次代のフェスを“個”で仕掛ける女性たちに熱い思いを語ってもらった。左からSAWAさん、里咲りささん 次代のフェスを“個”で仕掛ける女性たちに熱い思いを語ってもらった。左からSAWAさん、里咲りささん

夏といえば、全国各地で大小様々な音楽フェスが開催されるのがいまや定番! 

先日、配信した記事では「ロックにアイドル、芸人からプロレスまで! この夏、異色仕掛け人たちの音楽フェスが熱い」と題し、「やついフェス」やついいちろう氏、「夏の魔物」成田大致氏、「ギュウ農フェス」ギュウゾウ氏という、個性的な男性主催者3人が登場。

そこでは今までのロック主体のフェスを脱却、アイドルや芸人、プロレスラーまでもが参加する次代のフェスを“個”で仕掛ける方たちのこだわりや熱い想いを語っていただいた。

しか~し! 個人でフェスを主催しているのは、男だけじゃない!…ということで、今回は注目の女性おふたりを直撃してみました!

 * * *

まずひとり目は、2013年よりサマソニならぬ「サワソニ」というアイドルフェスを開催しているシンガーソングライターのSAWAさん。

自身も歌い手として活動しながら、佐々木希や、昨年解散したアイドルグループ・BiSの元メンバー・寺嶋由芙(ゆふ)、Especia、KOTO、ワンリルキス、つばさFlyなど多くのアイドルや女性アーティストの楽曲制作を手掛けるプロデューサーの一面も併せ持っています。

―都内のライブハウスを舞台に注目を集める新進気鋭のアイドルたちが集う「サワソニ」。毎回出演者は約10組、会場のキャパは250名ほどと小規模ながら、過去11回の公演はほぼ満員となる盛り上がりっぷり! アイドルファンからは「音楽性の高いアイドルが出演する」と称されるフェスですが、出演者選びのこだわりは…?

「最初にフェスを立ち上げた時は、私が楽曲提供している方やイベントで共演させてもらったアイドルさんを呼んでいました。でも、フェスを開いたり、自分がイベントに参加させてもらっているうちに『“アイドル”ってなんだろう…』って考えるようになって…。現場に足を運んだり動画を観たりして研究し始めたんです。その中で『サワソニ』には、楽曲の幅がかなり広いNegiccoさんやヒップホップ系の楽曲が特徴的なlyrical schoolさんのような“アイドルとアーティストの間にいる”方々に出演してもらいたいと思うようになりました」

―アイドルとアーティストの間? それは音楽性が高いとか歌唱力があるってことですかね。

「技術面や楽曲の良さもそうですけど、そういうアイドルさんは自分のジャンルを確立している方が多いんですよね。キャラもしっかりしてるし、どんな風にお客さんを盛り上げるかとか自分達のステージの作り方を知ってるというか。ステージで自分達の“色”を出せるアイドルさんにすごく惹かれるんです。

あとは、私も演者としてサワソニに出演するんですけど、正直なところ、そういう方々と一緒のほうが自分が活かされる気がして…。私はアイドル出身ではないのでガチなアイドルの方々に囲まれると浮いちゃうんですよ(笑)」

前回は草刈りから始めました(笑)

―なるほど。そんなサワソニも前回初めて野外を会場にしたそうですね。

「『野外でやってみたいな』とはずっと思っていたので、あんまり深く考えないで茨城県の守谷市にある空き地を借りて準備を始めたんですけど、これが結構大変で…。借りた土地が目の前に原っぱが広がる廃墟みたいなところだったんで、草刈りをするところから始めたんですよ(笑)。あと、自分でノコギリを持って木を伐採したり、廃墟の中を掃除したり、木の板を使ってステージを作ったり…なんだか開墾作業みたいでしたね」

―えー!なんだか大変なことに…(笑)!!

