『エンタの神さま』で一躍、時の人となったコウメ太夫。そのキャラクター誕生から現在の状況まで、つまびらかに明かしてくれた!
―芸人を目指したきっかけから教えてください?
コウメ太夫(以下、コウメ) 僕は「喋りがヘタだ」と言われるけど、小さい頃は話すことが大好きで、友達にたくさん面白い話をしていたんですよ。それで芸能界に憧れていて、22歳の時に梅沢富美男さんの劇団に入りました。でも、お芝居は上下関係が厳しいし、有名になるのに時間がかかるので、劇団を辞めて早く世に出られそうなお笑いに転向したんです。
―転向してどうでした?
コウメ 「辞めなきゃよかった」と思いました。それまでは2千人くらいのお客さんを前にしてお芝居をしていたし、毎月お給料ももらえていたのに、お笑いを始めると多くてせいぜい30人。しかも毎日、深夜までゲームセンターでアルバイト。当時はコンビで漫才やコントをやっていたんですけど、どこに行ってもまったくウケない。
ちょうどその頃、波田陽区さんが『エンタの神様』に出てギター侍でブレイクしていたので、相方に「これからはキャラクターものだ。俺は女形をやるから、おまえは殿様をやってくれ」って言いました。でも相方には「いやだ」と言われちゃってコンビ解消です。その後も何人かに声をかけたんですが、「コンビニ店員のネタをやる時とかに女形だと作りようがない。広がりがない」と誰も組んでくれない。
僕は『エンタ』を見てて“まだ女形は誰もやってない”“そこにはニッチな需要がある”と確信していたし、梅沢さんの劇団で女形で舞台に上がったこともあるので慣れていた。ほかの芸人さんより得意なことといったら女形くらいだから、その隙間を狙ってピンでやろうと決めました。
ブレイクで波乱万丈に
―ピンになってからは?
コウメ 最初はフリップネタとかをやっていたんですが、まったくウケませんでした。それで初心に戻ったんです。僕が小さい頃に学校で笑いをとれていたのは、自分の欠点を言う自虐ネタ。僕は勉強もできないし、何をやってもドジってばかりで、周りから「バカ、バカ」言われていたけど、友達はたくさん集まっていた。「窓辺に寄りかかったら~、窓がありませんでした~、チクショー!」っていうネタがあるんですけど、それは実際にあったことで、それをライブでやったらウケたんですよ。
―『エンタ』に出たのはその頃ですか?
コウメ そうです。オーディションに行ったら、スタッフの方がすでにライブのビデオを見ていて「明日、収録だから」って言われて。で、収録が終わったら、「レギュラー決まったよ」って。あの頃はステージに出ていって、扇子を下ろすだけで「キャー」って言われましたね。年収も40倍くらいになって結婚もできましたし。でも、売れなくなった途端に離婚されました。「チクショー!」ですよ。
―今はどんな生活ですか?
コウメ 売れてた頃に貯めたお金でローンを組んで、アパートの経営でなんとか暮らしてます。お笑いでの収入はバイトしてた時より低く、最低の月で3千円。「なんじゃこりゃ」って思いますけど、続けていればまだチャンスはありますから。今はネットから売れていくことが多いので、そっちを狙ってます。
(取材・文/村上隆保 撮影/本田雄士)