第3回のゲストはエッセーからインタビューまで多才なご活躍の阿川佐和子さん 第3回のゲストはエッセーからインタビューまで多才なご活躍の阿川佐和子さん

あの国民的バラエティ番組のスピリットを引き継ぎ“友達の輪”を!とスタートした新連載『語っていいとも!』

作家の大沢在昌氏からご紹介いただいた、第3回のゲストはエッセイストとしても知られる阿川佐和子さん。さすが、週刊誌の対談連載「この人に会いたい」、そして大ベストセラー『聞く力』とインタビュアーの実績では右に並ぶ者がいない大先輩なだけにこちらはタジタジ…。

だが、話は弾み、超多忙なスケジュールを縫っていただいた取材時間ギリギリまで融通いただき、延長戦の後編に突入!(聞き手/週プレNEWS編集長・貝山弘一)

―ほんと、そもそもこれがやりたい!とか自分が自分がってのがないんですね。

阿川 ただ、現場は好きですね。だからTBSに勤めた時も社長、副社長までは偉いのは知ってたけど、部長と局長と専務、常務の区別がつかないとかね。盆暮れにものを送るとか常識的な礼儀もなく。その時、社長が気の合う人だったら、廊下で会うと「おっ、社長」とか手を挙げて挨拶はしたけど(笑)、それは別におべっかを使うつもりでもなくて。大事なことは、現場の担当者とカメラマンと速記の人とかと一緒に戦って、そこでちゃんと自分の役割を果たして褒められたら嬉しいってだけなんです。

―自信ないわりに、それはそれで大らかですけど(笑)。現場が一番ってのはありますよね。

阿川 ねぇ。やって面白かったよと評価されるものにした喜びは、みんなで「やったね!」って言いたいでしょ。で、ここはこっちのがよかったんじゃない?みたいな喧嘩もするけども、互いに自分の持ち分で働いてるワケだから、と。…えっと、つまり何を言おうとしたのかというと、自信がないってことで好かれるか好かれないかって言われると、自信ある人のほうが憧れられることも世の中では事実だと思うので。謙虚なだけがいいかはよくわかんないんですけどね。

―まぁ、そんないろいろ含めて、大沢評では「あの人は本当に人生の達人だよ」って。

阿川 なんで(笑)。よく言うよ。ご自分のほうがねぇ。私なんか、さっきの話とかぶるかもしれないんですけど、小っちゃい頃から専業主婦になって亭主の稼ぎの元にそこそこ家事万端、育児もやって。それでまぁ優しい旦那様がおまえの作った料理は美味しいよとか、たまにはふたりで遊びにいこうよとか言うようなね。それこそ私の父のように暴君で、養ってるうちは逆らうことは断じて許さんみたいな旦那は絶対ヤダとか思いながら、怒鳴ったりすることのない大らかな旦那様と共に生きていくのが人生の目標だったワケですよ。

そういう夢というか、それを信じて疑わずにきたら、結婚するはずのない友達がどんどん結婚して子供を産んで、一番結婚しそうと言われていた阿川が売れ残って。なんなのこれ?みたいな感じで。どうしてこんな歯車狂っちゃったんだろうと暗くなったのが20代でしたから。お先真っ暗ですよ。大学までいったのに何してるの私?って感じで。

当時は25過ぎたら後妻の口しかないよって言われてた時代ですしね。何がいけなくてこんなに自分が望んでる方向にいかないんだろうと思っていて。だからといって仕事に生きるなんてことは考えも及ばないですから。だって、女が外で仕事するとしたら、よほど能力が高くなきゃダメだと思っていましたし。

TV局あたりに誰かイイ男はいないかなぁ…

―そこで自己分析をされたりして?

阿川 改めて自己分析するまでもなくわかってましたけどね。私はダメな人間だと。父にはずっと、うちの娘はバカだバカだ、本を読まないバカだって、少しは本を読めと言われ続けて。兄は優秀、それで私は社会のこともわかんないし知識もないし。漢字も読めないけれど、誰かの奥さんになって、家事育児に専念するのはたぶん得意だぞと。ご飯作るの嫌いじゃないし子供も好きだし、家事全般イヤじゃないから、掃除は苦手だけどやりくりはできるはずだ。友達のお母さん方もみんな、イイ奥さんになるわよーって太鼓判押してくれてたの。

―今でも周りはそう思ってるはずですけど…。

阿川 でも違うんですよ。そうじゃないことを今の歳になってわかったんですけどね。それで、このまま30になったらどうなるんだろう?って頃にTV局からアシスタントで出ませんか?って話がきて。それで世界が広がったなんてちっとも思っちゃいないですよ。単にTV局あたりに誰かイイ男はいないかなぁって思っただけで(笑)。

だってその頃、大竹しのぶさんは服部(晴治=当時TBSディレクター)さんってイイ男と結婚して、大山勝美(同ディレクター)さんだって格好イイと言われてたし。業界系のそういう人がいっぱいいる世界にちょっと憧れて…。でも建築関係もいいなと思ってて、建築事務所のバイトしたこともある(笑)。そんな生活をしながら、だからといって狩猟系じゃないんですよ!

