第3回のゲストはエッセーからインタビューまで多才なご活躍の阿川佐和子さん。まさかの?週プレNEWS登場! 第3回のゲストはエッセーからインタビューまで多才なご活躍の阿川佐和子さん。まさかの?週プレNEWS登場!

あの国民的バラエティ番組のスピリットを引き継ぎ“友達の輪”を!とスタートした新連載『語っていいとも!』。

第2回のゲストとしてご登場いただいた作家・大沢在昌氏が次のお友達に推したのは、なんとエッセイストとしても知られる阿川佐和子さん。えっ、ありえない!? 超多忙な方でもあり、お断りされるのでは…。

と思いきや、そこで「じゃあ俺からメールしてみようか」とその場で大沢氏が自ら連絡を。すると、なんと即レスが返ってきたではないか!「なんか、出てもいいみたいだけど、私が受けなかったらどうなるの?だってよ」

もちろん、困ります! もう他の方では考えられないので、NGなら早くも友達の輪が途絶えるかもです!! 「…って、担当が泣きながら土下座してるよ、と。おっ、返ってきたよ。『泣いて泣いて!』だって(笑)」

というわけで、そんな泣き落としと(?)もちろん大沢氏との親交に応えていただき、阿川さんがまさかの週プレ降臨! お忙しい合間を縫って、都内ホテルの一室でお会いすることができたのだ。(聞き手/週プレNEWS編集長・貝山弘一)

―本日は、本当にありがとうございます。まさか、大沢さんにショートメールで直接やりとりしていただけるとは思わず…。

阿川 えっ、あれインタビューの時だったの? ひどいなあ(笑)。姉御~みたいな感じで、断れないでしょ、それは(苦笑)。

―それが狙いでもあって(笑)。でもその場ですぐお返事いただけるとも思わず、ライブ感が目の前で伝わってきて。お断りされると連載3回目にして終わりです~って(笑)。

阿川 そうそうメールに書いてあって、そんな馬鹿なって(笑)。

―いや、本当です! 第1回ゲストの北方(謙三)さん、大沢さんとも親身になって考えていただいて。「ちゃんと最初に礎(いしずえ)を作らなきゃいかんぞ」ということで。

阿川 そういうことですかぁ。だったら次は伊集院(静)さんのほうがいいんじゃないの?

―もちろん伊集院さんもズバリなんですが、大沢さんが「作家ばっかのカラーになっちゃうし、ここらで女性がいいだろう」と。阿川さんなら人脈ももっと広がるし「彼女しかいねえな」ってことに…。

阿川 責任重大。…っていうかキャスティング、手を抜いてますねぇ(笑)。でもまさか週刊プレイボーイから依頼がくるとは思ってなかったから、何用?みたいな。グラビアですかぁ!?なんてね(笑)。やめなさい、お下品な!

―自分ツッコミでギャグにしていただきました(笑)。でもほんと、週プレなんて出てらんないわよねって断られたらどうしようと。

阿川 いやいや。あれ、この間だって又吉(直樹)さんと太田光さんの対談をしてましたよね。なんで見たんだろうな…。あのふたり、(対談を)やるだろうなと思っていたけどやってるな、いい企画だなぁと思って。

私は餃子屋の女将(おかみ)か?

―チェックしていただき光栄です。又吉さんも超多忙ですけど、爆笑問題さんにずっと本誌の連載コラムをやっていただいてるんで実現できたようです。

阿川 じゃあ、(次のお友達に)太田光はどうですかね? 仲良いんだけど(笑)。

―ものすごい内輪でぐるぐる回ってるみたいな(苦笑)。阿川さんのやられてる「この人に会いたい」(週刊文春)は毎回どうやって人選を?

阿川 キャスティング考えてる時って仕事の中で一番好きかも。でも「あの人、どう?」とかいって、それで決まりましたって言われると「え、なんで?」とか。自分が言い出したくせに忘れてたよ、ってこともよくある(笑)。

―なんですか、それ(笑)。まぁあれだけ毎週やっていれば…じゃあ基本、御自身のリクエストですか?

