涙界（なみだかい）のプリンスこと劇団ひとりに「ここぞというときの男の泣き方」を聞いてみた。
もはや涙は「男の武器」になりつつあるようだ。今年２月には、イケメンが涙を流している姿を集めた写真集『イケメソ男子』（リブレ出版）まで刊行された。
では、「ここぞという時の男の泣き方」とはどういうものなのか？ 涙界（なみだかい）のプリンス、劇団ひとりに聞いた。
―先日、男性の泣き顔を集めた写真集が発売されて話題になりました。男が美しく涙を流す方法はありますか？
劇団 涙を美しく流す方法は表情の問題ではありません。涙が美しいか、汚いかは「時」と「場所」によります。つまりどういう状況下で涙を流すか、これによって大きく変わります。まあ酒に酔い潰れて愚痴をこぼして泣くのは最低ですね。どんなイケメンが流してもダメです。
―逆にイイ涙って？
劇団 大前提として、どんなブ男であろうが、高校球児が流す涙は圧倒的に美しいんです。世間の誰もが美しいと感じる涙ですよ。そこをわきまえないでやたらめったら泣くと、ボクや上島竜兵さんみたいに安く濁った涙になってしまう。
―安く濁った涙（笑）。
劇団 だから、この記事を読んでいる皆さんは涙が安くならないよう注意しなくちゃいけません。それが美しい涙のポイントになります。涙というのはもろ刃の剣なので、やたら使うと効果が消えてしまうんですよ。
―それはつまり「ここぞ！」という場面で泣けと？
劇団 そのとおりです。現にボクも“泣き芸”でいろんなテレビ出ましたけど…後半のほうは涙の効果が弱まっているのを肌で感じていましたから。
―効果が弱まった理由は？
劇団 人間というのは慣れてしまう生き物なんです。これを涙界では、通称“涙慣れ”といいます。みんな、新しい涙が見たいんですよね。
涙をこらえる姿こそ胸に響く！
―今、涙界では誰が旬？
劇団 （元フィギュアスケート選手の）織田信成さんでしょうかね。涙界も常に世代交代してきますから。だからもしも読者の皆さんが涙を使って細く長くやっていきたいのだとしたら、涙を頻繁（ひんぱん）に見せてはいけません。
―それはどうして？
劇団 勝負どころを狙って涙を流す、これが鉄則だからです。みんなよく間違えるんですが、男の涙に心を打たれるのは泣いてる姿ではないんですよ。
―えっ、そうなんですか？
劇団 涙をこらえる姿が胸に響くんです。だってそうでしょ？ 男たる者ね、安易に人前で涙を見せちゃいけないんですよ、やっぱり。けれど、どうしても出てしまう涙、これが一番美しいし、相手の心をくすぐるんです。
―もし涙をこらえないと？
劇団 あまりにもこれみよがしに「俺は泣いてます、さあ見てください！」ってやるのはいただけません。頬を伝う涙をホントは拭けるクセに拭かず、垂れるのを露骨に見せつける人がいますけどね、そういう見せ方ってよろしくないと思いますね。なので、涙初心者はまず涙をこらえることから覚えましょう。
―具体的に言うと？
劇団 スポーツ選手が引退宣言する時を想像してください。そもそもスポーツ選手ってあんま人前で泣くタイプじゃないんですよ。その人が胸を張ってりりしく、自分が考えてきた引退宣言をしている最中に「うっ！」と言葉に詰まる。涙がこぼれそうになって空を仰ぎ、唾を飲み込む。そんな姿に見てる側はぐっとくるんですよ！
―確かに。
劇団 涙界には“泣いたら終わりだ”という言葉があります。いかに泣くまでの過程を見応えあるように見せるか。そしていかに泣かないでこらえられるか。そこが大切なんです。
●劇団ひとりがさらに“男の涙を語り尽くす”この続きは発売中の『週刊プレイボーイ』１６号にてお読みいただけます！
（取材・文／黒羽幸宏 撮影／辰巳千恵）
■週刊プレイボーイ１６号（４月６日）「劇団ひとりによる人生にプラスをもたらす男の泣き方」より