4月8日、タレント・萩本欽一氏(73歳)が駒澤大学仏教学部の入学式に出席した。

2014年の春から認知症予防のために勉強を始め、英語と小論文、面接の試験に合格し入学に至ったという。

50歳以上、年の離れた同級生に囲まれ、大御所芸人“欽ちゃん”はこれからどんなキャンパスライフを送るのかーー。73歳の新たな挑戦が始まる。

タレントでエッセイストの小島慶子が、世間の気になる話題に独自の視点で斬り込む!

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昨年、萩本欽一さんにインタビューをしたのですが、お話はキレキレでとても刺激的でした。映画の手法でつくられていたテレビの創成期に、映画に絶対にできないことを徹底的にやった欽ちゃん。

あのお茶の間コントでは、襖(ふすま)を使うことにこだわったとか。ドアを開ける動作は間延びするけど、襖ならパッと登場できてテンポが出る。椅子で向き合うと距離が出てしまうけど、ちゃぶ台なら話者が近いから関係が密になる、など現場で得た理屈は実に無駄がなく画期的で、今のテレビの手法のほぼすべては彼が発明したと言えるほど。

駆け出しアナの久米宏さんに「テレビは顔を映すんだから、喋(しゃべ)りすぎちゃダメだよ」と言ったのも欽ちゃん。意味深な表情を巧(たく)みに使って、後にニュースの新時代をつくった久米さんも、あのひと言が自分を変えたと話していました。

そんな理論家の欽ちゃんが、認知症予防で始めた受験勉強でそうと知らずに編み出したのが、東大合格者と同じ手作りノート勉強法。英語のHeとSheから始めて1年で駒大合格です。「物忘れしたら、そこに違う知識を入れればいい」。なんて、素敵な73歳。欽ちゃん、カッコいい!

●小島慶子(こじま・けいこ) タレント、エッセイスト。1972年生まれ。どのチャンネルにも欽ちゃんが出ていた時代のテレビっ子。番組にはがきを出したことがある。テレビが何よりの楽しみだった頃の子供でいられて、幸せだった