―今でいう肉食女子ではないわけですよね。

阿川 ないの。それで、TVに出ても今度は番組のボスにダメだダメだとそこでも言われ、怒られ続け…。そしたらさっき言った『IN★POCKET』で作家にインタビューをしないかって言われて、どの作家の本もそんなに読んでないしドキドキもんでしょ。駆け出しの頃ですけどね。

そうやってインタビューは上手と言われた試しもなく、それでもぼちぼちエッセイとかも書いてったりして。嫌いだっていったって、お嫁にいけないんだからしょうがないよね。仕事がくるんだからやらざるをえないと思ってやって、これがずっと続くとは思えないみたいな。で、TVと出版社の仕事をちびちびやってたら首にはならないって状況が続いて…どれもたいした褒められたことしてないのに、なんで続いてるのかよくわからない(苦笑)。

―つまり、自分が一番、どこが人生の達人なのかもわからないと。

阿川 どこが達人なんだ? 40過ぎて、TVの仕事をいったんやめてアメリカに1年行ったのも別にたいした理由はないんですよ。ブラブラしたいから行っただけで。で、帰ってきてから開き直ったっていうのはあるんですけど。しょうがないじゃん、もうお見合いの話なんてこないし。子供産むのももう無理となったら、そういう環境下で幸せを見つけて生きていくってしかないもん。

―そう開き直れたら、仕事への対し方も変わりました?

阿川 アメリカでのブラブラ生活を終えて帰ってきたら、仕事を一緒にやろうよって言ってくれる奇特な人が現れて。親の七光りとか筑紫(哲也)さんの七光りとかじゃないところで私に声をかけてくれるという嬉しさで続けられたっていうのはあったかな…。

結果的に言いますと、人生プランなんてものを考えてる時のほうがまったくうまくいってなくて、とりあえず来週までの仕事をなんとかするとか、原稿書けないけどどうしよう!って半泣きになりながら、でもなんとか書いた! やったね! はい、次!って目の前の、とりあえずの危機みたいなのを乗り越えてきたら、この歳になりました。

なんか、よく喋りますね。阿川、喋り出すと止まらないって言われるんで(笑)。

ドンファン系はやっぱいいなって思う

―もちろん、「語っていいとも!」ですから(笑)。でも伺ってると、インタビュー嫌いですとか、大変ですからとかありつつも、やっぱり「この人に会いたい」的な興味とか好奇心は常に持ってらっしゃるのでは?

阿川 どうなんですかね。私は好奇心強いですかね? 会うまでは面倒くさいんだけど、やっぱり面白い人は好きですね。それも裏がありそうで、どこか抜けてたりダメそうだったりとかいう面白さが(笑)。何回くらい離婚してんのかな、とかね。(こちらを見て)絶対ありそうな気がするじゃない?

―また急に切り返してのツッコミですか!? 裏を読まれてる感じがして怖いです(汗)。それは一度、お酒でもご一緒させていただきながら…。

阿川 ぜひ(笑)。社交辞令でしょうけれど、ぜひ!

―そんなご自分の好き嫌いはどうなんですか? 人に悪意を持つタイプにもお見受けしませんけど。

阿川 それはあるみたい…っていうか、あります。けど、うーん、まぁそういう意味では好奇心があるのかもしれない。このタイプは合わないだろうなと思って話してみたら嫌なところが面白いとか(笑)。そこまで徹してるのはすごいパワーだなと感心するとか。臭い食べ物でも食べてみなきゃわからないってところもあるでしょ?

