ホントに星の話が止まらないですね!
篠原 これはホントにすごいんですよ! 星の常識を覆すような話なんです!
―ホントですか? ナンパの話しか聞いてませんが…。
篠原 まあまあ。で、向かってる途中、ガラス越しにすっごく大きな流れ星が「ぶっしゅ~、きらきら~、しゅわしゅわ~」って流れたんですよ。みんな信じてくれないんですけど、流れ星の音がしたんですよ、ホントに!!
―え~っと、ホントに信じられないんですけど…。
篠原 その時から“流星の音”って信じ続けているんですけど、そしたら最近、天文学者の間でも流れ星には音がするって話が出ているみたいなんですよ。なんらかの電波を出していて、聴こえる人には聞こえるらしくて。ホントに効果音みたいに聞こえたんですよ!
―選ばれし者ってことですか!? さすが宙ガール! 疑ってすいません~。
篠原 その時はあまりに感動して、まず方角を調べて、高さを測って、時間を見るんですよ。後から割り出すと、どんな星だったのかネットに出ているんで、調べてみたら-7等級っていう、地上で見える一番明るいシリウスより約100倍も明るい星だったんですよ! またそこでも感動しちゃいましたね~。
―すぐに星の測定(?)を始めるって、これが星クラスタなんですね(笑)。ところで、篠原さんって、ちょっと前は松任谷由実さんの衣装だったりファッション方面でも取り上げられていましたよね。
篠原 そうですね、多才……なんですかね?(笑)。自分のできることは形にしていこうと心がけていて、それでシノラーの時も星アイテムをつけたり、スターであるユーミンさんにデザインさせていただいたり、自分の中では全部シノラー流のお仕事をさせていただけていますね。
好きでいてくれたシノラーたちに恩返し
―ちなみに、宙ガールって、外から見ているとそれぞれ違う顔を持っているようですが、共通している部分ってあります?
篠原 星からのインスピレーションはかなり受けているんですよ。星ってポップな部分もあるし、すごくロマンティックに心穏やかにしてくれる部分もあるじゃないですか。この本で初めて書いたんですけど、実は「星のようになりたい」って子供の頃から寝る前に唱えていたんです。だから私も星みたいに“シノラーのポップな部分と大人の穏やかな部分”を合わせて星の魅力を届けていけたらなと思ってます。
―今の大人な部分は、いつ頃から出していこうと思ったんでしょう?
篠原 20歳の頃に、舞台や女優さんのお仕事をいただいてですね。カラフルで笑っている篠原以外の篠原を受け入れてくれるファンの方から「穏やかなともえちゃんも好き」っていう手紙をもらって。「じゃあ、いろいろな篠原を見せてもいいんだ」と思って腕輪を撮って、髪を下ろして、スカートをはいてみたら、そのギャップを楽しんでくれる人がいたのが大きいですね。
あと、大学でファッションを学んでいくうちに自然とモードってジャンルを覚えて、いろいろな服をデザインして尚かつ着こなす女性になっていきたいと思ったんですね。
―なるほど、多方面の活躍も全てが繋がってるんですね…。それで今、世間では再ブームのような形で捉えられていますけど、自覚あります?
篠原 とても光栄なことですね。今、私が仕事していて嬉しいのは「昔、シノラーでした」って方に会うんですよ。そういう世代の人とお仕事で関われるのがとても楽しいですね。だから、過去の自分という意味でのシノラーと、それを好きでいてくれたシノラーたちに恩返ししている感じですね。
―ここでもやはり恩返しなんですね。自分自身も含めて培(つちか)ってきたものへの…。
篠原 でも当時は大変なこともありましたね。衣装も作ったり、全部自分でしていたので全然寝る時間がないくらい忙しかったですし。でもその大変さがあるから今、いろいろなジャンルのこと、裁縫や星や女優やタレントなどのお仕事を器用に100%こなせているんじゃないかな、
その時代に培ったモノが背中を押してくれているんです。今の私があるのは10代の頑張りなので、それをまた輝かせてあげたいなって思ってます。
「シノフェス」を開催するのが夢
―先ほど、自身で「多才」とおっしゃっていたのも、冗談じゃなく、その裏付けがあって自信を持っているからなのかな。でも、そのバイタリティはどこからくるんですか?
篠原 叶えたいことは絵にしていくんですよ。例えば、この本でもたくさんイラストを描いているんですけど、私、中学の時にプラネタリウムのスクリーンの絵を描きたくて、ギリシャ神話の絵を描いていたんですよ。それがこの本で叶ったんです。子供の時に叶えたいと思って描いていた夢を、今の私がお母さんみたいになって叶えさせてあげたいなと、なぞるような形でやってあげているんですよ。
―過去の自分に向き合っているんですね。では今後、また更にやりたいことって?
篠原 今年、デビュー20周年なので、これまで描いた作品や撮ったシノラーファッションの写真が2万枚くらい、絵が100枚くらいあって。手作り衣装もたくさんあるので、これまで作り続けてきた作品を展示できる「シノフェス」みたいなのを開催できたらいいなというのが今年の夢ですね。
―集大成ですね~。楽しみにしています! 今日はありがとうございました!!
(取材・文/週プレNEWS編集部 撮影/五十嵐和博)