あの国民的バラエティ番組のスピリットを引き継ぎ“友達の輪”を!とスタートした『語っていいとも!』。
前回の具志堅用高さんからご紹介いただいた第8回ゲストは、漫画家・タレントの蛭子能収(えびすよしかず)さん。
その魅力が今のご時世にハマり再ブレイク真っ最中!だが、前編では大人気の“バス旅”(『ローカル路線バス乗り継ぎの旅』TV東京系)もマンネリかも…とまさかの交代容認発言!? 今回、さらに蛭子節は…。(聞き手/週プレNEWS編集長・貝山弘一)
―人付き合いでも、本当はひとりがいいのにってことで。奥さんだけいればというお話でしたが、そこで1番問題なのは、夜が寂しいんだとか?
蛭子 やっぱり夜になるとすごい寂しいんですよね。いや、エッチをするからとかそういうのじゃないんですよ。ただね、夜ひとりで寝てるのはすっごく寂しいんですよ。
―最初の奥さんが亡くなられた頃、特にそうだったとか。以前、その奥さんとは“性欲結婚”だったって発言をして。だいぶ話題になりましたけど(笑)。
蛭子 いや、俺そういうさ、風俗とかそういうのに行ったことがないので…その、女房としかやったことがないのでね。最初はこんなに気持ちいいことが女房とできると、すごい喜びがあったんですよ。それでもう毎日のようにやってましたね。
―(笑)。奥さんが初めてで、他の女性とは経験したことがないとカミングアウトされたのも有名ですよね。
蛭子 そう。浮気とかはあんまり、ほとんど考えたことはないですね。
―後ろめたかったり、隠し事を作っちゃったりするのがダメみたいな?
蛭子 いや、たぶんそれもありますけど、本能的にできないかな。…割と俺ね、人の道に外れることができないんですよ。割と真面目で。それが犯罪かどうかは別として、人の道に外れてるということはちょっとね、昔から勇気がいるなって。その勇気はない。
―ルールを破るのが嫌いだとも言ってますよね。
蛭子 そうなんですよ。こう決められたら、そのルールのように行く。ルールを作る側の上の人にとっては便利な男かもしれない(苦笑)。
―国とか権威に結構、従順なタイプ(笑)。
蛭子 だからパチンコも高校卒業の18歳からって決められてるし、それ以前は絶対行こうとしなかったしね。その代わり、卒業すると同時にもう卒業証書貰って真っ先にパチンコ屋に行ったんですよ、もうパチンコしたい、したいって思ってたんです、ずーっと。
で、競艇っていうのは20歳の誕生日過ぎないと行けないんですよ。その誕生日を待って、友達を誘って競艇場に。だからそういうルールを作られたら、それをきっちり守るタイプなんで。なんでもものすごくきっちりしてほしいんですよ。
―ルーズで曖昧(あいまい)な性格かと思いきや、はっきりしてないと嫌(笑)。
蛭子 で、ひとつだけ守れなかったのが麻雀なんですよ。麻雀って、結構みんな賭けてやってるじゃないですか? それも年齢とか全然法律とかで決まってるわけじゃなく、賭けたらいけないっていうことだけ決まってますけど。こんなにみんなが望んでるんだったら、賭けてやってもいいですよって、これは国の方で法律を絶対作ってほしいんですね。
その麻雀だけは守ることができずに、昔ね、行って捕まっちゃったんですけど。ま、俺はすごくおかしいと思ってるんですよね。だから曖昧(あいまい)なものがすごく嫌なんで、もう、うずうずしちゃうんですよ。
女の人とやるのは好きじゃないんです
―もし万が一、蛭子さんが政治家にでも立候補したらそれですか?
