あの『笑っていいとも!』の名物コーナー「テレフォンショッキング」の精神を勝手に受け継ぎ、“友達の輪”を繋げたい!
そう考えた「週プレNEWS」が始めた、新連載企画『語っていいとも!』。
リレーインタビューのメモリアルな第1回ゲスト、作家・北方謙三氏に紹介していただいたお友達は、盟友の大沢在昌氏。
なんと、まさかの大遅刻!?で登場した大沢氏だが、話は尽きず…。そのまま前回の北方氏同様、時間を延長していただき後編に突入!(聞き手/週プレNEWS編集長・貝山弘一)
―楽といえば、絶食男子の話でいうと、傷つきたくないっていうのもあるようですね。セックスしちゃう関係になると、特別な異性になるのが面倒とか。
大沢 傷つきたくないってのはわかるよ。でもさ、傷つかない人生なんてねーから。傷ついたことによって成長していくわけでさ、それは人間としての成長を放棄してるっていうのと一緒。ずっと自分が子供でいるのかよって。
でも結局やっぱり…セックス…なんだろうな。おそらくAVばっか見ていて、生身の女とセックスすると反応とか当たり前だけど鈍いわけじゃん。だからつまんないと思うんだよ。
―情報だけ一方的に誇張されて入り過ぎっていうのはありますよね。女は激しく喘(あえ)ぎ声を出さないといけないとか。
大沢 だからそれは喘ぎ声出させるまで頑張れって話なんだけど。最初から出るでしょ?みたいなのは困るよね。そこはおまえが努力しなかったら出るわけないだろっていう。
確かにセックスの話してると、そんな程度しかやっていないのってコは多いよ。いろんな女と遊んでるくせに「おまえ、ちゃんと女イカせてる?」って話すると「ちゃんと考えたことないっすね」みたいな。男が雑なんだよ。繰り返して一生懸命やっていれば女のコだってイクようになるわけだから。そういう努力をしてないおまえが悪いって。
―そのくせ、潮吹かせないと駄目なんでしょうか?とか(笑)。
大沢 それは馬鹿だけどね。まぁでも男にとっての成功願望のひとつがさ、イイ女とセックスすることだった時代もあるわけだよ。そのために何が必要なのか、例えばお洒落をするとか金持ちになりたいとか、いくつかそういう条件があって。その欲望がないってことは何にもなりたくないってことなのかと。いわゆるイイ男になりたいって意識がないわけじゃん。
―だから背伸びもしなくていいし、ガツガツ無理しなくていいじゃんと。
大沢 そりゃ楽だろうけど、背伸びくらいしろと。周りから背伸びしちゃってと思われていた時代があって、だけどやっていくうちにそれが板について、大人になるとよりカッコよくなれるんだからさ。頑張って背伸びしようよってことを言ってるんだけどね。
男も女もオナニーだけって時代になったら困っちゃうよな
―恥かいて覚えていかなきゃってものがあるんですけどね。
大沢 しかも、恥かいてることすりゃ気づいてなかったりするわけだよ。一張羅着て、大人の店に行ってカッコつけて女のコと飲んでて、傍から見るとガキが何やってんだよと思われてるんだけど、その時には全然気づいてない。でも後から考えると、あの時間があるからこそ今の自分があることは事実なので。今思うと恥ずかしいけど、でもやっておいてよかったと思うし。
―上の人間が教えるのか、下の人間が学ぶのか…そういう意味では社会自体が未成熟化している気もします。