人間の好き嫌いも食べ物も自分の価値観の中では似てる気がするんですけど。中華が食べたければイタリアンも食べたいし、お寿司も食べたければフレンチはすごい得意じゃないけどもやっぱちょっとは…って。もうこのジャンルはダメと決めましたっていうことができない。どれも覗いてみたい性分ではあるかもしれないですね。

―それは僕も同じです。食べてみたい行ってみたい、みたいな。

阿川 ふーん、じゃあ光源氏みたいなんだ? どういうタイプの女性も好きなの? 太いのも細いのも(笑)。

―いやいや、またそうきましたかー。阿川流ツッコミの極意で楽しんでません?(苦笑)

阿川 でもさ、男の人は狭いのよ。基本、保守的でしょ、女性に対しても食に対しても。なんかドンファン系はやっぱいいなって思う。年増も若いのもいいねーみたいなね(笑)。

―誰がドンファン系なんですか(汗)!

阿川 その好き嫌いって話でいうと、ある女優さんがね、いろんなスキャンダルもあったり、いろいろしてた時にインタビューすることになったんですけど。どう考えたって合うと思えないなってタイプで。そしたらお会いして、話をしているうち彼女が興に乗ってきて、なんの話だったか、バン!とかいって政治家かってくらいに机を叩いてね。

それが男らしいなというか、言い方はあれだけど、やっぱりここまで自分の仕事を勝ち取ってきたのは相当な努力と感性と強さがあるんだろうなと。そこがものすごく魅力的だと思ったの。その机をバン!と叩いた瞬間。

で、そのあと別のパーティーでご一緒する機会があったんですけど、オジさまの目がみんな彼女のお尻にほんっっとに集中してて。それがキレイでまたイイお尻なの(笑)。これを作ることにどれほどの努力をしてるかと想像したら、私は本当に申し訳ありません、なんの努力もしないで人のことを批判できる筋合いじゃございませんっていう気になるほど。本当に今では尊敬してます、彼女のこと。

大竹しのぶさんと「面白くない人はやあね」

―そういう気づきがあったわけですね。

阿川 うん。だからイヤな人かもしれないと先入観を持つこともあるし、会ってみたら思った以上にいい人もね。やっぱりイヤだったってことだってもちろんありますけど(苦笑)。でも、会う前に自分のスケールだけで決めつけて避けるのはいけませんね。

―確かに、そういう何者かになっている人は、自分にないものも含めて得るものというか魅力があるんでしょうね。

阿川 まぁそこは私も職業的なアンテナになっちゃってるのかなって思いますけどね。こういう仕事をしていない、ごく普通の女だったら、合わないなって思った人にまで近づくかどうかわからないし。インタビュー嫌いなくせに、これはちょっと面白そうだから話を聞いてみたい、この人はどういう人なんだろうって関心に結びつくのはそういうのがあるのかな。

―ドキドキがてら怖いもの見たさと、普通にしてたら経験しないものを覗きたくなるような?

阿川 みんな、変だもんね。私、変な人はやっぱり好きですよ。この間、大竹しのぶさんと話してて「面白くない人はやあね」って頷(うなず)き合って(笑)。大竹さんのそのつぶやき具合がまた最高なの(笑)。そういう人との出会いは宝物ですね、いっぱいあるけど。

―いや、1千回以上続いてるってだけでも貴重ですし、20年以上っていうのもやっぱり向いてなければできないなと…。

阿川 まぁ、あんまり無理にまとめなくてもいいですよ。…今、このインタビューの構成考えてるでしょ? この話は一体どこに落とせるだろうと思って(笑)。

―また裏を見透かされて(笑)。でもこれに関しては、本当にゆるーく考えてるんで。それこそ行き当たりばったり、他愛もない話をということでテーマもないですし。流れのままで全然大丈夫なんですけど。いや、もう時間大丈夫かな?ってだけ…。

阿川 まだ大丈夫ですよ。次の仕事まで、時間まだあります。

―やはり阿川さんも盛り上がってオーバーしちゃったり、ハプニングとかおありでしょうかね…。

阿川 ありますよ。聞き手のこっちの時間がなくなっちゃったりして(笑)。

昔、山本夏彦さんにインタビューした時にそれはもう緊張して、ドキドキしてインタビュー終わったら、夕方になって必ず周りにいる誰かに「今日は何を食べようかな? ご飯につきあってくれないかな?」ってさりげなくつぶやく方らしいのね、それは後で聞いたんですけど。で、対談が終わったら「今日は僕は晩ご飯は何を食べようかな?」っておっしゃった時に「ん?」って周りでみんな目配せして。

その日は私、別の友達とご飯食べる約束があったんですよ。カメラマンの人は当然、お先失礼しまーすって、ライターの人も私ちょっと原稿書かなきゃいけないからって。担当編集者の男のコくらい、僕はお供しますってまず先に言えよって思ったんだけど(笑)。やっぱりちょっと仕事があるんでって私の顔見るから。「え、私? あ、わかりました」って。

