夫の落合博満氏もフクシクンも遅咲きと語る信子さん 夫の落合博満氏もフクシクンも遅咲きと語る信子さん

今年4月より大手声優事務所、青二(あおに)プロダクションに所属し、このほどTVアニメで声優として本格デビューを果たした“フクシ君”こと落合福嗣(ふくし)さん(27歳)。

声優デビューまでの紆余曲折と奮闘を“おっかぁ”こと落合信子さんが語った!

―フクシ君の声優デビュー、おめでとうございます。

信子 アタシが一番驚いているのよ。難関の青二プロダクションに合格、入社したと、(落合)記念館で新聞を見て初めて知ったんだから!

TVでフクシ君のアフレコの様子を見ましたが、なかなかの声優ぶりでしたね。

信子 セリフはまだひと言ふた言だけど、その様子をTVで見た時に「うわっ、コイツいい男だな」って思ったよ。フクシは体は太ってるし顔は悪いよ。でも、そんなことは二の次。何より表情が生き生きしてるんだからさ。あれは燃えてる男の顔だね。

―フクシ君から初めて、「声優になりたい」って聞いたのはいつですか?

信子 ウチには落合の立派なスネが2本あるから「親のスネはかじれるだけかじれ」って言ってきたんだけど、結婚してから意識が変わったんだろうね。それまではうちの会社の仕事をしてもらってたんだけど、突然「声優学校に行く」って言い出したの。死活問題だと思ったんだろうね。

―声優になりたいと聞いて率直にどう思いましたか?

信子 どーせすぐヤメるだろバカ息子って思ってたよ(笑)。 でも、ある時、フクシに「オーディションのつもりでアタシらの前で歌ってみな」って家のリビングで歌わせたんだ。そしたらフクシの声量でリビングの鏡がビビビビ~ッて震動したんだよ。思わず落合と顔を見合わせて「これは本物かも」って思ったよね。

―GMからフクシ君にアドバイスはあったのでしょうか。

信子 「心から声を出せ」「うわべではダメだ」「プロは甘くないぞ」と。落合も現役時代は豆だらけの手でバット振って、打撲したら牛肉を体に貼っつけて治したりとか、とにかくいいと聞けばなんでもやってきた人だからね。

フクシは盗塁王にしたかったの

―所属する青二プロダクションは業界大手だとか。

信子 これまでは歯がゆい思いもしてきたけど、やっと定職について親孝行してくれたなと。世間ではコネで入れたなんて言う人もいるけど事実無根だよ。でも青二さんには「うんと苦労させてください」って言ってお任せしてるの。なぜって、好きな道だからよ。好きな道で苦労するのって最高じゃない(笑)。

―かつて本誌で連載もしてくれていたフクシ君が声優になるとは、当時は思いもしませんでした。

信子 これまで器用ビンボーで、何ひとつ身にならなかったフクシだけど、ようやく没頭できることが見つかったみたいで。まぁ、落合と一緒でフクシも遅咲きなのよね。でも昔は正直、フクシは獣医になると思ってたんだけど。

―フクシ君は動物大好きですからね。

信子 それに儲かるじゃない。前、ウチに座敷犬のパピヨンがいてね。これが世界チャンピオンを取った犬の息子だったんだけど、私がちょっと離したら「キャンッ」っていって前足を骨折して入院しちゃって。それでウン万円取られたのよ。その時に「獣医さんって儲かるんだな」って。

―な、なるほど。

信子 でも今思えば、フクシを「立派な落合博満のジュニア」にしようと、私が型にハメてしまったのがいけなかったと思ってるの…。

―と、いいますと。

信子 盗塁王にしたかったんですよ。

―えーっ!

信子 フクシにはプロで野球をやらせて盗塁王を取らせたかったの。だって、盗塁王は落合も取ってないでしょ。私は足が速かったし、私の父も速かったからDNA的にいけるんじゃないかと思ってたんだけど…。でもそうやって型にハメようとしたら、フクシが3歳でチック症状になっちゃったんだよ。

―なんと!

信子 やたらまばたきパチパチしてヘンだから、主治医さんに電話で聞いたら「フクシ君はいつも大勢の大人に囲まれているので、大人のサイクルで生活しています。もっと自由に育てないとダメです」って言われたの。やっぱり人間もノビノビ遊んで、ご飯を食べて、眠る…基本は動物の赤ちゃんと同じなのよね。

―基本が大事、だと。

信子 それでフクシを一日中、名古屋の東山公園で走り回らせてね。そしたらチックは1週間で治ったんですよ。そこからはノビノビ育てようと方針転換したんです。

フクシは今、ハッキリ言って超ビンボー

―そんなフクシ君も今や駆け出しの声優であると同時に、1歳6ヵ月の娘さんの父でもあります。父親としてのフクシ君はいかがですか?

信子 初めて自宅で産湯に入れるところを見たんだよ。あのデカい図体(ずうたい)で赤ちゃんを器用に扱ってて頼もしかったね。夫婦のチームワークも素晴らしくて。父親としてのフクシは二重マルです。

―あとは本業で頑張るだけですね。

信子 今はプロ野球で言ったら育成選手。でも、うんと苦労させたいから小遣いも一切やってないよ。落合家では働かざる者食うべからず、ですから。今、フクシたちが住んでいる家だってウチの社宅だから毎月家賃3万円もらってるよ。フクシは今、ハッキリ言って超ビンボーです。

―生活はどのように?

信子 ウチは「お金くれ」って絶対に言わせないの。すべて現物支給です。

―現物支給とは?

信子 フクシがLINEで「用事があったら車出すよ?」って言ってきたら、それは自分の家の冷蔵庫が空っぽってことだから、みんなで買い物に行って好きなだけ買わせるのよ。「カレーのルー、10個でも20個でも買えーっ」てね(笑)。いいの、払うのは落合だから。でも野菜だけは買わないで、家庭菜園で育ててるの。ナス、ミニトマト、パッションフルーツ、全部、私とフクシで作ってるの。

―いい親子の距離感ですねー。将来、フクシ君が声優としてたくさん稼げるようになったら楽しみですね。

信子 フクシに食べさせてもらおうなんて全く思わないね。それよりも落合のように自分の決めた道で燃え尽きてほしい。やはりアタシにとって理想の男は落合なのよ。

―今後、フクシ君にはどんな声優になってほしいですか。

信子 とにかく全力で、与えられた仕事はニコニコと「お任せくださいっ!」って感じでやってほしいね。落合は誰よりも燃え尽きた。だから、いまだに3つ(*三冠王×3回の意)持ってる人はいないわけで。だからフクシも燃え尽きろーって話ですよ(笑)。

(取材・構成/河合桃子 撮影/下城英悟)