蛭子 あ、まずそれはやりたいと思います。これくらいのレートだったら捕まえませんとか、はっきり決めてね。すごく安く設定して、どんな貧乏な人でも安心な感じでちゃんと認めてくれればいいんですけどね。
―なんか今日1番、熱く語ってますよ(笑)。
蛭子 いや、実は遊びの中で1番麻雀が好きなもんですから。競艇よりも好きなんですよ。麻雀ほど面白いゲームはないと思ってるんで、これはもう是非ね。
―それこそさっきの理屈からしたら、麻雀も人と交わってやるものだから、周りとか勝ち負けを意識しちゃわないんですか?
蛭子 そう、だから知り合いとやる麻雀は好きじゃないんですよ。雀荘とかフリー麻雀に行くのがすごい好きで。
―麻雀は今、勝間和代さんなんかもプロ雀士デビューされて注目されてますけどね。
蛭子 ああ、面識はありますよ、番組で何回も会ってますんで。でも勝間さんとはやったことないですね。俺、女の人とはあんまりやりたくないっす。
―ほう、そうですか。
蛭子 女の人でね、小柳ルミ子さんとか加賀まりこさんが入ると、なんか負けるんですよね。やっぱりこの人達、強いんですよ、男以上に。それとちょっとね、女性だからっていう遠慮も入るんですよ。それで自分の思ってる通りの麻雀ができないような気が…。
―蛇に睨(にら)まれた蛙みたいな(苦笑)。自分が乱されちゃう?
蛭子 なんとなく勝手に乱れていくんですけど(笑)。それでこの人達が勝つと悔しいんですよ、すごく。だから女の人とやるのはあんまり好きじゃないんですよね。
―いや、ルールに厳しいって話から麻雀で随分盛り上がっちゃいました(笑)。
蛭子 後ね、ルールを破る人間ってやっぱりこう、考え方も割とどうでもいいやっていう人間が多いんじゃないかと思うんですよ。そんでルール破る人同士が集まると、何かとんでもないことになりそうな気がしません? なんとなく…。
―まあ、必ずどこかに歯止めとか、歯止めをかける人は必要ですよね。
蛭子 だから俺、歯止めっていうのは必ず必要じゃないかと思うんです。この間、イケイケで車運転して、北海道でありましたよね(6月6日、砂川でひき逃げ事故があり家族5人が死傷した事件)? あれさ、その人達がエスカレートしていって、歯止めを利かせるルールみたいなのが自分達の中に存在しなかったと思うんですよ。
俺なんかすぐ、ここをこういう風に走るとどうなるか先のことが予測できますよ。何しろ怪我人も出るし、死者も出るかも…その勢いでいけば自分も死ぬかもしれないという、それを頭で考えられるんですけど。意外と、先にどういうことがあるかってことを想像できない人って、やっぱり歯止めが利かない人なんですよ。
不美人でも必ず口説けるものじゃない
―蛭子さんは常に先先を考えて抑制できるタイプなんですね。
蛭子 歯止めが利くし、ルールも守るっていう、だから割と大人しい人間ですね。本当の俺はきちんと時間とかも、とにかくTV局に入るのとかもきっちりしてるし。
―雰囲気だけですか、ルーズっぽく見えるのは(笑)。でも、割とどうでもいいやってことはどうでもいいと思いそうな…。
蛭子 ああ、それはそうですね、時には。人とこう会話してる時に、どうでもいいやって思って、あんまり聞いてないことも結構ありますね。興味がないことにのめり込めないっていうか。
―それもハッキリされてるんですね。そういえば、別に女の人が嫌いなわけではないけれど、ディレクターに銀座のクラブ連れて行ってもらったりするのも落ち着かなくて嫌だったとか。
蛭子 もう、あれもすごい嫌でしたね、本当に。何話していいかわからないし、酒はあんまし飲めないし。もう途中からよくマジックを持って行って、ホステスさんの前で…。
―絵を描いたんですか?
蛭子 いや、じゃなくて本当のマジック。手品、手品! ホステスさんが退屈しないように。
―自分から気を遣って間を保たせてたんですか(笑)。めちゃめちゃサービス精神旺盛じゃないですか! でも、そんな女性と話すのすら苦手なのに2度目の奥さん探しは積極的にいかれたんですよね?
