伝説のアメコミヒーローふたりが、ガチンコでバトルするハリウッド実写映画『バットマンvsスーパーマ ン ジャスティスの誕生』が2016年3月に公開される。予告編の映像でもビルが どっかんどっかん爆発するシーンが流れ、超大作の予感がビンビン。

だが日本も負けていない。 ある意味、もっとキケンなニオイのするクロスオーバー作品が、今年10月に公開される。

タイトルは、『サイボーグ009(ゼロ・ゼロ・ナイン) VSデビルマン』。石ノ森章太郎が生み出した9人のサイボーグ戦士たちと、永井豪が描いた悪魔人間・デビルマンがアニメで激突するというのだ。科学の力と悪魔の力のバトル…って、本当に成立するの!?

まずはアニメ評論家・藤津亮太氏に、ふたつの作品を解説してもらった。

「1964年に連載が開始さ れた『サイボーグ009』は、 米ソの冷戦を背景に悪の組織と9人のサイボーグ戦士が戦うという作品です。一方、72年に連載開始した『デビルマン』は、不良やヒッピーと いった当時の若者文化を織り交ぜつつ、人間の正義の心と悪の心の葛藤を描いた物語。 2作の世界観はまったく異なります。

ただ、デビルマンは『マジンガーZ対デビルマン』(73年)で、すでに〝異種格闘技戦〟を経験しています。そし て『009』も『デビルマン』 も最終的には〝神との戦い〟という局面に至ります。今度の作品でも、最後は両者が協力して神と戦う展開になるんじゃないかな?と、個人的には予想しています」

なるほど。それにしても、一体どんな戦いにな るのか。本作を企画したダイナミック企画(永井豪氏が 設立した会社)の永井一巨(いちなお)氏を直撃した。

「えーと、詳しい展開は明かせないんですが…今回のアニメは『009』も『デビル マン』もキャラクターや戦闘能力は原作マンガをベースにしていて、両者が徹底的に殴り合います。でも、サイボーグ戦士たちは強すぎる!  9人もいる上に『001(ゼロ・ゼロ・ワン) 』だ けでもテレキネシス、テレパシー、予知能力と反則的な力を持っている。どう考えてもデビルマンが不利です! そんな難しい企画がフィルム としてどう成立しているのか、お楽しみにといったところでしょうか」

このアニメは〝師弟対決〟でもある

そもそも、この企画はどう やって生まれたんですか?

「10 年近く前に、まだ映像化 されていない石ノ森作品のアニメ企画を石森プロの方たち と一緒に考えるという機会を いただいたんです。その時 に出たアイデアは、例えば、 石ノ森先生の『王(キング)アラジン』 (*)を豪がロボットマンガ に改編して、アニメ化すると か(笑)。中でも、一番ファンの方に怒られそうで、かつ実現不可能と思えたのが、この『009VSデビルマン』 でした。豪に相談した時も『どうせ脚本もできないだろ』って言われたくらいですから。

(*)19 61年から『少年画報』にて連載されたSFアドベンチャー。 南極で発見された怪物「王アラジン」が日本各地で暴れ回る

でも豪は、完成したフィルムを見て絶賛してくれまし た。彼は自身の作品の映像化 には厳しい目を向けます。あ る作品では試写の途中で怒って帰ってしまうということも あったので、ホッとしましたね」

そんな永井先生、実はデビ ュー前に石ノ森先生のアシスタントを務めていたとか?

「はい。『009』の背景も 描いていたそうで、永井にと って石ノ森先生はマンガの師匠。つまり、このアニメは〝師弟対決〟でもあるんです」

果たして、2大ヒーローのバトルは、どんな結末になるのか!?

(取材・文/西中賢二)