大沢 だから例えば、金は持ってるけど、銀座とか行っても遊び方が子供ってヤツはいるよね、いい歳こいて。すぐ拗(す)ねたり、怒ったり。「おまえ、金はあるだろうけど、その飲み方で女にモテるわけねえだろ」っていう。40代のおっさんとかでも中身は子供みたいなのはたくさんいる。金はあるけど使い方が間違ってるっていうか。
―金持ってたらこっちは客なんだからなんでもやっていいだろっていう。
大沢 それもおかしいわけよ。キャバクラなんかで見回すと、人生=彼女いない歴だろみたいなヤツがいっぱいいてさ。一生懸命口説いてるけど、ありえねーからって。全員の肩を叩いて「キミね、お金と時間の無駄だから。絶対このコとはできないから、そんなお金あるなら風俗行った方がよっぽど気持ちいいぞ」って言ってやろうかって話したら「やめて、本当のこと言うの」って女のコに言われたことあるけどね(笑)。
だけど、本人は気づいてなくて、絵文字のハートマークを見ると本気だと思う馬鹿が本当にいるからさ。キャバクラとか特に(男を)引っ張るビジネスなんか完全にマニュアル化してるのにね、女のコ達も。いくらでもそれで転がせちゃうから。
―そんなのばっかで女のコもハマる男がいないというか。冷めてますよね。
大沢 そりゃ女のコの方がやっぱりしっかりしてるよ。辞める時はスパッと水商売辞めて学校行くんだよな。昔はそう言いながらハマっちゃって、一生抜けられなくなっちゃうものだったんだけど、大したイイ男がいないから辞められるんだよ。
―それで女のコの方も彼氏できなくて、とか。最近の記事で女性向けアダルト動画サイトが大人気っていうのがありまして。女のコが見る専門のAVに1日10万人アクセスするそうです。
大沢 女のコがそういうものを見て楽しむっていうの…俺らの時代にあんまりなかったよね。女性はやっぱり直接行為っていうか、相手がいて初めて感じるし、そんなの見たってなんにもないと思うけど。男も女もそこら中でオナニーしかしないって時代になったら困っちゃうよな。
―実は、女性にも大アンケートをしたことがありまして。やっぱり20~35歳を対象にガチでとったんですが、なんとそれも3人にひとりが処女でした。
大沢 処女が多いっていうのは確かにわかる。うちの娘なんかも大学卒業するまで処女だったから。女房と「早くヤラせた方がいいだろ」「親の私からそんなの言えないじゃない」って話になってさ。「親父の俺はもっと言えねえよ」って(笑)。
そんなにいっぱいヤッたってしょうがないだろ
―(笑)。さすがに父親としてはダイレクトな話はできない?
大沢 そん時はしなかったけど。で、会社入って、なんか合コンで知り合った男と、どうも卒業したらしいよみたいな話で。その後、ふたりで飲み行った時にどうだ?みたいな話したら「金がないから安いラブホテルしか行けないのって。そんなの男のウチでヤリゃあいいじゃないかっつったら、1回タクシーで帰ったら2万いくらかかったっていうから。そりゃ大変だわみたいな話で。
結局、その人とは別れて今は別に彼氏ができてるらしいけどね。一応、普通になってきた感じはあるんでホッとしたっていうかさ。まぁヤルことはヤッておけと。
―父娘でそんな話ができるのはイイです(笑)。
大沢 で、最初の男はどうしたって聞いたら「失恋した」「フラレたのか?」「うん」って言うから「良かったな」と。「えっ」って言うから「俺は男でも女でも、失恋してない人間は信用しねぇんだよ。失恋して泣いた経験のない人間なんか信用できるか」って。「そうなんだ」っつってたけどね。
―いいお話です。でもそれこそ歳の差婚全盛で自分と同じくらいの男を連れてきたらどうです?