蛭子 あ、そうですね。だからやっぱりすっごい寂しかったんで。本当に前の嫁はすごく好きだったんですけど、ひとりになったらめっちゃくちゃ寂しくて。これは一刻でも早くと思って、事務所によくファンレターがきてたんで、その人のところに連絡取って行ったりしてたんですけど。意外と誰も俺に振り向いてくれませんでしたね。
―蛭子さんが自分からガツガツいくこと自体、不思議な感じですが。照れよりも寂しさが勝ったってことなんですかね。
蛭子 寂しさの方が勝って、これは動かなければっていう時にはすごい積極的にやるんですよね。その時は恥ずかしさとかも全く忘れてしまって、後で考えるとすっごく恥ずかしくなってしまうんですけど(照)。
―そこは動物的本能でしょうか(笑)。普段はシャイでできないのに。
蛭子 シャイでできないようなところなんですよ。けど、相手にも高望みしてるわけじゃなくて、これくらいの人だったらって選んでるのに全くダメ。だから学んだのは、自分から見てちょっと不美人な女性でも、必ず口説けば口説けるってものじゃないなと。
―それはそうでしょう(笑)。その人なりのプライドが当然あるでしょうし。
蛭子 プライドがあってね、あ、この人でこの顔だったら俺でも大丈夫だと思ったら大間違いだなって(笑)。
―思いっきり自分と天秤にかけてるじゃないですか、上から目線で(笑)。
蛭子 だから、そういう考えは今は捨てました。
自己を偽り続けるのは本当に嫌
―じゃあ、そもそも自分はモテるモテないでいうと?
蛭子 全くモテないと思う。もう本当にモテないと思う、自分でも。
―でもファンレター寄越すファンはいて、蛭子さん大好きですみたいな。
蛭子 いや、それはちょろちょろあるけど、自分が本当に近づいていこうとすると逃げていく気がします。信用できないと思いますね、女性は本当に(笑)。
―自分をよく見せたくてカッコつけたり、背伸びしたいとか男もあるじゃないすか? そういうのも少しは?
蛭子 …そういうのはあんまりないかな。着飾ったり、見栄を張ることはないんですね。もし見せるとしたら、自分の漫画ですね。俺はこんな見てくれも悪いし服装も悪いけど、漫画はどう?とか。これも面白くないよって言われたら終わりです(笑)。
―なるほど。でもほんと蛭子さん見てよく思うのは、着てる物が変わらないなぁと。ジャケットと、同じようなシャツ、ズボンで。それこそマンネリというか、ちょっと変わったの着てみようかなとか思ったりしないんですか?
蛭子 自分自身では同じのでいいって思うんですけど。最近は女房がいろいろコーディネートして、面倒臭いなって思いながら従いますけど。今日は昨日着たやつをそのまま着てきただけで。1日で洗濯するっていうのがもう、もったいなくてもったいなくて。怒られるんですけど、そんな少しくらい汗臭くてもいいだろって思うんだけどな。
―でもじゃあ、モテるために何か頑張る、カッコつけたって覚えも今までない?
蛭子 あ、モテるために? いや、ないですね。まず服装はないし、髪型も。うん、したことないです。素のままの自分を好きでいてくださいっていう感じ。
―それ言っちゃいますか(笑)。
蛭子 だってさ、もしそういう風にカッコつけてたらずっと続かないでしょ、一生なんて。だんだん、こんな人だったんだって思われるのもまた嫌なんですよ。だから返って変な人で、こんな格好で見せといたほうがいいですよ。自己を偽り続けてるっていうのは本当に嫌なんで。
―本当に真っ直ぐな、本音で生きていたいっていうのが蛭子さんなんですね。
蛭子 ま、それはそうですね。真っ直ぐ生きているかどうかはわからないですけど。
―よくご自身で言われているのが、自由が一番と。
蛭子 ああ、それはもう本当にそうですよ。小さい頃から考えると、だいぶ縛られて生きてきたような気がするんで。自由に考えて生きていきたいですね。
―その自由を守るためにお金が必要なんだともおっしゃってます。
蛭子 それはそう、お金さえあればもう自由なんですよ。とにかく自分の好きなことができるし、やっぱり自由に必要なのはお金なんで。いっぱいあればあるに越したことはないです。
―そのためには稼がなきゃいけないわけで。仕事は好きとか嫌いではなく、求められたらやらなければいけないものっていう。
蛭子 だから、お金をもらうためには奉仕しなければならないっていうのはすごく頭の中にありますよ。お金をくれる人には頭を下げるということですかね。
次回お友達は夫婦役でも共演した…
―じゃあ今はまた忙しいし、いろいろ面倒なこともありますけど、幸せなんでしょうか?