阿川 それはないです。この20何年間、担当は11人変わってますけど、毎回その日の対談のための準備として、大体2時間前に集合するんですよ。で、お昼でも食べながら今日の作戦をなんつって…気がつくと、「後、誰決まってるの?」「決まってません」「やばくない?」「じゃあ、あの人にこの間、別のところで会って結構面白そうだけど、どう?」とか。

「いや、それは今、なし」なんて言われる時が多いんですけど(苦笑)。担当者とそういう話ばっかりで、「あっ!時間になっちゃった」って対談場所に向かうことはすごく多いですね。次の人選の話をする時はやたらにテンションが高いっていう。

―しかし毎週毎週ってほんと大変ですよね。この本読まなきゃ、資料を調べなきゃとか仕込みもして…。

阿川 ほんとね、来週1本入れないと穴が空くかもしれませんみたいな状況がしょっちゅうで。餃子屋の女将(おかみ)か?と私は言ってるんだけど(笑)。こんなに作っても、ふっと気がつくと、全部食べたの!? もう消化しちゃったの!? また作んなきゃ!って20何年間繰り返してる感じ。なんだかなー、虚しいって思いながら…。

だから、一度穴あけちゃおうよとか言ったりするんですけど。そうはいきませんって言われて。読者が喜んで、すごくウケて話が面白くて暇な人、さぁ誰でしょう…っていう。明後日どうですか?ってお願いして、受けてくれそうなゲストいないかなって。だけど、人気ある人でそんな人いるわけないし…という会話を年がら年中繰り返してます。

―恨み節のような(笑)。でもずっと追っかけられてるような落ち着かない感じでしんどいでしょうね。

阿川 先々週なんて泣いてましたよ。インタビューは嫌いだ!って。7人かな。週刊文春とその合間に『サワコの朝』(毎日放送系、毎週土曜7:30~)の対談も1日2人やんなきゃいけなくて。その間に谷川俊太郎さんに雑誌でインタビューしなきゃってあって。試験期間中の学生の気持ちですね。

―取りダメが重なって、というのもままあり?

阿川 ありますね。TVの収録は私の都合というよりスタジオの都合で決まってキャスティングしていくから、2週間に一度で定期的なんですけど。文春の場合はお相手の都合によって場所もまちまちですしね…。この部屋でも何回もやりましたよ。ここのホテルの6階は勝手知ったるで、いくつかのパターンの部屋があってね。いろんな人と対談しました。

会いたい人に会うまでは苦痛ですよ

―インタビュールーム評論家にもなれますね(笑)。

阿川 都内のホテルのスイートルームはほとんど知ってますって豪語してたことがある。でも泊まったことはないんです(苦笑)。

―面白いなぁ。実は僕も94年から20年くらい週プレで小説に映画、スポーツと担当してインタビュー経験でいえば1千件以上はやってるはずですけど。阿川さんは週刊文春だけで1千回以上やられていて。トータルでは1万ぐらいいくのでは?

阿川 そこまで多くはないと思うけど、もう亡くなられた方も多いですね。どっと疲れますよー。ホント、なんでこんなに長くやってるんでしょうね。得意でもないし、好きでもないのに。いつも楽しそうですねって言われるんですけど、いや、そういうこともありますけど…ねぇ。

―あの黒柳(徹子)さんも『徹子の部屋』だけで1万回突破ってことで、上には上がいるというかトンデモないですけどねぇ。

阿川 黒柳さんは毎日の番組で40年以上? それはもう大変な…。でもあの方は苦になさらないらしいですね。1日に5人とトークしてらっしゃるんですよ。私だったら翌日寝込むな(笑)。

―あのパワーは人並み外れてますよね。もちろん、こういう仕事で話している相手にパワーをもらうってこともありますけど。

阿川 私の場合はね、会うのが楽しみってことはあんまりないんです。たくさんインタビューしたい、あの方にもこの方にもお会いしたいって人が時々いるけど、そういう積極的な気力はないんですよ。でも、お会いした後に、この人に会えたって、なんてシアワセなんだろうって思うことは山のようにあります。でも会うまでは苦痛で苦痛で…。

―はたから見れば、羨ましい話なんでしょうけどね。僕が編集部に入りたての頃、グラビア担当の先輩に「アイドルと仕事するとか撮影でヌードに立ち会うとか、周りから憧れられる商売ですよね」って話をしたら、いや、オマエ冗談じゃないよと。「そんなの産婦人科医と同じで毎日女のアソコ見てもなんとも思わなくなるのと同じだ」みたいなことを言われて(苦笑)。

阿川 なるほど、わかりやすい表現(笑)。…でも苦痛と思いつつ、心の半分では感謝感謝ですよ。お給金いただいて新たな出会いを次々作っていただいて、その上、人から聞いた面白い話を自分の財産にしてるんですから。ずうずうしいですね。

