「どやさ」の持ちギャグとともに女性漫才コンビの先駆けとして多くのファンに愛された今いくよ・くるよコンビ。

40年来の友情の深さは「お互いが結婚相手」「芸が家庭のようなもの」と周囲に言われるほどだったーー。

タレントでエッセイストの小島慶子が、世間の気になる話題に独自の視点で斬り込む!

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「悪口を言わない人だった」と相方のくるよさんも後輩たちもいくよさんを偲(しの)んでいます。男性ばかりの芸人の世界で苦労して芸歴を積んだ今いくよ・くるよのおふたりは、高校のソフトボール部のキャプテンとマネジャー。キャプテンのいくよさんは芸人になってからも後輩思いで、くるよさんから公私ともに信頼されていたとか。

仕事でしんどい時に愚痴を言いたくなったり、嫉妬や怨嗟(えんさ)で苦しい思いをしたりすることは誰しもあると思います。話を聞いてくれそうな人の前でついそんな弱い自分を晒(さら)したり、誰かの悪口を聞かせてしまったりしたこと、あなたにはありませんか?

弱っている時に、身近な人に甘えずにいるのは難しい。けれど、一緒に苦労した相方のくるよさんにもそれをしなかったという、いくよさんのお人柄は、あのチャーミングな笑顔とつけまつげとともに人々の心に刻まれたことでしょう。

親友であり仕事のパートナーである人を「(相方で)幸せでした」と言って涙で見送った、くるよさん。私は誰かにそう言えるか、言われることがあるだろうかと自問しないではいられませんでした。

●小島慶子(こじま・けいこ) タレント、エッセイスト。いわゆるママ友や女子会をするような女友達はいない。数少ない友人とも年に数回会う程度。親友であり仕事の理解者でもある夫には愚痴や八つ当たりなど恥部全開で接している