蛭子 そうですね、今はもう幸せだと思います。
―ちなみに、これも意外な印象なんですが、尊厳死協会に入られているという…。
蛭子 あ、それはまぁ、自分の女房とかでも死んだの見てると、それを介抱、介護してる人が大変だから。俺は自分が動けなくなったら、もうそんな人に迷惑かけたくないので死なせてくださいという。そういうので入ってますね。
―そこらへんは僕もすごく共感するんですが。お墓とかも要らないしって考え方で。
蛭子 ええ、俺もそうです。後は、生きてる人が楽しくやってもらうだけで。自分としてはなんにもない。
―ほんと、生きてる間、自分がいかに楽しくやれるかってとこですよね。で、ひとりの夜は寂しいけど、奥さんと今も手を繋いで寝てるとか(笑)。そういう幸せも?
蛭子 いやいや(照)。でもね、ザワザワ感がちょっとこうあったりして。ちょっと離す時とかもあるんですよ、気になって。寝られない時とかもあって、そういう時はどちらともなく、さーって離すんですよ。
―ちょっとって…今やほぼどこの夫婦もないかと(苦笑)。昔のチャー○ーグリーンのCMがあったら完璧にオファーきたでしょうね。いや、ほんと微笑ましい。…というわけで、そろそろお友達を紹介していただければと。
蛭子 あ、そうなんですか…あれ、どうしよう。
―ここのところ男性ゲストが続いているので、女性だといかがですか?
蛭子 女性、ほんといないんだよな…。あ、えっと、あの旦那さんとね、古いお付き合いで高橋ひとみさんとかはどうですかね。
―おー、女優の。それはまた魅惑的な…最近バラエティ番組とかもよく出られて。ご一緒される機会も多いんですかね。
蛭子 そうですね。友達というほどの付き合いではないんですけど、旦那さんとは古いから。英語ができるのでよく海外でお世話してもらって…。
―関係性がよくわかりませんが(苦笑)、旦那さんのほうがお友達と。
蛭子 あ、でも高橋さんとも昔、『夜逃げ屋本舗』って映画で夫婦役をやらせてもらったことあるんですよ。懐かしいな…。それで推薦するのでいいかも。
―なるほど。では詳しいお話は高橋ひとみさんから伺うということで。本日はお忙しいところ長々とありがとうございました!
●第9回は8月16日(日)配信予定! ゲストは女優の高橋ひとみさんです。
●蛭子能収 1947年生まれ、長崎県出身。漫画家、イラストレーター、タレント、俳優として活動。看板店、ちりがみ交換などの仕事を経て33歳から漫画家に。その 後、TVでも『笑っていいとも!』『スーパージョッキー』といった人気番組にレギュラー出演。現在は07年から放送されている『ローカル路線バス乗り継ぎ の旅』(テレビ東京)が話題でレギュラー共演している俳優・太川陽介さんとの掛け合いも名物に。14年に発売された新書のエッセイ『ひとりぼっちを笑う な』(KADOKAWA)、近著の『芸能界 蛭子目線』(竹書房)『蛭子のゆるゆる人生相談』(光文社)なども好評
(撮影/塔下智士)