―そういう意味では、著書の『聞く力』を読ませていただいて、新書だからって講釈されてる感がまったくなく…。今みたいに、インタビューなんてイヤとか、本当に向いてないんだとか、経験から学んだことを実例を挙げながらエッセイ風に書かれてるんで、ホッと共感を覚えて楽しく。

阿川 何も教えてないでしょ(笑)。何がウケたのかわからないけど、元々ノウハウ本なんか書けっこないって思ってたんで。そもそも自分でわかってないんだし。瞬間瞬間、こうした方がいいか、ああしたらダメかってことを積み重ねてきた部分はあるかもしれないけど、それが絶対的な手法かどうかはわからない。前回成功しても、次の時は失敗することもあるし、こう聞けば絶対うまくいきますよって人様に教えられることなんて何もないですもんね。

それで、じゃあ何書けばいいの?って担当者に言ったら「いろんな経験してきたじゃないですか」って言われて。そりゃあ(柳家)小さん師匠に怒られたり、終始不機嫌そうにしてると思ってたら楽しかったって言って帰っていく方がいたり。そういうおかしい話を思い出して、書いていけばなんとか1冊にはなるかなって思っただけで。

私のいいところは、女として意識されないこと

―やっぱり体験談的なものが一番身に染みるというか伝わりやすいところもあったのでは?

阿川 まぁそうかもしれませんね。そもそも成功した自慢話なんて誰も読みたくないじゃない? ひどい目に遭った話の方が好きなんだから、みんな(笑)。

―なので同じような仕事をしている身として、本当に肩の荷が下りたというか、ホッとさせられまして。阿川さんでもそうなんだからと楽になりました。

阿川 少しはお役に立てたとしたら、ありがとうございます。でもまぁ、初期の頃と比べたら私もずうずうしくなりましたよ(笑)。講談社の『IN★POCKET』って雑誌で、北方謙三さんにお会いしたのが30代入って間もなくかな…。30になる直前でTVの仕事を始めたんですけど。まだインタビューの仕事を始めたばかりの頃ね。

ホテルの北方さんのお仕事場に伺った時に、何か怖そうな人だなと思ってたのに、会ったら「おー」って、ニコニコと話をしてくださって。北方さんの小説なんてそんなには読んでないし、ビクビクもんでアラが出ちゃったらどうしようとか思いながら話してたんですけどね。最後に写真を撮る時だけ「ちょっと待って、営業用の顔するから。それやらないと、イメージ壊れちゃうからさー」ってカメラに向かって急に渋い顔をされて。その瞬間、この人、面白い!と思って。

―いまだに変わらずオチャメで魅力的ですけどね。エッチだし(笑)。

阿川 カワイいし。エッチ好きそうでね。私は全然誘われませんでしたけど(笑)。

―あはははは。でも相手のそういう素が見えたりすると嬉しいですよね。逆に全く打ち解けず、途中で土俵際に追い詰められたり、ヤバいよ~って思うこともありますが。

阿川 それは私だって怒られたり、なんとなく機嫌が悪くなってきたぞー、どうしようーって思ったことはいっぱいありますよ。…でも編集長の場合、女性が相手だと、イイ男すぎるとか向こうが思ってびびっちゃうんじゃないの?

―ええっ、いきなりそのツッコミですか(汗)。いやいや、声だけはイイとか言われますけど…。

阿川 いやいや、自分でも思ってるな? 俺って結構、イイ男だぜって。絶対そうよ、じゃなきゃそういう帽子のかぶり方とかカーディガンの着方とかしないと思う(笑)。自分のこと、よくご存じのくせに。

―まさかのイジられ役とは(多汗)。阿川さんの切り込みがさすがということで、そのまま記事にします…。

阿川 女のコのほうがビビるってことはありますよ。私がね、わりにいろんな人が話してくれるのは、よく阿川さんの力とか言われるけど、女としてこいつちょっとイイ女で下心が騒ぐなってタイプじゃないからだと思うの。女と意識しないで友達みたいに話せるからいいんだよって。これが、相手が橋本マナミだったら編集長だって話の内容変わるでしょ。

―そこでスッと橋本マナミが出てくるところが素晴らしいです(苦笑)。

阿川 ほんと、安心オバサンなんでしょうね。気取らないで済むっていう。大沢さんや伊集院さんであろうと、大竹まことさんであろうと、これだけ女の人といろんなことありそうな人たちが、こっちを女と扱ってないなっていうのがひしひしと伝わってくるんだけど、それはそれで楽しいんですよね、こちらも。