「そのうち、アーティスト仲間とか仕事関係の人が心配して手伝いに来てくれました(笑)。あと、近隣の住民の方のお宅に一軒一軒挨拶回りをしたり。開催日のギリギリまで作業をしてて『間に合わないかも!』と焦りましたけど、どうにか開催に漕ぎ着けました」

―そんな苦労の甲斐もあって、原っぱの緑をバックにしたステージが完成! 初の野外フェスはいかがでしたか?

「すごくキレイな緑の中で、キレイなアイドルさんがパフォーマンスする姿がものすごく光り輝いて見えて、もう神々しくて…『ロック・イン・ジャパンみたい!』って(笑)。出演者の方々からも『楽しかった』という声をいただいて、この場所でやってよかったと思いましたね」

―この時のお客さんのネット上での反応を見ても「幸せな気持ちになれた」という声が多かったです!

「アイドルのイベントって、ファンの方が一緒に作り上げているものだと思うんですよ。やっぱり、お互いが幸せな気持ちになれないとステージも盛り上がらないですからね。そういう意味では“みんなが幸せになれるフェス”にできたんじゃないかなと思います」

―では最後に、フェスを主催する醍醐味(だいごみ)とは?

「終始、バックからステージを見ながら“しめしめ”と思えること(笑)。私がお呼びしたアイドルさんを『これが一番盛り上がる!』と考えた順番で登場させて、お客さんが盛り上がっているのを見ると『ほら、楽しいでしょ?』って。

でも、その場のノリで別のアイドルがステージに加わることも多いんですよ。前回もプラニメというユニットのマリちゃんが、自分の出番の時に『SAWAさん、一緒に出ましょう! みきちゅ(アイドルシンガーソングライター)も出るんで!』と言ってくれて、予定外のコラボステージになりました。

自分が考えたものがお客さんにハマる瞬間も嬉しいし、その場の勢いで予想外のことが起きてファンと出演者がひとつになれた時は、最高に楽しいって思います!」

アイドルと一緒に“幸せになれる”サワソニ。本家のサマソニもいいけど、こっちも一度は観ておくべき!?

異色の経歴の持ち主が立ち上げたフェス

そして、前回配信からのラストを飾るのは自らアイドルグループを2014年夏に立ち上げた、里咲(さとさき)りささん。早稲田大学を中退し地下アイドルになった後に、なぜか家電量販店の店員になり、紆余曲折あって今はまたアイドルをやっている…という異色の経歴の持ち主だ。

そんな彼女を中心とするアイドルグループ「少女閣下のインターナショナル」が、そのグループ名にちなんで「ナショフェス」というフェスを立ち上げようと動き出しているらしい!

―そもそも、どうして「フェスをやりたい!」と思ったんですか?

「今年の春に阿佐ケ谷ロフトで、赤字覚悟で『少女閣下のインターナショナル』の主催ライヴをやって、おかげさまで大盛況で終わったんですね。でも、運営や会場とのやりとりとか、お金の計算とか全部やって全力を尽くしすぎたので、その後の1週間ぐらい使い物にならないくらいポンコツになってしまったんです。

それで、病み気味になって実家に帰ったら、すこぶる元気になりまして(笑)。実家から東京へ戻る新幹線の中で『なんでもやるぜ!』って気分になって、Twitterで『夏にナショフェスやります!』ってダンッ!と宣言したんですよ」

―要するに、ノリで言っちゃったってことですか?

「それもあるんですけど、フェスをやりたいとはずっと思ってたんですよ。でも実は私、フェスに行ったことがなくて…(笑)。TIF(日本最大級のアイドルイベント『東京アイドルフェスティバル』の略)にビラを配りに行ったことはあるんですけどね。だから、『フェスってなんぞや?』というところからスタートしたんです」

―ものすごく初歩的なところから(笑)。

「そう、それでいろいろ考えて、フェスといえば“屋台”“野外”“出演者”の3つがあればできる!って思って。だから、これが『ナショフェス』の三本柱なんです!」

―いろいろ考えた結果、とても基本的なことに気付いた、と。あと、フェスにはステージも必要ですけど?

