まさに再ブレイクといえる人気で、近著も続々刊行されている蛭子さん。売れ行きをとっても気にしてましたが(苦笑)、ほんとタメになる面白さです!

あの国民的バラエティ番組のスピリットを引き継ぎ“友達の輪”を!とスタートした『語っていいとも!』

第7回のゲスト・具志堅用高さんからご紹介いただいたのは、漫画家・タレントの蛭子能収(えびすよしかず)さん。

独特の味で本業の漫画家にとどまらずバラエティからドラマまで幅広く活躍。最近ではさらにその魅力が今のご時世にハマり再ブレイク真っ最中! というわけで、地方ロケなどお忙しいスケジュールの合間を縫って、渋谷にある事務所でお時間をいただいた。(聞き手/週プレNEWS編集長・貝山弘一)

蛭子 あの、俺ね、結構友達がいないんだけれども…どうしよう、大丈夫ですかね(笑)。

―いきなり、ご自分から(笑)。いや、それはもう重々承知の上で…でも前回の具志堅さんから蛭子さんのご指名がありまして。お友達なのかなってことで聞いたら、いや、ライバルですって(笑)。

蛭子 えっ、ライバル(笑)? …あ、でも蛭子さんがライバルっていう人、結構いるんですよね。鈴木奈々さんも仰ってましたもんね、ライバルって。

―みんなに勝手にライバル視されて(笑)。ご自分ではいい迷惑ですか?

蛭子 いや、そんなことないです、みんなそうやって名前を出してくれるだけでも嬉しいです。

―蛭子さんの著作にも具志堅さんはよく出てきて。珍しく自分のほうがしっかりしなきゃいけないと思うタイプだと…。

蛭子 ああ、そうですね、なんとなく思いますね。具志堅さん、ひとりだとグタグタになりそうな感じがするし。あんまり先のこと考えないで動いてるような気がするから…。俺はもうちょっと先まで考えてるけど、本当その場その場で、動物みたいに。

―それこそ異名の“カンムリワシ”的な動物的勘というか(笑)。ちなみにその具志堅さんは板東英二さんからのご紹介でして…。

蛭子 えー! 板東さん! え、ちょっと待って、板東英二さん出たんですか? え、すごい! TVに出たがってました? すごく?

―そこまでリアクションいただくとは…(苦笑)。

蛭子 あの、新幹線に乗ってたらね、板東さんが来てさ、「おいっ」つって肩叩かれたんですよ。1年ぐらい前。…あ、もう復活してるんですか? それはよかった。

―そうなんですよ。それで板東さんから具志堅さんを紹介していただく際に、あの人は実は賢いんですよって。

蛭子 俺のこと?

―いや、具志堅さんです(苦笑)。

蛭子 ああ、具志堅さんのことを? え、賢そうなところは、あんまり俺は…わかんないな(笑)。ま、人はよさそうですけど。人がよくて誰からも愛されるキャラだとは思います。

―でも蛭子さん自身、ライバルといわれただけあって似たキャラというか。今や大人気の“バス旅”(『ローカル路線バス乗り継ぎの旅』TV東京系)なんか見ても、その場で思ったことをすぐ口に出しちゃったり。それが愛されてますよね(笑)。

蛭子 そうですね、それは…でも、そこまで俺は可愛くないでしょ? 具志堅さんは全然、裏表がない感じするじゃないですか。俺の場合は裏表ありそうな気がしません? こうやって明るくしてても心の中では。

―あははは、ご自分のダークな部分を自覚してる?

蛭子 ダークな部分があるんじゃないかと(笑)。でも具志堅さんにはそれが全然感じられないんですよね、ただ明るいだけっていう(笑)。俺はね、やっぱり人の嫌なところとかちゃんと見て、漫画に描く時の参考にしますし。それでちょっとあれ、わからないですけど…うん、人を傷つけることもあります。

あんまり人と話すのが好きじゃないから

―(笑)。でも、そうですよね、漫画にそれが表れるでしょうし。作風として暗さとか、斜めに見てる部分も持ち味ですよね。

蛭子 できればそうしたいなとは思ってますよね、やっぱり。こう見えていろいろ考えては動いてるんですよ。

でも、ほとんどの人はそうだと思うんですけどね。表面見てるのと、またちょっと違う考えを持っていたりするのが人間かなって。でも具志堅さんは本当に裏があんまりないような人だなと。珍しいと思いますよ。

