「週プレNEWS」連載中の大ヒット漫画『キン肉マン』がブーム再燃とばかり盛り上がっている。
『週刊少年ジャンプ』で連載が始まったのが1979年。1987年に連載が一旦終了するも、1997年から息子の世代が活躍する『キン肉マンⅡ世』で復活漫画ブームの火付け役といわれ、さらに2011年からは初代『キン肉マン』の続編が再開し、現在も多くの読者に愛され、この4月3日(金)には節目の50巻が発売される。
連載開始から36年の時を経ても、まったく色褪せないその超人パワー。それどころかますます各方面で引っ張りだこの人気で様々なコラボも展開、広がりを見せている。
そこで、今また注目される秘密を探るべく、『キン肉マン』ブーム再燃を仕掛ける各ジャンルの関係者にその魅力を聞いてみた! ラストには、ゆでたまご・嶋田先生のコメントもあるゾ!
魅力① 童心に帰って語れる敷居の低さ
実写版ロビンマスク&ウォーズマンが、口元に白いマスクを着けてリングイン!「このタッグ、つけいる隙がない。花粉が。」のCMコピーも話題を呼んだ、株式会社アラクスの商品『PITTA MASK(ピッタマスク)』(https://www.arax.co.jp/pittamask/special/index.html)。
そのCMシリーズの第一弾、ロビンマスク単独バージョンが初めて放送されたのは2014年1月17日のことだった。その反響の大きさについて、電通中部支社営業部の宮川洋平さんはこう振り返る。
「CM放送開始から各種SNSで話題となり、翌日にはYahoo!映像トピックスに『実写版ロビンマスクがイイ体しすぎ』と取り上げられて日別ランキング(総合)第9位を獲得。結果、『YouTube』での動画再生回数が公開から40時間で20万回超えとなりました。
これもひとえに、本物のロビンマスクさんの魅力あふれる人柄と美しさ、迫力が我々の目指す商品告知という目的を最大限に引き出してくれたおかげだと思っております」
本物のロビンマスクは、やはり英国紳士然としていた!
チョット待ってください…。今、「本物のロビンマスクさん」とおっしゃいましたか?
「はい。私自身ももちろんそうですが、今回のCMの演出をお願いした監督やプランナー、アートディレクターなど現場は幼い頃から『キン肉マン』好きだったスタッフが大集合の状態でした。
それゆえ撮影当日、お迎えする際には緊張感に溢(あふ)れていましたが、英国紳士であるロビンマスクさんは、おそらく初めて手にした『PITTA MASK』の商品説明を真面目に聞き、製作スタッフのこだわりを理解して同じ演技を何度も繰り返しやってくれました。
現場にいたスタッフは皆、彼の魅力に引き込まれてしまい、仕事であるにも関わらず童心に返って、同じ空間にいられることにただ喜びを感じていた様子でしたね」
な…なるほど。そう言えば実際のCM以外にも、その裏側を見せたオフショットやPVまでありましたよね。あれは一体?
「ええ、そこまで作りこむ予定ではなかったのですが、実際にロビンマスクさんと接すれば接するほど、目を見張るような筋肉、歴戦の苦闘を感じさせる白銀の鎧(よろい)、英国紳士という立ち居振る舞いはもちろんのこと、歩いた、話した、シャドウボクシングをしたというだけで沸き上がる興奮を15秒や30秒のCMだけでは伝えきれないという葛藤がありました。
それでついオフショット、PV制作も…という流れに。しかし、それをご覧になった方々が我々と同じ熱いものを感じ取っていただけたのであれば、その感動が『PITTA MASK』という商品を知っていただくことにも繋がったと思うので、結果的にやってよかったのではないかと考えています」
誰よりもまずコンテンツを作る側がすっかり童心に返って、心から仕事を楽しむ。だからこそ、受け取る側にもその楽しさがダイレクトに伝わったといったことだろうか。
魅力② 掘り下げ甲斐のあるスキの多さ
日本有数の玩具メーカーであるバンダイ。その新商品からも『キン肉マン』ブームを見てとれる。
実力のない覆面超人を目の仇(かたき)とし、倒してはそのマスクを強奪しコレクションしていく「覆面(マスク)狩り」を続けていた完璧(パーフェクト)超人ネプチューンマン。
3月31日で既に予約注文の受付けは終了してしまったが、その覆面コレクション18種を原作の印象深いシーンとともにピンズセットとして完成させた新商品『ネプチューンマン覆面狩りコレクションピンズ』(18,960円/完全受注制)も大好評だった。
『ネプチューンマン覆面狩りコレクションピンズ』の制作秘話
このピンズセットの特筆すべき点。それはロビンマスクやウォーズマン、モンゴルマンやアシュラマンといった人気どころの超人マスクピンズと同じレベルの高級感で、原作やアニメ内で一瞬だけ登場した「名もなき超人たち」のマスクまで多数、可能な限り再現を試み、『キン肉マン』の歴史の中で“初グッズ化”されていることだろう。
しかし、それにしてもここまでやるのは…。さすがにマニアックすぎやしませんかね、バンダイさん!?
