8月22日に行なわれた『長渕剛 10万人オールナイト・ライヴ2015in富士山麓』。
昨日配信した「長渕が倒れるか俺らが屍となるか!?【前編】」に続き、英二降臨の“ヤバすぎた第三幕”からを激熱レポート。
長渕剛の新たなる伝説となったライブを感じてくれっ!!
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正直、第三幕は“神タイム”だったーー。
『絆-KIZUNA-』を歌った後、ステージを降りて車に乗り込んだ長渕は中央ステージへ移動。『乾杯』『CLOSE YOUR EYES』『シェリー』を立て続けに!
『乾杯』はもちろん大合唱。その熱気あふれる会場一帯を、フワ~っと優しい風が吹き始めた。そして次の『シェリー』の時なんて、もう絶好調に気持ちの良い風がザワワ~ザワワ~っと吹き抜けたんスよ。歌詞の「お前は風になる」の部分で、誰もが風になった感覚を感じたハズなんですよぉぉ!
そんな記者もトランス状態に入る中、続いてドラマ『とんぼ』好きにはたまらない神MCへ突入。
「剛はさー、『俺がまだ周囲と喧嘩ばっかしてた頃の話でさ…』とトツトツと語り始めたんだよ。そして『とんぼ』の小川英二の名台詞、『ツネ、命、大事にしろよ』って、あの時の声で再現してくれてさあ!」
…と語る40代の男性ファンも完璧にイッちゃってます。しかも、ドラマで交通整理するバイト青年に「これで美味いもんでも食いなよ」って言って一万円を渡すシーンまで再現してくれたんスから…いや~もう、こんなライブ、長渕のライブ史上でも初の演出だよ!
三幕目のラスト『STAY DREAM』では「おまえら~~! 夢を諦めるなよぉぉ」と長渕は絶叫。ぶっちゃけ、もう多くのファンは満腹状態になったはず。
しかし、フィナーレで富士山から朝日を引きずり出さなければ、このライブは終わらない…いや、日本の夜が明けない!と、やはり皆祈ってたはずだ。
昇るか…昇らねえか…どっちかだ…!
■10万人が朝日を引きずり出した!
大感動のフィナーレ。『しゃぼん玉』を歌い上げた長渕がスタッフに向けてギターを放り投げるシーンーーこのギター投げといったら長渕の定番だ。
『Myself』を歌い終わる頃、完全に空が白んだ。この時点で41曲、声が掠(かす)れることなくシャウトし続ける長渕。一体どんな声帯を持ってるんだ!? そして『富士の国』を歌っている最中から雲がなくなり、富士山が姿を現した。
以下、長渕のMCをできるだけ忠実に再現する。
「まずは、富士だぁ~~!!」
「昨日までの2日間は雨続きでこんな朝日が見られなかった。俺はもうどうしようかと思ったよ。でもみんなの力がひとつになってよぉ…!」
「昇るか…昇らねえか…どっちかだ…! 朝日を引きずり出すぞ! みんなで! おい、宮崎! LEDを消してくれよ、偽物が見たいんじゃないんだよ。太陽を見たいんだよ!」
「まだかーー。まだかー! ……日が昇った~~!」(10万人の観衆「うわーーーーーーっ!」)
「富士よ! 聞こえるか! 俺たちを幸せにしてくれ~! 争いのない世界にしてくれ~ 俺たちみんなを幸せにしてくれ~~!」
最後の曲となった44曲目は『明日へ続く道』。“明日への用意をしよう”と何度も繰り返した。突っ伏し倒れても「諦めないで」と。昇る朝日を見ながら、ぽかーんとしてる30代男性ファンがしみじみ…。
「10年以上前の長渕のライブは緊張感そのものだった。MCでこんなシャウトしないし、いつもボソボソ…そのイカつさが良かった。でも今みたく、思いの丈をストレートに嘘のない言葉で語る長渕は、優しいんですよ…」
勝手な憶測はどうでもいい!
■帰宅困難、上等! それでも満足だったよ!
富士山ライブを終えて、ネットでは“帰宅困難”“食料不足”だなんだとマイナスイメージばかりが飛び交った。…でも、行った人間からしたら最高のエンターテインメントだったよ。
かくいう記者も朝6時にライブが終わり、甲府駅に辿(たど)り着いたのは夕方17時。それまで直射日光の下、シートの上でザコ寝したり、大行列の2キロの道のりを牛歩状態で進んだり、ヨーグルト酒をガブ飲みしすぎたか、お腹までピーピィピィと演奏し始めるわで大変な行軍が待っていた。
でもそんな大変さは消し飛ぶくらい良いものが見れたという充足感――。数多くのフェスを経験し、今回も参戦した音楽業界に詳しい情報誌・H編集長も「かなり楽しめた」と感想を寄せる。
「帰宅困難ばかりが取り沙汰されてるけど会場セレクトは大正解。この時期のここの夜は最高に快適で、また来年も同じ時期に誰かにやってほしいくらい。サウンドシステムも良好で、かなり後列で聞いていても楽しめる音でしたよ」
-一部ネットで食料不足だなんだと騒いでますが、本当に行った人間が書いてるのか?って感じですよね。
「ですね。フードエリアはフェス飯としては最高レベルで数もバリエも豊富。トイレや案内もかなり過酷になる覚悟をしてたのにほとんど問題なしでした」
-実際、ライブ自体はどうでした?
「自分でも驚くことに感動しました。いくつかの名曲をトラディショナルなアメリカンロック調にアレンジしてて、かなり心揺さぶられましたね。まったく知らない曲も多数だったけど良い曲は多くメロディーメーカーとして優れている。ほとんどがシャウトしまくる曲なのに9時間歌い続けて声が枯れるとかもないし。予想以上に大満足でした」
かくして、桜島オールナイトライブ、富士山オールナイトライブと伝説を作り上げた長渕は、今後どこに行くのだろうか…? 会場で聞いたあるファンの言葉が印象的だった。高1の時から長渕ファンだというWさん(41歳・製造業)。
「もうライブ会場の規模や無謀で挑戦的な伝説にこだわらなくて良いと思う。それだったら夏フェスとかにギター一本で出て若者達を圧倒させてほしい。『Myself』とか初めて聴いても泣ける曲。俺がかつて高1で長渕の曲を聴いて全身が震えたように、多くの若者にあの震えを体験してほしい」
そう、“10万人ライブ後は一線から退く”だの“今後は小規模なライブ展開する”だの、すでに多くの勝手な憶測が流れているが、そんなことはどうでもいい。
今回経験して改めて痛感したのは「ライブって、ただ生声を聴きに行くだけじゃなく、その空気感、生声を聴いて何を思ったか。どんなメッセージを受け取ったか」ってコト。それが観客それぞれの心に“明日から頑張ろう”“負けてたまるか!”って思いをこみ上げさせるんじゃね?って。
とにかく長渕には歌い続けてほしい。そしてより多くの人間の心を揺さぶってほしい…!
(取材・文・撮影/河合桃子)