「ラッスンゴレライって、なんですのん?」

上下真っ赤な衣装にサングラス姿。意味不明のフレーズを叫びながら踊るお笑いコンビ「8.6秒バズーカー」の快進撃が止まらない。

昨年11月にバラエティ番組でリズムネタを披露するや、中高生の間で大ブレイク。YouTubeの再生回数はあっという間に1000万回を突破した。

ただ、彼らの素顔は謎。何しろ昨年春に吉本興業の養成所「NSC大阪」を卒業したばかりのド新人だからだ。

そこで、デビュー以前から成長を見守ってきた漫才作家の本多正識(まさのり)氏を直撃、彼らのことを聞いてみた。本多氏はNSC講師歴25年。若かりし日のナインティナインをはじめ、1万人以上の芸人の卵を指導してきた名講師だ。

―8・6秒バズーカーについて知っているのは、左側がはまやねん(本名・浜根亮太、23歳)、右側が田中シングル(本名・田中真(しん)、23歳)、大阪府吹田市出身で中学校の同級生…というプロフィールに記されている情報くらいです。NSC時代、ふたりはどんな生徒でしたか?

「NSCは4月に入学後、5月に芸の方向を決め、6月から講師の前でネタ見せをやります。ふたりはそのネタ見せ時から『ラッスンゴレライ』のリズムネタをやっていました。ただ、当時は滑舌が悪く、何を言っているのかよくわからなかった。動きもバラバラ。

だから、『今のままだと、やかましいだけのコンビとしか見てもらえない。はっきりと発声すること、振り付けはオリエンタルラジオのようにキレのあるものに練り直すこと』とアドバイスしました」

YouTubeなしにはあり得ない現象?

―それでネタのクオリティは向上した?

「見る見るよくなりました。相当練習したんだと思います。その成長ぶりは講師陣も注目していましたね。

NSCでは『選抜』といって、各講師が目をつけた生徒を10組ほど選んで、アドバイスする授業があります。プロになるための第一関門なのですが、ふたりは何人もの講師から選抜されていました。36期生は300組500人。8・6秒バズーカーはその中で10本の指に入っていました」

―注目のコンビだったわけですね。でも、デビュー1年もしないうちに、ここまでブレイクするとは驚きです。

「YouTubeなしにはあり得ない現象です。普通、新人芸人のネタは劇場に足を運んだファンの間で話題になり、じわじわと世に広まるもの。ところが、今回はネットで一瞬にして日本中に広まった。ふたりも『ラッスンゴレライ』というフレーズだけが有名になって、コンビ名をさっぱり覚えてもらえないと悩んでいるほどです(笑)」

―それだけに、一発屋で終わるという心配もある?

「確かに、リズムネタは飽きられやすい。引退までリズムネタ一本で通せた芸人もいません。ただ、彼らからはオーソドックスなしゃべくり芸がうまくできないから、リズムネタで勝負することに決めたと聞いているので『ラッスンゴレライ』が飽きられる前に次のリズムネタを作っておけと、口を酸っぱくして言っているところです」

「ラッスンゴレライ」の号砲一発で終わらないよう、ふたりには次のリズムネタを期待しよう。

(取材/ボールルーム)