第2回のゲストは本誌で小説からエッセイ、人生相談まで以前連載していただいた作家・大沢在昌氏 第2回のゲストは本誌で小説からエッセイ、人生相談まで以前連載していただいた作家・大沢在昌氏

昨年3月に終了したお昼の国民的バラエティ番組のスピリットを引き継ぎ“友達の輪”を復活させん!とスタートした『語っていいとも!』

第1回のゲストとしてご登場いただいた北方謙三氏にご紹介いただいたのは、盟友として知られる作家の大沢在昌氏だ。

大沢氏も『週刊プレイボーイ』本誌では以前よりエッセーから小説、そして人生相談まで連載していただくなど最も縁の深い“お友達”といえる。ご連絡するとすぐに快諾いただき、六本木にある事務所に向かったのだが…。

な、なんと時間に厳密といえる方なのにいっこうに現れないではないか!? これがTVの生番組なら放送事故…だが、取材日を勘違いしていたというご本人と連絡が取れ、しばらくして無事ご到着ーー。(聞き手/週プレNEWS編集長・貝山弘一)

―まさかの大沢さんが取材時間をすっぽかして大遅刻という(汗)。これもネタですね。

大沢 俺も初めてだよ、すっ飛ばしたのっていう。いや、すいませんでした。

―僕がすっかりご無沙汰だったので、放置プレーのいじめかと思いました。

大沢 そんな面倒くさいことしねぇから。

―(笑)。最近、ウォーキングされてるそうじゃないですか。

大沢 いや、もう今、全然歩いてないよ。花粉飛んでるし。5月になったらまた歩くけど。あんまり、ゴルフも楽しくないし。

―それは、長年あれだけやれば(苦笑)。

大沢 昨日まで勝浦に釣り行ってたんだけどさ。釣りはまぁまぁ楽しかったけどね。雨の中、40匹くらいかな、いいアジだったよ。

―釣りは飽きないですか?

大沢 まぁ、最近はあんましょっちゅう行けないからね~。でも、釣れなくなってるよ。 昔より釣り人は増えてる感じはするけどね。釣り具が進化して、どんどん細い仕掛けとか、いい浮きとか竿とかできて。その結果、魚もどんどんやられてて用心深くなってる。…って、こんな話でいいのかい?

―はい、他愛もない話をゆる~くする感じですので(笑)。

大沢 まぁ謙ちゃん(北方謙三氏)がどういう風に俺に振ったか知らんけどさぁ。

―いや、予想通りではありましたが、真っ先に「俺の友達は大沢」って(笑)。

大沢 もう、わけわかんない。友達いないのかよ(苦笑)。

―「今さら会いたいわけじゃないけど」とも(笑)。

大沢 あははは(笑)。結構会ってるんだよ、ここんとこ。ただ面倒くさかっただけじゃねーの? 誰か考えたりすんの。俺だったら振っといても「まぁいいだろう、大沢だから」って感じでさ。

 まさかの遅刻!?というレアなご登場となった大沢氏(笑) まさかの遅刻!?というレアなご登場となった大沢氏(笑)

ネットの書き込みには困っちゃうよな

―でもスゴいこのシリーズのことを考えていただいて。「ちゃんと最初に基盤作りをするのが大事だろう」って。それならやっぱり王道で大沢さんだろうなと。

大沢 それ…俺で基盤作っていいのか? 作家ばっかりでさ。作家のお友達の輪なんか見たって読者は、特に若いコは興味ないだろうし。大体、北方謙三だって大沢在昌だって、誰やこのオッサンって思うよ。

―いえいえ(笑)。ちなみに最近、週プレは読まれてますか?

大沢 読んでるよ。でも最近、トンデモ記事が少なくてさ。後、もうグラビアがなんたってAKB系だから、俺からするとお子ちゃますぎちゃって全然ピンとこない。壇蜜もあんまり好きじゃなかったし。正直、ピクリともしない感じだね、最近のグラビアには。

―トンデモ記事も週プレならではでしたけど。ネットなんかで噂やら何やらあることないことすぐ出回っちゃうと、なかなか難しい時代に…。

大沢 そう。後はネットだと、特に下ネタ系とか隠してる過去ほじくりだして言いたがるヤツが多すぎるよね。そういうのは好きじゃねーし、放っときゃいいじゃねーかよって思うけど。

―気にしてもしょうがないと思いつつ、すぐに炎上しちゃったり大変です。マスゴミ批判とかも激しいですし。

大沢 面白がってやってるだけだからね、正直言って。飽きるよ、やってるヤツらも。そこまで暇なヤツもそうそういなくて、引きこもりみたいなのがやってるんだろうけど。それも昔は若いヤツだったのが、最近は結構いい年こいたオッサンもネットに書き込んだりしてさ。困っちゃうよな。

―社会の窓口がネットというか、エロまでその世界に依存してますしね。そうそう、今20~35歳までの男で童貞の割合がどれくらいだと思います?