こっそり友達にちょっと遅れるけどごめんって連絡して、山本さんに「あの実はちょっと約束があるんですけど、30分くらいでよろしければ…」って感じでホテルのバーかなんかに行ったんですよ。そこでつまみながら飲んで、山本さんも事のほか楽しそうってわけでもないんだけど、私なんて時計ばっかり気になるし、もう限界だと思って。「ちょっとそろそろ行かなきゃいけなくて…」って申し上げたら、うーんって天井を冷たく見上げながら「忙しいことにろくなことはないね」と。私、もう泣きそうでしたよ(笑)。

次回ゲストは芸能界の父というか母というか!?

―阿川さんの聞いた「ひと言名言集」ができますね(笑)。でもインタビュー終わって、そのまま食事をご一緒にっていうのもなかなかないなぁ。

阿川 その日のうちっていうのはあんまりないし、さっきもおっしゃったけど今度飲みましょうっていって実現することも少ないけど。時々、ほんとだったんだ?みたいなこととかね、わりと対談で友達になった人は多いんです。和田誠さんもそうだし。

和田さんの場合、デザインされている飛行機の話で盛り上がって、今度乗りに行くんだっておっしゃるから「わぁ、素敵」とか言っちゃって。そしたら後で電話かかってきて「来週乗るんだけど」「いや、ちょっといけないんですけど…」「まぁ無理だろうとは思ったけど、乗りたいっておっしゃってたから」って。申し訳なかったなーと思って心残りだったので、次に個展をされるタイミングがあって顔を出したら、その後の飲み会にも参加して。それからだんだん和田さんとかお仲間の方たちと仲良くなって。

和田さん、その頃すごい飲んでらしたんですけど、私が翌朝早いんで、ちょっとだけご一緒しますって断りを入れて参加するくせに、でもその仲間の中にジャズピアニストなんて方もいらしたりするから楽しくてしょうがないの。気がつくと朝の4時ってことが結構多くて。早く帰るって言ったのは誰だ!?ってね(笑)。

―特に年上の男性が連れ回したくなるというか、何を喋ってもお相手してくれるし一緒に引き連れていきたくなるような年上キラーであると(笑)。

阿川 あら、そうでもないんですのよ。意外に若い人にも人気なの、私(笑)。年上キラーと言われがちですけど、サイン会したら若い男のコたちが多くて、書店員さんたちまで驚かれたってことが…あったような? まぁ今は同世代のオバサン? 女の人が多いですね。

―(笑)。では、そろそろご紹介いただくお友達の話を…。

阿川 どうまとめましょうか?

―いや、まとめはまとまらないんで(笑)。流れのままにで結構ですけど。一応、事前に考えていただいてたんですよね。

阿川 そうなの。ピーターさんなんか、いかが。きっとお友達の輪、死ぬほど広がるよ。お笑い芸人とか若いイケメンとか(笑)。

―ピーターさん! これはまたドキドキします…。この繋がりでなければ、なかなかお会いできることもないかと。

阿川 私が申し上げるまでもないんですけど、後輩の面倒見がよく、情に厚くて料理がとてつもなく手際良くお上手で疲れ知らず。誰からも慕われる芸能界の父というか母というか…(笑)。

―では、ピーターさんで是非。きっと受けていただけるかと。あっ、阿川さん、次のお時間大丈夫ですか?

阿川 ! あら、もうこんな時間だ。じゃあね、バイバーイ。

●第4回は6月7日(日)配信予定! ゲストは歌手、俳優のピーターこと池畑慎之介さんです。

◆阿川佐和子(あがわ・さわこ) 1953年生まれ、東京都出身。慶應義塾大学文学部卒業。TBS「情報デスクToday」「筑紫哲也NEWS23」「報道特集」などでキャスターを務め、 以後、執筆を中心にインタビュー、TV、ラジオ等幅広く活動。1999年『ああ言えばこう食う』(檀ふみとの共著)で第15回講談社エッセイ賞、2000 年『ウメ子』で第15回坪田譲治文学賞、2008年『婚約のあとで』で第15回島清恋愛文学賞を受賞。現在、テレビ朝日「ビートたけしのTVタックル」、 TBS「サワコの朝」にレギュラー出演中。近著に『叱られる力 聞く力2』(文春新書)。2014年第62回菊池寛賞を受賞

(撮影/小澤太一)