「そもそも、そう言われることを目指して開発した商品ですから、その評価はむしろ光栄ですね(笑)。特に今回は『キン肉マン』35周年突破企画ということで、バンダイでしか絶対に作らないような“こだわりの一品”を作ろうと社内でも様々な企画案が挙がったんです。その中で徹底検討してふるいにかけた結果、生き残って完成したのがこちらです」
こう答えてくれたのは、この商品の開発部署である株式会社バンダイのベンダー事業部に所属する落合詩可(うたか)さん。そう、ベンダー事業部といえば、あの歴史的大ヒット商品『キン消し』を生み出したことでも知られる『キン肉マン』とは縁の深~い部署である!
思えば、『キン消し』でもそうだった…。悪魔将軍やアシュラマンの『キン消し』が当たれば異様に嬉しかったのは、それ以外に名前も知らないような超人が山ほど存在したからだ。この商品は、そんなマニア心をくすぐるスピリッツを確かに受け継いだようにも見える。
「特にこだわったのは、モンゴルマンなどのメジャー超人のマスクより、むしろ名もなき超人たちのマスクの方です。これらは原作やアニメに登場したわずかなシーンを元に商品化したんです。
そのシーンを徹底的に分析して、これが最も正しい形、配置なのでは…というのを今回の商品化を契機に、ゆでたまご先生と東映アニメーションさんに公式にお認めいただき、なんと新たに描き起こしたんです。そこがまさにこの“初グッズ化”の最大のこだわりであり、価値だと思ってます!」
設定にツッコミどころが満載なのは『キン肉マン』にはよくあることだが、それを逆手にとって商品価値に代えてしまおうというフリーダムさと面白さ! そして、そんな製作側の遊び心についてきてくれるファンもまた確実にいるというのが、そもそもこのような商品企画が成り立つ大前提になっているのだろう。
テレビアニメ再放送の決め手となったのは?
魅力③ 世代間の潤滑油になれる圧倒的知名度
このように作品設定のすべてを知った上で反応を見せるディープな層から、漫画を読んだことはなくても額に「肉」の字を描かれていることくらいは知っているという超ライト層まで含めると、圧倒的多数がなんらかの形で作品を知っている伝説のコンテンツ。
その受け手層の広さがまさに最大の武器になっていると語るのは、4月4日(土)から毎週土曜日の夜22時~に2話ずつ、CS放送の『テレ朝ch2』で再放送が開始される(http://www.tv-asahi.co.jp/ch/recommend/saintseiya_kinnikuman/)『キン肉マン』TVアニメシリーズの担当者で、テレビ朝日総合編成局編成戦略部の吉川大祐さんだ。再放送の経緯について詳しく伺ってみた。
「『テレ朝ch2』はニュースとスポーツを中心に番組を構成しているチャンネルなんですが、そこでの新コンテンツとしてアニメを…という相談になった時、会議で候補に上がるのは自(おの)ずとスポーツ系のアニメが大半になります。
その多くの中から購入する番組を慎重に検討して選ぶわけですが、その際に社内の若手から年配の人間まで最も幅広く支持されたのが『キン肉マン』だったんです。
もちろん今、空前のプロレスブームがきていて新日本プロレスさんの中継を私どもの方で力を入れてやっているというのもあります。プロレス好きな人は『キン肉マン』好きであることも多いですから。でも、そこだけに向けてやるのでは意味が薄くて、プロレス好きという確かな支持層がある上で、これまでにない層も呼び込んでいく。それが目指さないといけないところです。
そのうえで、やはり35年以上も続いてきた圧倒的な知名度やファン層のすそ野の広さは、親子で一緒に熱くなってもらいたいと願っている我々にとっては、もってこいの作品でした。単に昔、人気があったということではなく、今も連載が続いていて新たなファンを開拓し続けている、そういうところも好印象です」
原作者のゆでたまご・嶋田先生からファンへのメッセージ
こうして様々な形で今なお注目され、求められ続ける『キン肉マン』。この状況を原作者のゆでたまご・嶋田隆司先生はどう感じているのか?
「毎週の新商品や新企画の監修会はずっとやってるんですが、純粋に『これは面白いなぁ~』と驚かされたり、時には笑ってしまうようなアイディアを持ってきてくれることが非常に多いんですよね。
それは昔好きで読んでくれていた読者が大人になって、会社でそういう企画を出せる立場になってきたということなんでしょうけど、それだけに今、身に染みて思うのは昔の『キン肉マン』ブームというのは本当だったんだな、ということです。
実は当時、あまり実感がなかったんですよ。ファンはみんな子供だけど、そのコたちとの接点はなくて、ずっと部屋にこもって原作書いてるだけだったので(笑)。でも今は直接読者でもあった彼らと話をするようになって、本当に愛してくれているのがよくわかります。それだけにその分、僕らも負けずにまだまだ頑張らなあかんなと思います。
コミックスもこの4月でやっと50巻で、節目とか記念とか言われますけど、僕らは特に意識はしてなくて、まだまだ通過点やと思ってますので。これからもファンとお互い切磋琢磨していけるような関係でいられたらイイなと思います」
“超人募集”という名物企画に代表されるように「常にファンと共にあり続けてきたのが『キン肉マン』」だと語る、ゆでたまご先生。作家とファンが互いにリスペクトする関係が続く限り、超人たちの熱い戦いは終わらない。
(取材・文/山下貴弘)
(c)ゆでたまご (c)ゆでたまご・東映アニメーション