「そうなんですよね(笑)。具体的に考えるとステージも音響もスタッフも必要だし、『これは大変なことになる』『やっちまった……』と思って。でも、やるしかない状況にあるのが今ですね(笑)。とはいっても、私の得意技は適当なことを言って実現させることなので!」

日本の1、2位を争うフェスを目指したい

―もう、だいぶ夏が近づいてきちゃってますけど、準備は進んでるんですか?

「全然進んでないです! でも構想はちゃんと練っていまして、とにかくありとあらゆるジャンルからエンターテイナーの方をお呼びしたいと思っているんです。いつも仲良くしていただいているアイドルさん達を始め、これまでの約1年の活動の中で出会った個性的なアイドルの方々に出ていただけたらな…と。あと、大道芸人さんとか芸ができる犬とか…」

―えっ! 犬…ですか!?

「いや、構想ですよ(笑)。私達が目指しているフェスは、アイドルオタクの方々が『オイ! オイ!』って楽しめるだけじゃなくて、見たことないようなもっと面白いものを作りたいんです。

私達『少女閣下のインターナショナル』も薄暗い中でライブをやって、曲の途中で『あー!』と叫び出したり、イベントでファンの方と一緒に盛り上がりすぎて会場運営の方にこっぴどく怒られてしまったり…ちょっとめちゃくちゃなところもあるんですけど。『自由で面白いものをやりたい!』っていう気持ちが強いんです。だから、ナショフェスも『それ、やっちゃうの!?』って思われるようなことをやらなきゃって」

―なるほど、グループのそんなスタンスがフェスにも通じてるんですね。ちなみにナショフェスはアイドルがたくさん出演するものになりそうですが、里咲さん自身は“アイドル”ってどんな存在だと思いますか?

「うーん…。正直、自分にとってのアイドルがなんなのか、答えが見つかっていない状態で…。だけど、アイドルって間違いなく“芸術”ではあると思うんです。ただ、そのコ達がずっとアイドルであり続けることはないから、その時しか見れない“瞬間の芸術”ですよね。絶対続かないからこそ儚(はかな)いし魅力的だと思うんです」

―おぉ、なんだか深いです! では、最後にナショフェスへの意気込みを!

「とにかく、他のフェスではやらないような面白いものを貪(どん)欲に総動員して『あいつら、何やってるんだろう』って、いろいろな人に言わせたいですね(笑)。あっ! ちなみに私はフワフワしたことばっかり言ってますけど、運営にはちゃんとした大人もいるので大丈夫です! そういうことで、これから日本の1、2位を争うフェスを目指していきたいと思いますので応援よろしくお願いします!」

全くの未知数だけど、「なんだか面白いんじゃないか」と思わず期待しちゃうナショフェス。この夏、とんでもないフェスが誕生する…!?

今年も全国各地でありとあらゆるフェスが開催される。今後はその主催者にも注目してみると、新たなフェスの見方や楽しみ方が広がっていくかも!

(取材・文・撮影/岡本温子(short cut) 撮影・まみやけい)

●SAWA 2008年、シンガーソングライターとして『COLORS』でCDデビュー。「DJ SAWA」としてDJ活動も行っている。さらに、他のアーティストに楽曲提供を行なうなどマルチに活躍。新曲『チャイニーズは突然に』がiTunes/レコチョク/OTOTOY/mora等で配信中 ■「サワソニvol.12 7月19日(日)に渋谷GLADにて開催。出演者等、最新情報は公式サイト(http://sa-world.net/e/7-19-sunday-shibuya-glad-soisson-vol-12/

●里咲りさ 2014年に、ソロとしての活動をスタート。同年、アイドルグループ「少女閣下のインターナショナル」を立ち上げ、活動中。 少女閣下のインターナショナルの最新情報や「ナショフェス」の行方は公式HPにて(http://shonasho2014.wix.com/shonasho