国民的“お昼のバラエティ”番組『笑っていいとも!』が終了して早1年以上ーー。
当初は“タモロス”などと言われたりもしたが、すっかり12時に始まるあの“ウキウキウォッチング”なテーマソングが流れないことに慣れたのではないだろうか。
タモさんことタモリも週1で夜の人に転身、『ヨルタモリ』(フジテレビ系)で宮沢りえママや訪れる客たちと語らい、『ブラタモリ』(NHK)もこの4月から復活、楽しそうに各地を探索している。
…だが、やはり淋しい! 「テレフォンショッキング」という恒例の名物コーナーを32年も続けて、あれっきりでいいのか!? そう考えた「週プレNEWS」は、勝手にその精神を受け継ぎ“友達の輪”を再開、新たに繋げることにした。そのタイトルは『語っていいとも!』。
メモリアルな第1回は、作家の北方謙三氏をゲストに4月26日(日)12時配信予定。
そのスタートを明日に控え、今回は直前スペシャル第2回ということで、昨年3月、『週刊プレイボーイ』12号で大特集した「サヨナラ、タモさんと“友達の輪”」からOA開始当時、最年少だった元ディレクターで現在は演出家の永峰明氏による秘話を再掲載でお送りする!
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僕が28歳の時、『いいとも!』を立ち上げるからディレクターとして参加してほしいとプロデューサーの横澤さんに声をかけられ、最年少のディレクターとして参加することになりました。
「お昼の番組をタモリさんで」と言われた時は、反対のディレクターも結構いたようでしたが、僕は以前に横澤さんから「夜の特番をタモさんでやれ」って言われて1本作ったことがあったし、あの独特の笑いが好きだったんです。まぁ最年少で一番頭が柔らかいというか、当時“トンがってる”と言われてたので(笑)、数少ない賛成派だったんじゃないかな。
そんな経緯からか、僕が放送開始第1回のディレクターを任されたんです。もともと番組の“パッケージ”作りが得意だったので「タモさんのメガネは夜の番組と違うメガネにしよう」「衣装はキレイめのアイビールックに」とか、お昼の番組に合うファッションをスタイリストさんと相談しましたね。オープニング曲は自分の好きな伊藤銀次さんに頼んで作ってもらったり。「おまえは実験しろよ」と横澤さんに言われてたので、いろいろやりました。
テレビ的じゃない人のほうが面白い
今は違うけど、長い間「テレフォンショッキング」のテーブルはステージの端にありましたよね。タモさんも以前、番組で「なんで横にズレてんだろ?」って言ってたけど、あれは僕がズラしたんですよ(笑)。
というのも、ステージの真ん中にタモさんやゲストが暴れられるスペースがほしかったんです。それに当時は「歌が歌えないならテレフォンには出ない」という歌手の方もいたので「なんでもできるスペースを作りたい」と、最後まで主張した記憶がありますね。
そうやって、放送第1回を迎えたんですけど、実はオープニングでタモさんが“出とちり”してるんです(笑)。いいとも青年隊が最初のフレーズを歌い終わったタイミングでセンターから出てくるはずだったのに間に合わなかった。たぶん舞台裏のスタッフとのやりとりがうまくいかなかったんでしょう。
ただ、今思い返すと、司会に起用されて一番戸惑ってたのはタモさんだった気がしますね。「俺でいいの?」「オープニングでなんで俺が歌うの?」みたいな。それに元々、タモさんは独特の感性と世界観で芸をやる人だったから生放送への戸惑いもあったのかなって。
そんなタモさんが生きるように僕らもレギュラーの人選とかいろいろ考えましたよ。例えば、文化人を起用するとか。田中康夫さんやマンガ家の蛭子能収(えびすよしかず)さん等がそうですね。タモさんって、いろいろな意味でテレビ的じゃない人のほうが面白く絡(から)めるんですよね。
タモさん自身も新鮮に楽しめるし、とにかくタモさんとスタッフ、お客さん、全員が「あの空間で楽しむ」のが一番だったんです。アルタになんだか面白い空気が充満していて、テレビを観ている人が「あそこに行きたい!」と思うことを番組作りの大きなポイントにしていましたね。
だからコーナーを作る時も「この人の意外な部分を生かしたい」っていうのがいつもあって、中でも思い出深いのは渡辺正行のコーラの一気飲み(笑)。
あれは本来、一気飲みが目的じゃなくて、コーラの瓶の裏に番号を振っておいて、その番号をつけた観客にペナルティで一時的にスタジオから退場してもらうコーナーだったんです。ただ、出てもらうなら出演者も何かツラい思いをしなきゃってことで一気飲みになったんですけど。渡辺さんが「僕、得意ですよ」と言い出して。
実際、スタートしたら「一気飲みが見事だ!」って、そっちがメインになっちゃった。最終的には一気飲み自慢の挑戦者と対決するコーナーに(笑)。予想外の展開でしたね。
タモさんがラクで楽しめる空間
そんなふうにメインだったものから「面白けりゃすぐそっちにシフトしていく」っていう柔軟性が『いいとも!』の特性でした。「テレフォン…」で長時間喋るゲストがいても、タモさんがやめなければ、僕らも「ドキュメントなんだからやっちゃえ!」って(笑)。そういう面白さは計算してないところで生まれてくるもので、それがタモさんのセンス、“いいとも精神(スピリッツ)”ですかね。
そのために僕らはタモさんがラクで楽しめる空間を作ることをすごく意識してました。毎日の生放送が苦じゃないよう、仕事に来たって感じじゃなくタモさんの日常がそのまんまアルタの日常っていう流れが自然にできるように。それはタモさんも感じてくれてたんじゃないかな。
難しさは感じないでやるっていうのも『いいとも!』のスタンスだったから、ほんと“楽しさ”だけでしたね。今、僕自身が芸人を育成する立場になってみて、“笑い”を教える原点にはそういうスタンスが大きく影響してると感じます。ありがとう、タモさん! あなたからいっぱいの財産を得られたことを感謝します。
●永峰 明(ながみね・あきら) 『いいとも!』放送開始から月曜担当ディレクターを務め、フジテレビ退社後はフリーの演出家に。ライブ、スクールなどで芸人も育成
■『語っていいとも!』第1回は作家の北方謙三氏をゲストに4月26日(日)12時配信予定