2月19日の朝、茶の間で忙しなく朝の準備に追われる主婦に衝撃が走った。
『めざましテレビ』(フジテレビ系)の7時台で「広がる“ドラゲナイ現象”」と称し、SEKAI NO OWARIことセカオワの新曲『Dragon Night』でヴォーカルのFukaseがトランシーバー風マイクでシャウトする姿が話題となっていることを取り上げ、渋谷駅前などで街頭インタビューが行なわれていたのだ。
このコーナーを見たパートの主婦S(35歳)が言う。「朝からくだらねーって思ったけど、確かにトランシーバー渡されたら“ドラゲナイ”しちゃうよね(笑)」
そもそも“ドラゲナイ”を知らない皆さんに、ネットウオッチャーでセカオワ好きのOLのミキちゃん(24歳)に説明してもらおう。
「『Dragon Night』のFukaseの発音が良すぎて“ドラゲナイ”って聞こえるっていうんで、ネットスラングとなりTwitterで拡散されたんです。トランシーバーを持ってドラゲナイしてるコラ画像も大盛り上がりで! Fukase自身も自身のTwitterで『ドラゲナイ!!』とつぶやいたことから“公認”になったっていう」
純粋なセカオワファンは、この異様な盛り上がりをどう感じているのか。現在、高校1年生のセカオワファン、カナコちゃんに聞いてみた。
―みんなドラゲナイドラゲナイ言いすぎだけど、どう思う?
カナコ 正直、ドラゲナイなんて聞こえないし。っていうか、『Dragon Night』は希望の歌なんですよ。歌詞のドラゴンは暴力、ムーンライトやスターリースカイには希望とかいろんな意味が隠されてるんだからバカにしないでほしい!
―そんな意味があるんだ。ヴォーカルのFukaseが発言してたの?
カナコ Fukaseが言ったかは知らない。けど、ネットでは歌詞の「ムーンライト」にはムッソリーニ、「スターリースカイ」にはスターリンって意味が隠されてて、みんなで踊る=仲良くなる、って平和を歌ってるんだって議論されてるの。
セカオワ、すげ~~! ……とまぁ、こんな感じで“ドラゲナイ現象”、つまりセカオワ現象の盛り上がりの要因は、ネットで“イジられる”ことに加え、“歌詞をユーザーなりに解釈する”ことまで含まれるらしい。
何がアラサー女性をハマらせるのか?
今回、この記事を書く自分のような主婦ライター(37歳・ふたりの子持ち)もまた、セカオワの音楽だけでなく彼らの背景や世界観、ネットでのイジり&解釈にハマるひとりだ。そこで、セカオワの歌だけでなくウワサ大好きアラサー&アラフィフ主婦を緊急召集し語り尽くしてもらった!
―まずは月イチペースでセカオワの歌しばりでカラオケを楽しむ看護士のT子ちゃん(29歳)、どのようにセカオワにハマったんですか?
T子 以前、セカオワのドキュメンタリー番組でFukaseが「デビュー前に精神を患い、回復後にカウンセラーを目指そうと勉強するも強い薬の副作用で勉強した内容を忘れてしまい絶望した」と言っているのを聞いて。その絶望で“世界の終わり”を感じて作ったバンドがセカオワだったっていうことで。
―興味惹かれたんだ。で、歌を聴いてどうでした?
T子 デビュー曲の『幻の命』なんて意味深すぎ。作詞はFukaseで作曲がSaoriなんだけど、ネットでは「ふたりの子供の歌じゃないか」と話題で。キレイなメロディとミステリアスな歌詞が素敵で癒やされるんです。
―ライブ中にピアノを弾くSaoriが声を押し殺し泣いてるようにも見え、子持ちの自分ももらい泣きでした。他に好きな歌は?
T子 『銀河街の悪夢』の「薬は絶望だけでなく希望も奪う」という歌詞とかは、看護士の自分には深く突き刺さる言葉です。末期がんの患者さんにモルヒネの点滴を投与したこととか思い出しますし。
―でもなんか、悲しいことを思い出して元気がなくなりそうですけど。
T子 いえいえ! つい先日、10分程度で終わる手術後に容態が悪化し亡くなった患者さんがいたんです。あまりに驚きで帰宅しても呆然としていましたが、セカオワの『ファンタジー』でとても元気になりました。
―FukaseとギターのNakajinがサブボーカルで励ましてくれる歌ですね!