大沢 なんか、すごく多いんだろ、知らんけど。

―まだ草食男子とか言われ始めてすぐの5年くらい前にやった大アンケートで3人にひとりですよ。

大沢 ウソだろ~。

―ガチのアンケートです。今は絶食とか言われて、さらに増えてるかも。

大沢 まぁ、ただ思うのはね、地方とかに行くとさ、若い女のコがまずいないじゃん。恋愛対象がいないわけだよ。変な話、田舎を出て、東京とは限らないけど、近くの中規模な都市いけば仕事はある。女のコはサービス業とか販売員とかいろいろね。

男の場合、仕事がないのとさ、実家出られないとか残らざるを得ない。縛り付けられてる状況で、どんどん歳は食っていくけど、恋愛する相手も結婚する相手もいない。風俗行くとかさ、キャバクラ行くしか楽しみがない。で、若い女のコの扱いができないっていう男が増えてるよね。

そういう人生、つまんなくないか?

―キャバクラ行くくらいならまだいいんでしょうけど。金もねーからという理由で風俗も行かないとか。で、ネットだったら自分の理想の女がいて、相手に否定されるわけでもなくイメージの世界に浸って、自分で処理しちゃえばそっちのがお気楽っていう。

大沢 それでお気楽なんだったら、敗北主義って感じするけどね、俺は。

―それで前回、北方さんも「俺たちがおいしい思いするだけだろう」って(笑)。若い20代の女のコでも10歳、20歳離れた年上と普通にみんな付き合ってますもんね。

大沢 まぁ、そりゃ金があるからだよ。20代でも金持ってて、話もできて、カッコよけりゃモテるだろ。だからよく言うんだよ、おじさんがいいっていうコに、単に金持ってて扱い慣れしてるからだけであって、若いのでそういうヤツいたら付き合うだろって。そうすると「付き合うけど、そういう人は遊び人じゃない?」って。いや、40代だって遊び人だろ(笑)。

―でも、若い男で金持っていても会話が面白くない、時間がもたないというのは多いようですね。

大沢 それはスキルが低いんだよ。20代だってスキルがあるヤツはあるしさ。別に俺、20代の時にそんな思わなかったけどな。

―そういう意味でも今は格差になってるかもしれないですね。ヤッてるヤツはものすごい極端にヤッてるとか。

大沢 男女に関していえば、そういうのはあると思うね。まぁひとつは機会がないっていうことで、結果的に面倒くさくなったり、自分でやればいいやって諦めになってく。もちろん田舎にいて、そこに女がいなきゃモテようもないわけで。可哀相っちゃ可哀相だね。

―仕事がないっていうのはそもそも大きいでしょうが。自分に自信も持てないでしょうし。

大沢 そうだよ。で、女のコ達は当然もっと仕事がないからどうしたって都会に行くわけだ。彼女たちの方がそういう行動力はあるっていうか、決めたらとりあえず出るじゃん。男の方がやっぱり諦めちゃう。まぁヤンキーじゃないけど、地元の方が楽だしとか言ってね。でも一生、同じ顔ぶれとだけ付き合っていく人生って、つまんなくね?と俺なんかは思っちゃうんだけどさ。

―早くに階段降りちゃってる感じはありますね。

大沢 まぁ、もっといろんなものを楽しむというかね。そりゃ地方には地方の楽しさはあるし、アウトドアなんかで遊び事はいっぱいある。ただ、それ以外の部分で物足りないと思うかどうか。東京にいてこれだけ飲みに行く店がいっぱいあっても、店から出るとつまらなく感じる俺からすればさ(笑)。

ヤリてえとか思わなきゃ駄目だろ

―好奇心も興味も尽きないはずなんですけどね。逆に今、地方移住とかも増えてきてたりして、地方の再発見的な良さも見つけられて。そこにいれるならいたいって人も多いはずですが、問題なのはやっぱり仕事がないからってことに…。

大沢 そうなんだよ、一番大きいよ。稼げなければ暮らしていけないわけだから。でも地方創生だのなんだのっていってるけど、難しいよね。俺なんか昔から首都を3分割くらいすればいいのにと思ってるわけ。政治の中心、経済の中心、後はTV局とか出版社とかマスコミ系の中心ね。都市を分散させれば活性化するしさ。そこそこ発展すると思うんだよ。

やっぱり東京に一極集中なわけで。政治経済の中心だからマスコミもそこにくっつくわけだけど、別にそんなの駐在記者がいればいいわけじゃん。何か作るのにもう東京である必要はないわけでさ…なんてことも思ったりしてたんだけどね。