―いわゆる芸能界の中では特にそうなんでしょうかね。その具志堅さんにライバル視されつつ友達として紹介されてるんですから、蛭子さんも余程ですが(笑)。

蛭子 あ、それは嬉しいですね、光栄です(笑)。

―でも“バス旅”をご一緒されて、やはり再ブレイクな太川陽介さんもよくあちこちで蛭子さんのことを「スゴい我がままですよ、子供っぽいし」って。お互いに評価が自分の思ってることと逆っていう(笑)。

蛭子 太川さんはね、ちょっと子供っぽいところがありまして。大人の顔は持ってるんですけど、中身は子供っぽいんですよね、なんか、トランプとかすごい好きで…。やっても面白くもないようなゲームを俺によく仕掛けてきます。バスの中ですぐ退屈になったら、なぞなぞとかいろんなことをやりたがるんですよ、あいつ。

―ははは、でも太川さんからすると、蛭子さんが何もしないから、なんか仕掛けないと番組が成立しないとか。大人の気配りなのでは?

蛭子 そうなのかなあ? 太川さんの場合、本当に遊びたいからやってるとしか思えない。宿に行ってもね、すごく自分だけが知ってるゲームをやらせるんです。ほんで必ず勝とうとする、負けることがすごい嫌なんですよ。

―それは確かに子供っぽい(笑)。

蛭子 麻雀とかになると、俺には絶対負けないっていう感じで、すごいムキになってくるからね。もういいか、ここは負けといてって、俺はもう割と引くタイプなんですよ。あんまり必死にこられると、あぁもういいかっていう風にはなりますね。

―そこ不思議ですよね。蛭子さんも競艇とかお好きで、勝ち負け関係ないギャンブルはつまらないみたいなタイプで。負けず嫌いな部分があるのでは?

蛭子 あの、要するに俺は、競艇とかだったら相手が誰もいないけど、麻雀とか相手の顔がもう見えるじゃないですか? そういう時にちょっとこう、遠慮が出るっていうかな。人対人の、1対1のゲームとか苦手なんですよ。

だから、あんまり知り合い同士のゲームっていうのは苦手です、あんまりやりたくない。そこで意地になって勝つっていうことしたくないし。でも負けるのもそれはそれで嫌だし。知り合い同士で金のやり取りするのも好きじゃないんだよね。

―最近、新書の『ひとりぼっちを笑うな』、雑誌連載をまとめた『蛭子能収のゆるゆる人生相談』と立て続けに出されて。借金とかお金の貸し借りは嫌だって書かれてますよね。

蛭子 すごく嫌なんですよ、俺。遊んでてもさ、ちょっと今日持ち合わせがないから貸してってなったりするじゃないですか? そういうのがもう全然面白くなくて。だから知り合いとかだと余計な心理が動くし、もう本当にひとりで競艇に行ってやるのが好きですね。

―人と一緒に交わると、気遣って煩(わずら)わしいという。結局そこに行き着いちゃうんですかね? 飲み会もあんまり好きじゃないとか。

蛭子 飲み会は全く好きじゃないんですよ。まず酒が俺は全く飲めないし、ペチャペチャ喋る、飲み会での喋りって全然面白くないっていうか。人の悪口とか、グダグダ仕事の話も全然したいとも思わないし。あんまり人と話すのが好きじゃないからかもしれない。

常にその人の本音は聞きたいなって

―その割に人から孤立したりとか、全く孤絶して生きていくっていうのも違うんですよね?

蛭子 あ、そうなんですよ、それはね、寂しいので。女房さえいればいいかなって思ってますけどね。女房さえいたら、友達は別にいてもいなくてもいいかな。

―蛭子さんの愛妻ぶりは有名ですが…世界中を敵に回しても奥さんさえいれば?

