毎年のように、いきなりブレイクしてはそれっきりで消えてしまう“一発屋芸人”。
その誕生には現代の若者の意識変化が影響していると、精神科医の和田秀樹氏は分析する。
* * * なぜ、近年は一発屋芸人が多く生まれるのか?
それは、今の若い人たちは「これが好きだから買う」という個人の好みよりも、「みんなが買ってるから買う」という同調意識が強いため。
例えば、選挙の投票で「Aが有利でBが不利」という事前予測が出た場合、昔は負けそうなBのほうに入れる人が多かった。しかし、今の若い人たちは勝ちそうなAのほうに入れる傾向がある。
これは、スクールカーストなどによる影響で「その場の空気に合わせないといけない」という意識が働くためだ。そうなると、「皆が面白い」と言うお笑い芸人に桁外れな人気が集まる。そして、短期間で一気に売れて、知らない人がいないほどのネタになる。
一方で「今、面白い人がベスト」というわけだから、そのネタに飽きれば、すぐ次の面白い人を探すことになる。
昔のファンはタレントとの一体感が強く、好きでいる期間も長かった。例えば、山口百恵が国民的大スターになっても桜田淳子ファンは意地でも百恵の歌を聴かずに淳子を応援し続けた。それが今は、面白ければ誰でもいいわけだから、次々と好きな人が変わる。そのため、一発屋が多く生まれることになったのだ。
一発屋は、一時とはいえ日本中を盛り上げて、「自分は仲間外れじゃない」という連帯感を与えてくれる。例えば、本が売れたといっても100万部だが、一発屋は何千万人という桁外れの影響力だ。そのすごさは尊敬している。
(取材・文/村上隆保)
■週刊プレイボーイ24号(6月1日発売)「一発屋芸人に学ぶ大ヒットの作り方!」より(本誌では13ページ大特集で、ダンディ坂野からテツandトモ、波田陽区らあの芸人たちが一世風靡した時代を振り返るインタビュー一挙掲載!)