2012年夏より3年間にわたり、キン肉マンが大阪・新世界の街公認キャラクターとなって活動を続けてきた「新世界100周年キン肉マンプロジェクト」。
そのグランドフィナーレイベントが8月29日(土)、同所スパワールドのエントランスに設置された特設リング上で、多くの地元民や『キン肉マン』ファンの見守る中、開催された。
舞台となったリングにはお笑いコンビのバッファロー吾郎のふたりと、漫画『キン肉マン』の原作者であるゆでたまご・嶋田隆司先生が登場。ファンを交(まじ)えてのトークショーや会場全員参加のクイズ大会、イチ推し超人イラストコンテストなどが開催され、期間中最後の週末を大いに盛り上げた。
またイベントのラストには、このプロジェクト期間中、新世界のランドマークである通天閣内に設置されていた「キン肉マンミュージアム」がアーカイブコーナーとして9月以降も引き続き残されること、さらにプロジェクトのシンボルとして街の中に飾られていたキン肉マン、テリーマン、ロビンマスク、ウォーズマン、アシュラマンの超人5体の等身大オブジェもスパワールド内に場所を移して展示され続けるーーという嬉しい発表も。
壇上に立った嶋田先生は「ここ新世界は僕たち、ゆでたまごの原点。子供の頃から親父に遊びに連れてこられ、高校生の頃には相棒(ゆでたまご・中井義則先生)とふたりで串カツを食べに来るようになり、そこで構想を練りながらできた漫画が『キン肉マン』」と感動の第一声。
キン肉マンイラスト大賞に選ばれた女性が描いた超人は!?
続いて、「その地に『キン肉マン』の旗やオブジェが飾られ、ラッピング電車が走るというのはまさに故郷に錦(にしき)を飾った思い。叶うことなら死んだ親父にこの景色を見せてやりたかった。僕がかつてその親父に連れてこられたように、今は僕らの作品をきっかけにして若い人が子連れで来てくれていると聞き、本当に嬉しい。
プロジェクトはこれでひと区切りとなりますが、是非これからもこの街のよさを若い世代にみんなで伝えあい、引き継いでいってもらいたい」とのあいさつで締めくくり、会場からはひと際大きな拍手と歓声が湧き上がった。
イベント中の企画「イチ推し超人イラストコンテスト」にミート君と戦う超人“ミキサー大帝”のイラストを応募し、見事、成人の部で大賞を受賞した弓削田(ゆげた)美波さんは「新世界にはたびたび遊びに来ていて、この募集企画を知りました。何を描くか悩みぬいた末に、ミキサーなのに大帝というすごい称号を持っていて、しかもキン肉マンを倒してしまったこの超人が好きで選びました。
その絵を原作者の嶋田先生に直接見て選んでもらえたのが本当に嬉しいです!」と喜びを爆発させた。
また、大阪府堺市から娘さんと親子連れできたという女性は「主人が『キン肉マン』世代で、娘と一緒に影響を受けてファンになり、ミュージアムやグッズショップ目当てで来るようになった。
今後もミュージアムやオブジェが残されるというのは嬉しいし、今日のイベントで参加した大きな寄せ書きも新しくそのミュージアムに飾られるということなので、是非また娘と見に来たい」と笑顔で語ってくれた。
ちなみに、小学生の娘さんの好きな超人は、『キン肉マンII世』に出てくるスカーフェイスとのこと。子供にⅡ世も浸透しているなんて嬉しすぎですぞ!
大阪での待ち合わせは「ロビンマスクの前で」!?
イベント終了後、改めて嶋田先生に最終日の感想を伺ってみた。
―本日は大変お疲れさまでした!
嶋田 いや、全然疲れてないです。すごく楽しかったので(笑)。
―この街とキン肉マンが密接に関わりを持った3年間を振り返られて、いかがですか?
嶋田 3年前の夏にこのプロジェクトのオープニングイベントを通天閣の地下の劇場でやったんです。その時も本当にたくさん人が来てくれた。そしてあれから3年経って感じたのは、今日もやっぱり同じくらい大勢の人が来てくれてるんですけど、その層が微妙に変わってるんですよね。
3年前は単純に『キン肉マン』が好きだから集まってくれたという人たちが主だったと思うんです。でも今日は3年経ってるのに、客席の年齢層はむしろ若返った。それは僕らの作品の影響だけじゃなくて、新世界という街の方々が他にも若い人を呼び込む努力をすごくたくさんされていて、街自体も本当に綺麗になって来やすくなった。
そうしてここに来た人が、逆に『キン肉マン』を知って好きになってくれるということもあっただろうし、そうやって街が目に見えて活性化していくきっかけというか、お手伝い役に少しなりともなれたというのは、僕ら自身も本当にやって良かったと思ってます。
―ミュージアムや等身大オブジェもこの街に残されることになりました。
嶋田 実は、僕も今日初めて聞かされたことなんですけど、それも嬉しいですね。この3年間で、例えば若いコが待ち合わせる時に昔なら「通天閣の下で」と言ってたのが、「ロビンマスクの前で」(通天閣の下に等身大ロビンマスクがいた)とか言ってくれるようにまでなってきてるらしくて。
そうして街の一部になってきたものがこれからも残るというのは、また『キン肉マン』に会いに行こうと思ってもらえる機会が残るということですから。是非これからもまだまだたくさんの人に見てビックリしてもらいたいですね。本当に僕はここをはじめ大阪という街が大好きなんで、何かしら貢献できるものがあれば、そこに関わってたいという気持ちはすごく持ってるので。本当に嬉しいことです。
―地域の支持率は抜群です。いっそのこと大阪市長選に出ちゃうという選択も!?
嶋田 ハハハ、いいですね。って、ないわ!(笑)
(取材・文・撮影/山下貴弘)