―一度、首都移転なんて話も候補地選びまでいって話題になりましたけど。バブルが弾けてみんな後ろ向きになりましたよね。

大沢 やっぱり不便だっていう理由でさ、役所詣でがあるから難しいとか、あと下請けは下請けで本社があっちこっちだったら面倒とか。けど、少なくとも国会と官僚は離れちゃっていいじゃん。政治家がいる街と官僚がいる街は別々でいいと思うんだよね。

―それこそ東北のどこかに置くとかだってありなはずですが。

大沢 でも今からじゃ難しいだろうな。より激しくなっていくよ、一極集中は。仮に変えたとしても前のがよかったとかいろんな不協和音は出てくるだろうし。それをやれる豪腕政治家が出てくれば日本は変わるだろうけどね。

―尚更、東京オリンピックに向かって、またガーッて集中しちゃって。

大沢 まぁな。でもそこで、東京に行けばなんでもある、逆に言えば東京にいなきゃ何もできないって考え方があり、一方では地方に住みたいとかもあるわけで。じゃあ、地方に住むために何が足りないのかといえば、田舎暮らしって半分くらいは挫折するしさ、実際超不便だし、そういう環境を整えるにはやっぱり金が動かないと駄目だよね。で、金が動くには人がいると。そこで堂々巡りになっちゃう。

―それにしても、昔は昔で日本がもっと貧しかった時代があって、金がないならないなりに、女のコにモテたいならどうすれば…とか背伸びしてたものですけど。

大沢 だから、そこでもうヤルって意識を捨ててるからでしょ。ヤリてぇとか思っても、まぁいいやになっちゃうわけだから。ああいう女とヤリてえとか思わなきゃ駄目だろ。

―そのために頑張って稼ごうとか車持とうとかあったわけですもんね。

大沢 結局、自分に欲望がないと女にも欲望がないと思うんだよ。街を歩いててイイ女だなと思って、その女だって人間なんだから、絶対誰かとヤってるわけでさ。その誰かに自分がなればいいじゃないかと思うんだけど、いや、自分もしてないんだから、ああいうコもしないとか、相手にされないからって諦めというか…そういうのもあるんじゃねーのかな。

もう生き物として種族が違うわ…

―周りの若い連中も合コンはやるんですけどね。でも、そこでお持ち帰りしようとか付き合おうが最優先じゃなくて、その後に男だけで反省会するのが楽しいって(笑)。

大沢 それはもう完全にハードル下げてるだけだって。意味ねーしアホらしいじゃん、そんな反省。なんの反省会だよ。

―みんなであのコはどうだった、おまえの会話がこうだったとか、男同士で振り返って飲んでる時間が一番楽しいんだそうです(苦笑)。

大沢 へー。けど、そういうのでも、ひとりモテて抜けていくヤツが出ればさ、また変わるんだろうけどね。「いや、何言ってんだよ。あいつもあいつも俺ヤっちゃったよ」って言ったら「え? ヤレるんすか?」「ヤレるよ」みたいなのがあればね。

―現実はそれと逆で、お互いに様子見して安心感を得ているような。

大沢 そうそう。おまえもヤレない俺もヤレないって、本当にモテない大学生の下宿じゃねーんだからよ。もう俺は理解できないよ、何に自信がないのか。本気で女とヤルのが必要ないと思っているとしたら生き物として種族が違うわ(憮然)。

―だからそういう生き物は淘汰されるしかないのか?という。

大沢 むしろ俺達が「セックスなんかまだしてるんですか? ありえなくないですか?」とか言われてさ、そういう時代だって来るかもしれないよな。

―意外と、地球的には増えすぎた人類を淘汰する刷り込みをしてるんじゃないかって思っちゃいますけど。

大沢 まぁ、やっぱり豊かになってくると子供作らなくなるってのはあるから。子供いない方が楽だしね。

―…と、ここでまたまた取材時間をオーバーしていますが、大沢さんの遅刻のため?延長していただけるようです(笑)! 

●この後編は次週、5月17日(日)12時に配信予定!

◆大沢在昌(おおさわ・ありまさ) 1956年、愛知県名古屋市生まれ。79年 第1回小説推理新人賞を「感傷の街角」で受賞しデビュー。以降、ハードボイルド小説の第一人者として活躍。94年には「無間人形 新宿鮫4」で第110回直木賞、01年「心では重すぎる」で日本冒険小説大賞、04年「パンドラ・アイランド」で第17回柴田錬三郎賞受賞。『週刊プレイボーイ』では最長編作となる「欧亜純白-ユーラシアホワイト」、エッセー「陽のあたるオヤジ」他、人生相談まで連載

(撮影/塔下智士)