借金、裏切り、陰謀…闇社会を描いた問題作で堕ちていく女子高生を演じたのは、あの空手美女!
社会の底辺でもがく男たちを描く衝撃作『木屋町DARUMA』。その中で、父親の借金によりドン底に堕とされる女子高生を体当たりで演じているのが、セゾンの瓦割りCMで知られる武田梨奈だ。
出演作も目白押しで注目の彼女だが、カナダ・モントリオールから帰国した直後にインタビュー、アクション女優としてのキャリアからその殻を破りたいという思い、そして将来の夢までを熱く語ってもらった。
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-今回の「新井友里」という女のコはこれまで演じてきた役と随分違うようですね。
武田 自分だったらどう表現できるか考えた時も、思いつかなかったんですよね。それが悔しくて…。以前、アクション映画じゃないオーディションで、なぜキミはここにいるんだと言われたことがあって…。「アクション=戦うだけ」と思われるのも悔しくて、お芝居に向き合いたい気持ちが強かった時期でもありました。私は代わりのいない人になりたいので(キッパリ)。
興味のあること、やりたいことは絶対トコトンやるタイプなんです。1回手を付けたら中途半端にやるのは嫌いなので、役者業とかアクションに関してはどんなことでもやりたいって思ってます!
-その挑戦がこの役だったと。演じて難しかったところは?
武田 出演シーンは大きく4シーンぐらいなんですけど、どこにでもいる普通の女のコがどん底に堕とされて狂っていく途中経過をどんどん変化を出していかなければならないんです。そこが一番難しかったですね。
最初のシーンが、(四肢を失った主演のヤクザ・勝浦を演じる)遠藤(憲一)さんが家に来るショッキングなシーンで、すごい時間をかけてしまって…。大先輩をつきあわせてしまってどうしよう~となっていた時に、遠藤さんたちが「いいよ! 何回でもやっていいから」って言ってくださって。
-遠藤憲一さんも懇親の演技でしたが、共演していかがでしたか?
武田 すごく優しい方です。でもお芝居になると豹変するというか、アドリブでぶつかってきてくださって。
精神的に一番やられた現場だった
-稽古をつけてもらった感じ?
武田 ホントにそんな感じです! 追い込まれた時に「台詞も流れも全部忘れていいから、もう一回同じシーンやってみよう」って言ってくださって、そこからすごく気持ちが楽になって。
過激なシーンがいっぱいあったので、現場ではお弁当にもあまり手をつけられずにいたんです。それを気にしてくださったのか、共演者の皆さんも「よし、今日は焼肉食べに行くぞ」って連れて行ってくださったりとか。
-一緒に芝居をして役者として得るものが多かった?
武田 得ることしかない現場でしたし、関西弁の役だったので木下ほうかさんがクランクイン前からずっと関西弁の指導をしてくださったり。マンツーマンで、サイゼリアで(笑)。
-あの関西弁がサイゼリアで特訓されたものだったとは(笑)。そういう現場に入って、だんだん役に感情移入を?
武田 感情移入のひと言では言いきれないものがありましたね、今回は。もちろん実際にこんな経験はしてないんですけど、現場の空気感が完全にできあがっていたので。それは遠藤さんやほうかさん、寺島(進)さんが作り上げてくれた空気で、一気にその役に染められたというか、役なのか自分なのかわからない感覚でできました。
-結果、ショッキングな作品に仕上がっていますが。完成作を自分で観て感想は?
武田 精神的に戦っている人たちのお話なので、観終わった後に決して気持ちがよくなる作品ではないと思いますけど、ただ精神的に強くなった気はすると思います。私もこの役が終わった後にすごく強くなったというか、変わりましたね。役者としてもそうですし、なんかもう怖いものはないって思えるような(笑)。
精神的に一番やられた現場だったかなと思います。特に榊(英雄)監督がすごく追い込んでくださって。普段は真面目で優しい方なんですけど、現場に入ると豹変するんです。この現場では名前を呼んでもらえなかったというのがすごく大きくて…。「おい、ブス!」って呼ばれてました(笑)。
-ええっ!?
武田 あっ、でもそれは「友里」として追い込んでくださったんですよ! もちろん終わった後は「武田、よく頑張ったな」ってすごく褒(ほ)めてくださって。監督であり役者でもあるので、気持ちを持っていってくださるのがすごくうまいというか。
志穂美悦子以来のアクション女優
-監督としての上から目線と、役者として同じ目線を持つからこそと?
武田 はい。榊監督でなかったら、ここまでできなかったかもしれないなと思いますね。でも私が取材でこういうことを言うので、それが監督にとってトラウマなのか「本ッ当にすまなかった!」ってずっと謝ってくるんですよ(笑)。別に悪口を言ってるわけじゃないって言っているんですけど!
