プレイヤーがまるで小説を読んでいるかのように物語が展開、分岐していくゲーム『弟切草』でスーファミ時代に“サウンドノベル”というジャンルを生み出し、またランダムに生成されるダンジョンで主人公が冒険する『不思議のダンジョン』シリーズを日本中に広めたゲームクリエーター中村光一氏にインタビュー!
―現在、中村さんが率いるチュンソフトといえば、当時、『ドラゴンクエスト』「I」から「V」までの開発でその名を業界内にとどろかせました。
中村 実は『DQV』は当初、ファミコン用として制作していたんです。半分ぐらいまで作り終わった頃に急遽スーファミ用として出すという話に変わったので、てんやわんやでした(笑)。
―『DQV』を制作する一方、『弟切草』の開発も?
中村 はい。スーファミでは実際の音の波形を取り込んだりできたので、『弟切草』では雷鳴やガラスが割れる音を使ってプレイヤーを驚かせたいなと。怖くて次に進むボタンが押せないっていう体験をしてもらいたくて(笑)。
―物語の筋道が変わり、エンディングが複数あるというのは予想の斜め上でした!
中村 ただ、『弟切草』は賛否両論でしたね。当時のあるゲーム雑誌のレビュー記事では、“これはゲームじゃない”と書かれ、採点自体されなくて。
―次作となった『トルネコの大冒険 不思議のダンジョン』は入るたびにダンジョンのマップが変わるシステムを採用! プログラムを組むのに苦労されたのでは?
中村 いえ、そういうシステムの部分はコンピューターの得意分野ですから。けど、バグなどが発生しないかをチェックする作業が、従来のゲームの何倍も大変で(苦笑)。
ひとつのアイテムでいろいろな動作ができたので、開発者の想定外のことがしょっちゅう起こる。でも、作り手側が想像し得ないことがどんどん連鎖して起こっていくのが、このゲームの醍醐味(だいごみ)でもありましたからね。
―確かに! 最新作『不思議のダンジョン 風来のシレン5 plus フォーチュンタワーと運命のダイス』(PS Vita専用、6月4日発売予定)も期待大だ!
中村さんが手がけた作品たち 『トルネコの大冒険 不思議のダンジョン』1993年発売【画像左】 『ドラクエIV』に登場するトルネコが主役。“ローグライクゲーム”を発展させたシステムでファンを獲得
『弟切草』1992年発売【画像右】 チュンソフトが自社名義で初めて発売したホラーゲーム。選択肢により物語が変化するサウンドノベルという新ジャンルの第1弾
『不思議のダンジョン2 風来のシレン』1995年発売【画像左】 『不思議のダンジョン』シリーズの第2弾。モンスターの肉を食べて変身するなどのシステムを追加して進化!
『かまいたちの夜』1994年発売【画像右】 サウンドノベル第2弾。雪山のペンションで起きた殺人事件の謎を解くミステリー。バッドエンドという概念が新しかった
●中村光一 1984年にチュンソフトを立ち上げ、『ドラゴンクエストI~V』の開発を担当。1992年の『弟切草』で自社ブランドデビュー。現スパイク・チュンソフト代表取締役会長。50歳
(取材/昌谷大介 牛嶋 健 武松佑季 千葉雄樹 東 賢志(A4studio)撮影/下城英悟)