大沢 別にいいんじゃねぇ? なんとも思わない。
―さすが、ご自分の経験値ゆえ、懐が深いのでは(笑)。
大沢 まぁ昔から俺は数は求めなかったけどね。それでも人よりは数こなしてると思うけど(笑)。たださ、言っちゃあれだけど、そんなにいっぱいヤッたってしょうがないだろっていう。このコだって思う相手ならいいけど。
それこそ若い時は木の股にでもツッ込みたいと思ってた時期もあるよ。なんでもいいからヤリてえと思った時代もかなりあったけど、さすがにこの歳になるとそんな別にさ。
―でもほんとヤッていかないと自信も何も身につかないですよね。それこそ恥をかきつつ…。
大沢 ヤレるってわかるとさ、学生時代とかいたけど、ブサイクな男でもナンパして大してカワイいコじゃないけどイケちゃうみたいなのってあるじゃん。それはそれで需要と供給のバランスが取れてるものだったのに、最近はそういうバランスも悪いよね。
―やっぱりアダルト動画やAVでいくらでも理想のコを脳内で描いて自己処理できちゃうからですかね。
大沢 それでみんながヤラないんなら、一極集中っていうか偏(かたよ)るだろうけど、若いヤツの中にも必ずいるからさ、女とヤリまくってる奴が。そういうの見て、あいつには負けないと思ったらヤレばいいんだよ、頑張って対抗して。
まぁ、おじさんに対抗するのは難しいよ。百戦錬磨で金もあるしさ。それは勝てないかもしれないけど、若いヤツでヤッてるのがいて、自分と顔も違わねぇし財布の中も変わらないのに、なんでこいつばっかと思ったら、俺だって負けねぇぞと思えばいいんで。そういう負けず嫌いは必要だよ。
悪くない人生だなと思えればそれでいい
―ほんと、そう思います。なんか、昔やっていただいてた人生相談みたいになりましたが…。ところで、大沢さん自身が人生相談するとしたら、何か聞きたいことってあります?
大沢 うーん。あんまりねぇなー。なんか、教えを請うっていう考えが元々ない、不埒(ふらち)な人間だからね。
そりゃ、衰えることに対する不安とか、それはあるけど。もう還暦目前だしさ。下半身は年齢のわりには元気な方なんで、別にあんまり不安は感じてないんだけど(笑)。でもやっぱり病気になったりとか、見てくれもどんどんジジイになっていくし女にモテなくなる。それはちょっとイヤだよね。
―その不埒な人間だからっていうのは、ちょっと違うかもしれないですけど、北方さんも「俺自身が神だから」他人に相談事などないと。いかにも北方謙三スタイルでおっしゃってましたが(笑)。
大沢 最近、あのオヤジと伊集院(静)さんはなんか怖いものなしになってるよ、酒飲むと(笑)。方向性は違うんだけど、酔っ払うとただのガキだからさ、北方謙三は。「大沢は老成しすぎだ」って言うから「老人だろ普通に考えて。もう60なんだから」っていうんだけどね。
この間も六本木の行きつけのバーに行って「大丈夫か? いつも決まった席で決まった女と酒飲んでるけど」って言うから、いや、それ以外のコとも遊んでるしって思うんだけど、「作家はもっとザワザワしないと駄目なんじゃないか」とかって(苦笑)。
―まぁそういうことを親身に語れるのも北方さんの男気なんでしょうが。
大沢 だからそういうとこが妙に真人間なんだよ、謙ちゃんって。俺は「そいつの人生なんだからいいんじゃね」ってタイプだから、はるかに謙ちゃんは真人間。俺はろくでなしだと思うよ。
―先ほどの娘さんとのやりとりでも大沢さんのスタンスが見えた気がしますが。
大沢 そうだね。あいつの人生だから、病気になったり早死にしたりしなきゃいいなってだけで。後はまぁ、いいこと悪いことなんて人生つきものなんだからさ、そんなの親がどこまで心配しようが絶対安全な道なんてないし。そんな道を歩んだら人生つまらないに決まってるわけだから。
結局、ある歳になった時に、まぁいろいろあったけど悪くなかったなって思えるかどうか。それはお金を持ってるとか有名だとか、権力があるとか学歴がいいとか、なんにも関係ないからね。その人にとっての良い人生、悪い人生があるわけで。そこをいろいろあったけど悪くない人生だなと思えればそれでいいと思う。良い人生だったなんて、なかなか言えないしね。
―まったく同感です。人生は振り子みたいなもので、大きい振り幅も小さいのもあってそれぞれだけど、結局最後にちょっと良い方に…悪くなかったなと思えるのがいいかと。
大沢 まぁ貝山もだんだん先が見えてきてるということだね。
―見えまくりですよ(笑)。でもこうして前を走っている方々がいるので。自分もまた走れるのかなと。
大沢 走ってねえよ。よろけてるよ(苦笑)。
次回ゲストはオヤジ殺しで人生の達人!?