-撮影後のフォローは手厚い(笑)。ではまた一緒に作品を作りたい気持ちが?
武田 やりたいですし、いつか役者としても一緒にお芝居してみたいです。監督も『VERSUS-ヴァーサス』 って映画でアクションとかやられたりしているので、アクション物もできたら面白いかも!
-達成感が伝わってきますが、これまでにも「やり切った」と自信につながる出来事はありましたか?
武田 そうですね…。17歳の時に『ハイキック・ガール』をやった時は、アクション女優という肩書の人がいないと言われていた時期で、道がなかったというか不安しかなかったんですけど。でもひたすら稽古してずっとやってきて、最近だんだんアクションをやる方たちも増えてきて。「志穂美悦子さん以来いなかったアクション女優というものを武田がまた作り上げてくれた」と言ってくださる方がすごくたくさんいるので、やってきてよかったなと思いますね。
-アクション業界を引っ張っていく!くらいの意気込みでいきますか。
武田 いやいや全然恐縮ですけど! でもそう言ってくださる人たちがいると、胸を張って頑張っていけるなって思いました。
-ちなみに、共演してみたい女優さんはいますか?
武田 タイの(『チョコレート・ファイター』主演で知られる)ジージャー・ヤーニンさん。昔からテコンドーとかムエタイをやっている選手で、ノーCG、ノーワイヤー、ノースタントでやっている世界でトップのアクション女優と言われている方です。以前、対談させてもらったんですけど、いつか絶対競演しようって約束しているので実現したいです!
-明日は韓国でドラマの仕事、その翌日はミャンマーで映画のお仕事…と、今回の映画で磨いた演技力も加えて、世界に向けての準備が着々と整っている感じですね!
武田 いつどんなチャンスがきても掴めるように頑張りたいです。
女子っぽいところ、どこですか?
-アクション女優として、しょこたん(中川翔子)にもキックを絶賛されたりと、すっかり強い女のイメージですが。実は私、こんなところがカワイいっていうところは?
武田 それがホントに1コも出てこないんです。マネージャーさんやスタイリストさんに「私の女子っぽいところ、どこですか?」って聞いてもみんな黙りこむという…(笑)。でも最近、弱点が1コあったと思って!
-おぉっ、弱点!?
武田 私、痛みにはすごく強いんですよ! 殴られたりとかは全然耐えられるんですけど…。
-は、はい。
武田 くすぐりが本当にダメなんですよ。首を触られたり、脇腹をやられるとダメなんです。本気でキレるぐらい!
-いや、キレられても…怖いですし(苦笑)。
武田 ああ、他に何かあったかな(焦)。あっ、最近「オーガニック」を覚えて。『進撃の巨人』で共演した方に現場で教えていただいてから化粧水をオーガニックにしたんです。今まで300円とか400円の化粧水を使っていたんですけど、2500円くらいにレベルアップしました!
-えーっと、「カワイイ」と思います(笑)! では最後に、今後の夢は?
武田 今、日本以外にアジアでも作品に出させていただいていて、ちょっとずつ海外との交流も深まってきているので、いろんな国でお仕事をしたいなっていうのと、いつかは日本と海外との架け橋になれるような存在になりたいですね。
(取材・文/明知真理子 撮影/五十嵐和博)
◯武田梨奈(たけだ・りな) 1991年6月15日生まれ 神奈川県出身 10歳から空手を始め、琉球少林流空手道月心会黒帯を持つ。08年『ハイキック・ガール』のオーディションで主演の座を獲得。以後、映画、ドラマ、CMなどで活躍し、今夏には『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』にも出演。現在、日本×ミャンマー合作映画『ヤンゴン ランウェイ』の主演も決定し、世界的女優として活躍の場を拡げている。最新情報は公式サイトにて。 http://www.sma.co.jp/artist/profile/index/147
◯『木屋町DARUMA』 あまりに過激で大手出版社が軒並み刊行を拒んだという丸野裕行の発禁小説を完全映画化。京都の歓楽街・木屋町の裏社会を束ねていた勝浦は、5年前のある事件で両手両足を失ってしまう。以来、その異形で恐れられる取り立て屋として生計を立てていたが、5年前の事件に疑問をもった勝浦の世話役の坂本が過去を嗅ぎ回り、やがて真実を知ることになるのだが…。裏社会でもがく男たちとそれに翻弄される女の生き様を熱く深く描く問題作。10月3日(土)より渋谷シネパレスほか全国順次ロードショー。詳しくは公式サイトにて。 http://kiyamachi-daruma.com/
((c)2014「木屋町DARUMA」製作委員会)