蛭子 ええ、そういう感じです。

―言い切りましたね、これでまたファンが増えました(笑)。なんか、そういう変わらない、ブレずに通されてきた部分が今、再ブレイクしてるのかなと。

蛭子 なんか、最近よくそう言われるんですよね。

―実際、その人生相談も新書も深いというか。正直すごく共感するものがあって、ほんと面白く読ませていただきましたし。

蛭子 あー、ありがとうございます。どうなんでしょうね、自分ではわからない、こっ恥ずかしい感じです、はい(照)。不思議なんですけど、出版社の人が出すっていうから…。自分は本当に恥ずかしい限りです、能力はここまで達してないのに出てるっていうのがね、ちょっと。

―じゃあ、なんで今また人気出ちゃってるんだろうなとか考えたりは?

蛭子 本音を言うとかみんなは言うんですけど、そんなにね、TVとかでは言ってないつもりなんですよね。やっぱり本当の本音ってなかなか言えないので。もう考えて、ぎりぎりこれはっていうところで止めてるんですけどね。

―自分の中ではちゃんとストッパーかけつつ判断してると?

蛭子 そうですね。誰ともね、あんまり争いはしたくないし、たぶん争ったら負けるし。でもなんか、ちょろちょろ漏れ出してる部分があるのかな?

―気になってしょうがないことはやっぱり口に出しちゃう(笑)。この前、「鶴瓶の家族に乾杯!」に出演されて、蕎麦屋の息子さんがバツイチだと聞いて、執拗に理由をツッコんでましたよね。

蛭子 ああ、そんなに突っ込んでました? えっと…それはやっぱりちょっと聞いてみたいなと思うんですよね。常にその人間の本音っていうのは聞きたいなって。

―興味が湧くと聞かずにはおられないみたいな。漫画のネタ含めて人間の裏を?

蛭子 俺もあんまり浮わついたような話をするのは好きじゃないので、本音でできるだけ言うようにしてるんですけど…だから飾りのような言葉じゃなくて、常にこの人の本音は何かなっていうのは考えますよ、やっぱり。返事を聞きながらも、本当はこう思ってるのかなって。

空気はね、結構読めてると思う

―それで探りを入れたりして。自分では気は遣っているつもり、と。

蛭子 よくですね、漫画とかでも編集さんと会って原稿見せる時あるじゃないですか? その瞬間ってすごく嫌なんですよね。でも俺も編集さんの心理みたいなものはすごく知りたいので、本当のことを言いやすいように自分から持っていく癖があるんですよ。

どういうことかっていうと、「ちょっとここ上手く描けてないんですけども」ってダメな部分を言うんですよね。そしたら編集さんも正直に言い出しやすいから。駄目な部分を向こうに押し付けて本音を聞くとか、そういう策略みたいなので考えてはやってるんですよ。

―空気読まないキャラってイメージも持たれがちですが、逆にすごい気を遣っていて。それも自己防衛本能みたいな(笑)。

蛭子 相手が誤解しないように、自分はこうであるっていうのを先に見せたいんですよね。だから最近も、物覚えが悪くなって認知症の一歩手前らしいんですよって、自分のほうから言ってるんですけど。そうすると、いろいろ忘れても相手の気が少し和らぐというか。

―まず自分の弱いところ、駄目な部分を見せちゃうと。

蛭子 そうそう、そういうタイプなんですよ。でも俺のようなやり方も、ちょっとずるいと言われるかもしれないですけど(笑)。空気はね、結構読めてると思うんですよ。ただ、その空気を変えたいなって時にちょっと変なこと言ったりはします。

漫画描く時も、常に人と違ったものを描くっていうのを考えてますから。なんでも今まで通りっていうのは好きじゃないんですよ。TVにしても、なんか違うことをやったほうがいいのになっていうのは思ってるんで。まあ、あんまり言えてないですけど(苦笑)。

―基本、何か面白そうなことがあればって興味本意で動いてる?

蛭子 自分では割と昔から好きなことが何か決まってるんですよね。だからあんまり新しいことは挑戦してないような気がするんですけど。ちょっとマンネリ化しているというか、何かいろいろ新しい考えとか出てくればいいなっていうのはあります。

―じゃあ“バス旅”も続いて、毎回あちこち新鮮なのか、それともマンネリか…。

蛭子 そうですね、飽きたといえば飽きたような気もするんですけど…その仕事がきたらやるだけで。ま、はっきり言って飽きてるかもしんないです(苦笑)。

―ははは(笑)。それは番組的にも太川さんにも?