ずっと自分はダメ人間だと思ってた

―それこそ天性というか希有(けう)な存在というか…。

阿川 女としてはどうなの?って思いますけど。安心できるっていうのも嬉しいのは嬉しいですよ。それでこちらも「最近どうなんですか、そちら方面は?」なんて聞けるし。

―それも怖いですが(苦笑)。僕もさっきツッコマれて、取材で初めてでしたもん、あんな焦って間が空いたの…。

阿川 だって、ツッコミどころがありすぎますよ、編集長(笑)。私がもうちょっと若ければ、そんなこともできずにね。ドキドキして、うつむいてたと思う。もうイイ男の前でドキドキすることなくなったからなぁ。おばさんって動物はそういうものですよ。

―いや、でもある意味、昔の女優さんで北林谷栄さんとか、樹木希林さんなんかも若い頃から老け役もやっていて評価されていたワケで。それに近いような…。20代30代の頃からそういう素養が身についていたとも言えませんか?

阿川 私は20代はずっとお見合いしてたんだけど、どれもこれもうまくいかず、ダメ人間だって思ってましたから。30から仕事して10年間くらいはダメでした。自信はないし、今もないけど…つまり何かの能力を評価されるってこともほとんどないままね、なんとなく親の七光りで仕事始めて生き延びて。ギャラ交渉とか言ってこないから使いやすいって理由だけで使われ続けてたんだと思うんです。

いずれは私が落ち着く先は、結婚して子供を産んで専業主婦になることで。その過程においてTVにちょっと出るとか、雑誌の仕事をするっていう経験をしてるのは社会科見学のためにはプラスになるだろうくらいの気持ちで。そのチャンスを与えられたことはありがたいけども、非常に腰掛け的な意識で、まぁずっとは無理ねという感じでやってたのにね。

そのうちお見合いの話もなくなり、どうすんの、この人生?ってなった時に、まぁちょっと真剣にやらなきゃいけないかしらって。いただく仕事を100%達成させてはいないけど、今回60点ですけど、すいません、次回頑張りますのでよろしくお願いしますって続けていたら、こうなっちゃった感じですね。

―そういう部分に、また一般の読者含め共感できるというか。それこそ自分に自信があって上から目線な人だったら受け入れられなかったのではと。

阿川 でも、それもね、ずいぶん昔のトークか何かで「私なんか役に立つ話もないし…」みたいなことを言ってたら、終わってオジさんがひとり、「キミね、あんまり謙虚そうに見せるのはイヤミだよ」ってすごく怒られたのね。別に謙虚そうに見せてるんじゃなくて本当にできないんだけど、そういう風な言い方をするのが人に嫌な感情を与えるっていうのは確かにあるんだなと思って。

でもねぇ、本当に自信ないんだもん。それはたまに褒められたりすれば、あぁ私って才能あるのかしらって思うけれども、毎回続くってないですからねー。っていうのと、その先どうしたいっていう欲が仕事に関してね、全くないの。向上心系なことを考えたこともないし、今回はよく働いた、満足だって気持ちよく眠りにつくことがシアワセ。だけど、書いてくれと言っていただくと嬉しくて、また引き受けちゃう。

―…と、ここで次週の延長戦とさせていただきますね。超ご多忙な阿川さんですがまだまだお話は尽きませんし、こんな機会もないので…。お時間いただけるということで後編に突入です!

●この続き、「仕事嫌いっていったって、お嫁にいけないんだからしょうがないよね」は後編にて!

阿川佐和子(あがわ・さわこ) 1953年生まれ、東京都出身。慶應義塾大学文学部卒業。TBS「情報デスクToday」「筑紫哲也NEWS23」「報道特集」などでキャスターを務め、以後、執筆を中心にインタビュー、TV、ラジオ等幅広く活動。1999年『ああ言えばこう食う』(檀ふみとの共著)で第15回講談社エッセイ賞、2000年『ウメ子』で第15回坪田譲治文学賞、2008年『婚約のあとで』で第15回島清恋愛文学賞を受賞。現在、テレビ朝日「ビートたけしのTVタックル」、TBS「サワコの朝」にレギュラー出演中。近著に『叱られる力 聞く力2』(文春新書)。2014年第62回菊池寛賞を受賞

(撮影/小澤太一)