「大人の特撮は着地点が性行為ではなくて、おっぱいなんです」と語る雨宮慶太氏と魔境ホラー・カルマ役で出演する松野井雅

特撮ファンやパチンコ好きには、説明不要なほどの大人気特撮シリーズ『牙狼』

子供向けのものとは一線を画す骨太なストーリーと精緻(せいち)を極める造形から“大人の特撮”と呼ばれているが、どこか“エロス”を感じさせるのもその理由のひとつ。

今回はそんな、“特撮とエロスのいい関係”を語り尽くす!

■怖さの中の美しさ。美と恐怖は表裏一体

人の“陰我(いんが)”を喰らう魔獣「ホラー」を討伐するため、代々受け継がれし鎧(よろい)を召還して戦う「魔戒(まかい)騎士」と、彼らをサポートする「魔戒法師」。そして、魔戒騎士の中でも最高位の「ガロ」の称号を受けた黄金騎士の戦いを描く――。

2005年に第1弾のTVシリーズが放送されて以来、10年にもわたって熱狂的なファンに支持されてきた特撮シリーズ『牙狼〈GARO〉』。人気の理由のひとつに勧善懲悪を超えた人の心に巣くう闇と、その闇に漂う希望の光を追い求める魔戒騎士たちの姿をリアルに丹念に紡いできた、ということがあるだろう。

それと、もうひとつ。

もともと特撮は子供向けのイメージが強く、エロ要素は極力避ける傾向にある。しかし、“大人の特撮”と呼ばれる『牙狼』では、それが刺激的にブレンドされてきた。というか、『牙狼』を見ていると特撮とエロスはそもそも相性がよく、表裏一体ではないのかという気さえするのだ。

そこで今回、シリーズの原作・総監督である雨宮慶太と、4月から放送が始まるTVシリーズ最新作に出演する女優・松野井雅に「特撮とエロス」という一見、相反するテーマで語り合ってもらった。

『マジンガーZ』に登場する“おっぱいロケット”

雨宮 実のところ、“大人の特撮”みたいなところは、あまり意識したことがないんだよね。ただ結果的に、例えば女体がモチーフの(魔獣)ホラーを作り上げるとき、胸の形とか隠さず、そのまま表現しているから、そう評価される場合が多いのかもしれない。

 監督が生み出す女性のホラーって、禍々(まがまが)しかったり恐ろしかったりしますけど、何より美しいフォルムを大事にしているじゃないですか。胸の形もフォルムを支えている大事な部位だから、それを人工的な棘(と げ)のようなもので隠すほうがヘンですよ。自然の形のほうが怖さとかミステリアスさに無理なくつながると思うし。

雨宮 人間が恐れるものは結局のところ、人の形に近い“何か”だと思う。

 そう確信されているのは、監督が女性に対して恐怖を抱いているからですか(笑)。

雨宮 いや、そういうことではなくて(笑)。本来、怖いものとか強いものは形が美しいんじゃないかと思うんだ。

 ああ、はい。

雨宮 だから、本当に強いもの、本当に気持ち悪いものって、研ぎ澄まされた美しい形のほうがリアルに伝わる。おっぱいのラインもそうだけど、例えば、ロケットとかね。ロケットの流線って、進化の研究を積み重ねていった結果、ああいう滑らかな線にたどり着いたもの。それが見方によっては美しく見えるし、時には強く恐ろしいものにも見えてしまう。

 そういえば、アニメの『マジンガーZ』に登場してくる女性ロボットの武器って、おっぱいロケットですもんね。

雨宮 そうだね。永井豪先生はご自分の作品を通して、怖さと美しさが表裏一体であることを追求しているよね。それこそ『デビルマン』に登場してくる妖獣シレーヌを見ていると、怖さの中に美しさを求め、美しさの中に得体の知れない恐怖を描いている。その鋭利な作り込み方は、おこがましいけど僕の目指したいと思っている世界と近いような気がする。

特撮とエロスは表裏一体

 もしかすると、善と悪も突き詰めていけば、表裏一体なんですかね。

雨宮 だと思う。ほら、ありがたいお釈迦(しゃか)様でも、見る人の心のありようによっては恐ろしく感じられたりもする。ガロも人間から見れば金色に輝く頼もしいヒーローだけど、ホラーからすると…。

 すっごく怖い(笑)。

雨宮 そういう意味では、特撮って強かったり恐ろしいものを表現していかなければいけないから、それをとことん追求していくと自然に裏側の美しいものを描くことになり、それが時にエロスの表現につながることもあるんだ。それだから特撮とエロスの相性がいいのは当たり前だし、表裏一体だともいえるんじゃないのかな。

●この続きは、発売中の『週刊プレイボーイ』14号にてお読みいただけます!

(取材・文/佐々木 徹 撮影/本田雄士)

●松野井雅(まつのい・みやび)1988年1月1日生まれ、広島県出身。映画『牙狼〈GARO〉~RED REQUIEM~』で魔境ホラー・カルマ役として出演。4月から始まる新テレビシリーズでも重要な役どころを担う

●雨宮慶太(あめみや・けいた)1959年8月24日生まれ、千葉県出身。子供の頃からの特撮好きとして知られる、『牙狼』シリーズの生みの親。原作者、映画監督のみならず、イラストレーターとしても活躍

■『牙狼〈GARO〉 GOLD STORM 翔』 3月28日(土)より、新宿バルト9ほかにてロードショー 新作の劇場版『牙狼〈GARO〉-GOLD STORM-翔』は、4月からスタートするテレビシリーズの前日譚。オフィシャルサイト【http://garo-project.jp/GOLDSTORM/】『牙狼〈GARO〉』新テレビシリーズは4月3日からテレビ東京系、BSスターチャンネル、CSファミリー劇場にて放送スタート!

■『週刊プレイボーイ』14号(3月23日発売)「雨宮慶太×松野井雅 特撮とエロスのいい関係」より