蛭子 ルートもそろそろなくなってきたしね。たぶんTV局も考えなくちゃいけない時期にきてると思いますよ(笑)。これから難しそうだもんね。

―あんなに視聴率とってる番組をなかなか終わらせてくれないでしょうけど。

蛭子 そうですねえ。今度、全く新しい3人でやってみたらどうなりますかね? 自分いなくて、全く同じのやったら結果がどうなるのか見てみたいですね。

―本人からまさかの提案が(笑)。自分いなくてもいいんですか?

蛭子 うん、だから全部取っ替えてやってみたら、そういう試みもちょっといいのになって…。いや、俺はどうしても出たいっていうのもそんなにないですし。ただ番組としては、どうしたら面白くなるかなっちゅうのは考えますね。

俺が辞めたら田川さんも辞めるって…

―すごいなあ、まさかのレギュラー交代提言です(笑)。

蛭子 その人達が面白くなければ、俺たちはやったなってなるのかもしれんし。とにかく、マンネリ化っていうのが俺はすごい嫌なんですよね。常にこう、斬新さを求めたい、変わったものを漫画でも描きたいとかって思いはありますよ。

―全く“バス旅”の中ではそれを求めているようにも感じづらいですけど(笑)。

蛭子 はは(笑)。付いてってるだけですもんね、俺。この前、昔のやつを観てさ、最初の頃はね、割と積極的に聞いて回って動いてたんでビックリしましたけど。すごい新鮮に思えちゃった、自分が。今はすごい座ったきりで。

―知らず知らず、だれてきちゃったんですかね?

蛭子 あははは、俺か(笑)。

―じゃあ、これで電撃卒業宣言とかしたら、また話題になっちゃいますね。それ、うちで第一報を流させていただきたいですが(笑)。

蛭子 あ、でもね、太川さんも俺が辞めるって言ったら辞めるって言ってましたよ。俺以外のコンビとはしないって。それを聞いて俺も、へえ、そんなに思ってんのかと。すごく冷めた人だと思ってましたけど。

―ジワッとイイ話です。内心嬉しかった?

蛭子 まあ、ちょっと尽くさなければいけないかなって(笑)。

―仲間意識が生まれてるじゃないですか(笑)。でもマンネリ云々は置いといても、実際また忙しくなって、正直、面倒くさいよとかってあります?

蛭子 それはありますよ~。いや、忙しいのすごくありがたいんですよ、お金稼ぐことは大好きなんで。それはいいんですけど、すごい自由時間が減ってて、ちょっときついかなっていう感じは少しあります。

―しかも取材とかどんどん入って、毎回こうやって同じ“バス旅”のことも聞かれるし?(笑)

蛭子 それはちょっと、ええ、なんとかならんかなとは思います(笑)。みんな一緒にやってくれればいいんだけどね。同じことを3回くらい話すのもちょっと面倒くさいなと。

―すみません(笑)。そもそも蛭子さんがあんまり人と喋ったりとか得意じゃなく苦手って話は知ってたんで。たぶん今この瞬間でも早く解放されたいとか思ってるんじゃないかと…。

蛭子 いやいや、そんなことは(笑)。

―大丈夫ですか? ではまだまだツッコミ足りないので(笑)、このまま次回に続けさせていただきます!

●この後編は次週、8月9日(日)12時に配信予定!

●蛭子能収1947年生まれ、長崎県出身。漫画家、イラストレーター、タレント、俳優として活動。看板店、ちりがみ交換などの仕事を経て33歳から漫画家に。その後、TVでも『笑っていいとも!』『スーパージョッキー』といった人気番組にレギュラー出演。現在は07年から放送されている『ローカル路線バス乗り継ぎの旅』(テレビ東京)が話題でレギュラー共演している俳優・太川陽介さんとの掛け合いも名物に。14年に発売された新書のエッセイ『ひとりぼっちを笑うな』(KADOKAWA)、近著の『芸能界 蛭子目線』(竹書房)『蛭子のゆるゆる人生相談』(光文社)なども好評

(撮影/塔下智士)