T子 はい。「僕らは歌で君を元気にしてあげたい」っていう、すごく優しく元気が出る歌です。これはライブでも大盛り上がりなんです。そうそう、ライブも3回行ってますが、すごく豪華で楽しい作りなんですよ。
アラフィフ主婦まで信奉する魅力
そう、セカオワの大きな魅力は大掛かりな装飾が施された会場と演出が行なわれるライブにある。例えば、2013年の富士急ハイランド、野外ワンマンフェスでは会場に巨大な30mの樹を設置、それを飾る電飾やウォータースクリーンなど総制作費は約5億円。2014年に行なわれたアリーナツアーにも同様のセットが使われた。
ふたりの娘と親子3人でセカオワにハマり、ほとんどのツアーに参加している主婦、タカエさん(50歳)が興奮気味に話す。
―セカオワのライブの魅力はズバリ?
タカエ もともと、あの巨大樹木はFukaseが夢に見る風景を具現化したもの。Fukaseの夢に入り込めるんですよ! ライブ構成はまさに遊園地のアトラクションみたくドキドキでワクワクの連続なんですよ!
―ちょっとナニ言ってるかわかりませんが…。
タカエ 会場前には戦車やヘリが設置され、巨大な怪物が襲来するみたいな設定なんです。それで歌の合間に停電になったり、ピエロのお面のDJ LOVEちゃんのダンスシーンがあったりと様々な展開があるんです! しかもライブ中、商用利用しない条件で写真撮影し放題(フラッシュは禁止)なのも嬉しい。
―ライブを一度体験してしまうと、その中毒性はより高くなる、と。
タカエ ですです! 私も50歳だし、いろんなアーティストにハマりました。初めて買ったレコードは甲斐バンドの『HERO(ヒーローになる時、それは今)』で、高校は洋楽にドハマりでボン・ジョヴィの初来日ライブも行って。20~30代は子育てに終われ音楽を聴かなくなり、40代でレミオロメンにハマった矢先に活動休止になっちゃって…。その心の隙間にFukaseが飛び込んで来たのよ!!
―そ、そんな繋がりなんですね…。ではFukaseの魅力ってなんでしょう?
タカエ やはり、あの繊細な歌詞。今まで聴いてきた、どの歌にも似てないし、なんといってもあの甘い声! 過激な歌詞も可愛い声で歌われたらたまりません。
来週末、“Wドラゲナイ”が実現!?
―自分のような30代的には、Fukaseの声はオザケン(小沢健二)っぽくて。音楽性は違うけど、透き通った声で過激な歌を歌ったり尖った発言も、なんか似てる気がして。オザケンにハマってた高校時代を思い出すっす!
タカエ わかるー。ただね、Fukaseの魅力はやはりメンバーあってのものなんですよ! かつて、精神の不調に悩んだFukaseはとても脆(もろ)くて危なげ。DJ LOVEちゃんも「誰かひとりでも抜けると空中分解しちゃう」って言ってるし。
―では例えば、X JAPANのようにTAIJIが抜けてHEATH加入とかは、あり得ないと?
タカエ はい。メンバー4人が大田区出身の幼馴染みでFukaseの声かけから始まった、この4人じゃないと成り立たないからこそイイんです。
―なんか息子達を見ているような感覚なんですね。
タカエ そう。私は娘ふたりで息子も欲しかったからねー。まぁ、息子を応援する気持ちもありつつFukaseは可愛いから鑑賞用に付き合いたいとか、邪(よこしま)な気持ちで見ていますね…。
T子 そういう話なら私も加わりますよ!(と、前出の看護士のT子が乱入) 私も付き合うならFukase! 『スターライトパレード』みたく横浜のコスモワールドでデートしたい。人目を避けてキッスしたい~♪
―私はDJ LOVE~~ 彼のTwitter見てると、ラヲタ(ラーメンオタク)でラーメン食べ過ぎで、最近、肥えすぎて心配!
タカエ わかる~。LOVEちゃんは他のメンバー誰も怒った顔を見てないらしいよ。優しそうだよね。でさー……!
―話は永遠に終わらなそうなのでそろそろシメましょう! 皆さんが今後、セカオワに期待することは?
T子 3月13日放送の『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)で、セカオワときゃりーぱみゅぱみゅが初めて一緒に登場するんですよ。きゃりーは最新曲『もんだいガール』でトランシーバー風のマイク使ってますから、もしかしたらFukaseと“Wドラゲナイ”するかも!?
―Wドラゲナイに期待しタイ! では最後にタカエさん、どーぞ!
タカエ 私は今年7月の日産スタジアムのライブ2日間とも娘らと参戦しますから。日産スタジアムで巨大樹木とはまた違うFukaseの夢を見せてほしい!
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どうですか、ヤバいでしょう! 興味なくて理解不能な方々はお腹いっぱい? でも当分、小学生からアラフォー主婦まで親子で巻き込み、このセカオワ熱は冷めそうにありませんよ~。
来週末の『ミュージックステーション』で、セカオワときゃりーの“Wドラゲナイ”が実現したらレポートするので期待してお待ちください!
(取材・文・撮影/河合桃子)