サウザンド・サニー号に乗って登場する麦わらの一味は圧巻!(c)松竹株式会社

日本最大のヒット漫画と伝統芸能の融合! 10月7日よりスタートして、各方面でも話題のスーパー歌舞伎Ⅱ『ワンピース』

東京・新橋演舞場で行なわれている公演を実際にその目で見てきた記者の感想は…「『ONE PIECE』ファン、さらには歌舞伎未体験の初心者にはうってつけの舞台である」ということ。その10大ポイントを一挙に紹介する!

1 セリフはすべて現代語! おなじみのストーリーで難しさ一切ナシ!やはり歌舞伎というと、ズブの素人には敷居(しきい)が高いというか、予備知識ナシには楽しめないイメージがつきまとうもの。だがご安心あれ。スーパー歌舞伎シリーズは、そんな初心者でも楽しめるよう、セリフはすべて現代語。会話のスピードも現代劇と同じテンポで展開されるので「セリフがわかりにくい」「ストーリーが頭に入ってこない」といった心配は皆無!

さらに、物語は『ONE PIECE』の中でも最も有名なエピソード・頂上戦争編。ファンならばおなじみのエピソードであるだけに、ストーリーも自然と頭の中に入ってくる。目の前で繰り広げられるお芝居を、じっくりと楽しむことができるのだ。

2 宙乗り、本水(ほんみず)、そして大立ち回り! 歌舞伎の文法を活かしたダイナミックなシーンの連続!江戸時代より娯楽(ごらく)の粋を極めてきた歌舞伎には、驚くべき演出の数々が受け継がれている。スーパー歌舞伎では、それらの技法を惜しげもなく繰り出し、見る者をアッと言わせるシーンを披露!

役者が宙吊りになり、頭上を自在に舞う『宙乗り』、舞台上で本物の水を使う『本水』、そして『立ち回り』と呼ばれるアクションシーンが、息もつかせぬ勢いで続いていく。そのド派手な展開に、退屈するヒマはナシ!

(上)宙乗りをする市川猿之助演じるルフィ。(下)革命軍イナズマとインペルダウン監獄署長・マゼラン、副署長ハンニャバルが対峙するシーンでは大量の水が!(c)松竹株式会社

ルフィのゴムゴムの能力はどう演出!?

3 和のテイストで再構築された、豪華絢爛(けんらん)な衣裳は必見!さらに、見逃せないポイントといえば豪華な衣裳だ。歌舞伎ならではの和風の解釈が加えられた、各キャラクターの衣裳も思わず見とれてしまうものばかり。ナミの衣裳も花魁(おいらん)風となり、着物の柄には肩に刻まれた、みかんと風車(ナミの故郷・ココヤシ村の象徴)のタトゥー柄が取り入れられるなど、遊び心もバッチリだ。

また、海軍三大将の衣裳も甲冑(かっちゅう)風にアレンジされたり、インペルダウンの看守たちの制服も裃(かみしも)に変更されるなど、歌舞伎ならではのアレンジが加えられている。そのこだわりは、ニューカマーランドにいるオカマメイドなど、細かい役柄に至るまで徹底して貫かれている。

4 主演男優・主演女優に助演男優・さらには監督までをも一人で兼任! 四代目市川猿之助の超人的エネルギー!!今回、主役の市川猿之助はルフィ役、ハンコック役、さらにはシャンクス役の一人三役に加え、全体の演出も担当している。これは、映画にたとえれば主演男優・主演女優・メインの助演男優に監督までをもひとりで兼任するようなもの。全盛期のジャッキー・チェンも主演・監督を務めていたが、それを上回る『代打オレ』状態なのだ。

さらに舞台上では、ルフィとハンコックがやり取りするシーンでは早替わりを見せ、連日喝采(かっさい)を浴びている。まさに全身全霊をかけて舞台に取り組む姿は、ファンならずとも心が熱くなるはずだ。

ルフィのゴムゴムの実の能力を多数の腕をつないで演出! (c)松竹株式会社

5 座長を支えるベテラン・若手に現代劇俳優! 新生・澤潟屋(おもだかや)の圧倒的チームワーク!

先代から猿之助の名を継いで3年。今回の『ONE PIECE』に挑む猿之助を支えるのが、強力な共演者達だ。長年に渡りスーパー歌舞伎に出演してきた市川右近(うこん・白ひげ役)をはじめとするベテラン歌舞伎役者、歌舞伎の未来を背負って立つ坂東巳之助(みのすけ・ゾロ役他)・中村隼人(サンジ役他)らの若手勢に加え、猿之助がこれまでに共演してきた現代劇の俳優達も参戦。

TVドラマ・映画などで活躍する人気若手俳優の福士誠治(エース役)や、こちらもTVドラマや舞台でも長年活躍している浅野和之(センゴク役他)らが、猿之助を強力にサポートしている。中心人物の代替わりにより若返りを果たした猿之助一門・澤潟屋(おもだかや)の高いチーム力が、この前人未到の試みを支える原動力となっているのだ。

真ん中は、オカマキャラのイワンコフ役など務め、観客を驚かせた俳優の浅野和之さん。(c)松竹株式会社

観劇した尾田先生、猿之助と対面して?