―(笑)というわけで、お友達紹介なんですが…。
大沢 女性がそろそろ入ったほうがいいと思うし、阿川(佐和子)さんとかいいんじゃない? スゴく忙しい人だから受けてもらえるかわかんないけど。
―それは是非! こんなこともなければ週プレに出ていただく機会もないのではと思いますし。
大沢 彼女とはゴルフ仲間でもあるけど、俺は人生の達人だと思ってるから。まぁお父さんが著名な作家で若い時はご苦労もされたんだろうけど。本当にオヤジ殺しっていうか、会うとみんな大好きになっちゃうわけだよ。で、可愛くてさ…彼女、俺とそう年がかわらないんだ。
―え、そうでしたっけ? 確かに意外です。
大沢 全然見えないよね。…全然とか言うと怒られちゃうけど(笑)。本当イキイキしてて。
でも思うんだ、彼女のあの笑顔とか人当たりの良さとか、気遣いの裏側にやっぱりいろんなことがあって。絶対、人に言えないような悲しい思いや悔しい思いがあったはずだし、それをちゃんと自分の糧(かて)にしてきたからそういう魅力が出てるんだろうとね。そこが余計、素敵に思える。
―それはほんとそうなんでしょうね。
大沢 つまり、生まれた時からホンワカホンワカして、お嬢様育ちで苦労していないからああいう性格になったわけでは全然なくて。むしろ真逆でいろんな思いをした結果、今の彼女ができてるんだろうと思うわけ。そこにまた惹かれるっていうか。本当に素敵な人だよ。
―それこそああいうお父さんを持って、色眼鏡で見られたりとか、ただ安穏と育った普通の人生とは違うんでしょうね。
大沢 まぁだけど、作家の子供って男の子は結構よれちゃうのが多いんだよ。特に親父が有名だったりするとさ。そこを女性の方が割り切れるっていうか、やっぱり男は比べられるのが辛いのかもしれないけどね。もちろん、全員とは言わないよ。ちゃんとしてる人もたくさんいて、阿川さんのお兄さんは立派な大学の先生だしね。
―ただでさえ男は、それこそ精神的に父親殺しをしなきゃいけないので、存在が大きすぎると越えづらいでしょうね。
大沢 それがあるのかもね。やっぱりこう、プレッシャーっていうか、父親が有名だとちょっと辛いっていう。
―では、阿川さんにいかせていただければと。もうベストチョイスで他の方で考えられなくなっているので、断られるとショックですが…。
大沢 だから阿川さんがなるべくやってくれるといいなとは思うけどね。忙しい人だけど、ちょっとメール打ってみようか。
―ええっ、そこまでしていただくとは! これぞまさにテレフォンショッキング復活…というワケで「きてくれるかな」!?
●第3回は5月24日(日)配信予定! ゲストは作家・エッセイストの阿川佐和子さんです。
◆大沢在昌(おおさわ・ありまさ) 1956年、愛知県名古屋市生まれ。79年 第1回小説推理新人賞を「感傷の街角」で受賞しデビュー。以降、ハードボイルド小説の第一人者として活躍。 94年には「無間人形 新宿鮫4」で第110回直木賞、01年「心では重すぎる」で日本冒険小説大賞、04年「パンドラ・アイランド」で第17回柴田錬三 郎賞受賞。『週刊プレイボーイ』では最長編作となる「欧亜純白-ユーラシアホワイト」、エッセー「陽のあたるオヤジ」他、人生相談まで連載
(撮影/塔下智士)