古くは「クレヨンしんちゃん」「工業哀歌バレーボーイズ」、そして最近は「らき☆すた」など数々のマンガ、アニメの舞台となる埼玉。そんな埼玉の新たな名物として、マンガから生まれた「いるまんじゅう」が注目されている。
この「いるまんじゅう」、『週刊少年ジャンプ』に連載中の大人気マンガ「暗殺教室」の作者・松井優征氏と「斉木楠雄のψ難(さいなん)」の作者・麻生周一氏がきっかけで生まれた。ふたりが入間市出身ということでコラボした番外編『殺せんせーVS斉木楠雄~入間市最終決戦~』に架空の名物として登場、実際に同市の名物で生産量一を誇る狭山茶を生地に練りこんだ緑色のまんじゅうを現実にしたものだ。
「掲載された作品を見て、県外からも含めて多くのファンの方々から問い合わせがありました。さらに市内でも商品化の声があがって、地元の中学1年生から4枚にも渡る手紙が市長宛てに届いたのには驚きましたよ」
そう語るのは、同市観光協会の守屋俊久さん。その直訴状には、具体的な市のPRメリットまでこと細かに書かれていたそう。そうした声に後押しされ、同市は「いるまんじゅう」制作を検討し始めた。
しかし、まず壁となったのは版権などの問題。発行する集英社へ制作を持ちかけたが、当初なかなか受け入れられなかったという。田中龍夫市長の娘さんが作者の松井氏と同級生であったことから、そのルートからもプッシュしたものの話は難航。諦めかけたというが「でも、せっかくなら作ってしまおう」と「いるまのまんじゅう」と名前を変えて作り始めた。
「市民の方々や市内の業者の方に協力を仰いで10ヵ月ほどかかりました。どうしても、蒸し上がった生地が茶色になってしまうんですよ。何度も試作を作って、茶葉をパウダー状にすることでようやくキレイな緑色になりました」(守屋さん)
「うまい、うますぎる!」あのまんじゅうより人気!
ようやく昨年5月に完成した「いるまのまんじゅう」は、そのまま市の名物として市内で販売。そして、その努力が実ったのが、今度は集英社サイドから「いるまんじゅう」制作の話がきたのだ。ついに公認とあって、作者のふたりも全面協力、パッケージにイラストを提供した。
「最初は昨年の『ジャンプフェスタ2015』での販売のみで4000箱を用意したんですが、即日完売しました。現在は市内の5ヵ所で販売していますが、愛知や大阪など関東圏外からも購入しにくるんですよ。今はだいぶ落ち着きましたが、それでも多い時は週に3000箱も売れます」(守屋さん)
ちなみに、販売店のひとつ、イオン入間店では「うまい! うますぎる!」のキャッチコピーで埼玉県民にお馴染みの「十万石まんじゅう」と並べて、名物まんじゅう対決をしたが圧勝。十万石まんじゅうより5日も早く完売したそう。
「今は市内でしか購入できませんが、来年度からは“ふるさと納税”の商品としても出す予定です。本来は市内に来ていただいて、作品に登場する場所なども訪れていただきたいですが、少しでも求めているファンの方に届けば嬉しいですね」(守屋さん)
埼玉といえば、「スーパーアリーナ」「浦和レッズ」「ダ埼玉」…県民ですらパッと思い浮かぶのはこれくらい。だが、「暗殺教室」も映画化が決定し、ますます人気爆発が予想される。「いるまんじゅう」がさらに全国区になるかもしれない。
(取材・文・撮影/週プレNEWS編集部)