6 原作ファンなら納得を通り越して涙! 圧倒的なストーリー考証終盤、ルフィに覇気を教えるために登場したレイリーが、その力を利用して厚くたれ込めた雲を晴らすというシーンがある。原作ファンなら「ハテ? 覇気ってそんな使い方あったっけ」と思わず首をかしげるところだが…実はあるのだ!

エース救出に向かおうとする白ひげとシャンクスが会談した際、それぞれの覇気が激突して、天が割れるというシーンがあったのを覚えているだろうか? このシーンは、それを元に作られていたのだ。一見、荒唐無稽(こうとうむけい)に感じられるシーンだが、その裏には徹底したストーリー考証が生きている。「原作ファンが納得できない展開は作らない」という並々ならぬこだわりと意気込みが、全編を通して貫かれているのだ。

 舞台ならでは!? オリジナル要素を楽しもう!徹底したストーリー考証が行なわれているとはいえ、壮大なエピソードを舞台として成立させるため、こまかな部分では様々な設定の変更が行なわれている。ルフィと幼少期を共にしたサボや、彼を救出したトラファルガー・ローは今回出番なし。さらに、インペルダウンに収監されていた囚人で中心的な活躍をするバギーは、チョイ役へと変更されている。

ここで、記者が注目したのは白ひげ海賊団の面々。マルコやダイヤモンド・ジョズ、花剣のビスタといった主要な部下に混じって、ひとり三色モヒカンの見慣れないヤツが…! これはどう考えても、今年大ヒットした『マッド・マックス 怒りのデス・ロード』へのオマージュではないか!? そういった遊び心を感じさせるシーンの数々も、舞台をより楽しませるためのアクセントとして機能している。

8 主題歌を、ゆずの北川悠仁(ゆうじん)氏が提供!歌舞伎に主題歌…とはこれまた前代未聞! 全編を通して流れる主題歌『TETOTE』を、人気フォークデュオ『ゆず』の北川悠仁が作曲・提供している。猿之助とかねてから交流のあった北川が、スーパー歌舞伎Ⅱ『ワンピース』の構想を打ち明けられ、曲を依頼された…とのこと。

友情が結んだ主題歌は、クライマックスのひとつでもある宙乗りのシーンでも流れ、舞台と観客が一体となる大きな手助けとなっている。異例の豪華なテーマ曲も、今作の欠くべからざる要素のひとつなのだ。※主題歌を収録したCDは、劇場内の売店で好評発売中。

9 原作・尾田栄一郎先生も絶賛! 21世紀歌舞伎のニュースタンダードとなる名作!スーパー歌舞伎Ⅱ『ワンピース』を観劇した尾田先生も、その内容を絶賛! 終演後、楽屋へと向かった先生は猿之助と対面した際、言葉を交わすよりもまず、強いハグでその感謝と感動を伝えたという。

原作者も絶賛・納得の出来栄えであるだけに、『ONE PIECE』ファンにとっても楽しめること間違いなし。さらには大阪・福岡での公演も決定。今後も再演を繰り返していくであろう新世紀のスタンダード作品であるだけに、貴重な初演を見ておけば今後自慢できるのは確実だ!

尾田先生が語る、漫画と歌舞伎の共通点

尾田先生が『ワンピース歌舞伎』のために描き下ろした麦わらの一味(c)尾田栄一郎/集英社

10 食事&ティータイムを交えながらの観劇は、デートにも最適!そして! 最後にオススメしたいポイントは『女のコを誘いやすく、デートに最適』だということ。上演時間は約4時間半とほぼ半日。お気に入りのコと長時間過ごせるだけでなく、その間一緒に盛り上がれるのは確実!

合間には約30分の休憩が2回挟まれるので、近くのデパ地下などで買い込んできたお弁当を準備しておけば、ポイントアップも狙えるぞ。終演後は、感想を語り合うため近くで食事か一杯…とくれば、完ぺきなデートを演出できる。ぜひ、気になるあのコを誘って観に行こう!

そして、最後に原作の尾田栄一郎先生のコメントを!

「漫画というものが生まれた日を断定する事はできませんが、『戯画』をその起源とするなら平安、江戸の絵師達の絵にはすでにセリフが書き込まれていて、コミカルな一場面を表現しています。ONE PIECEという作品も子供達の一息のひまつぶしにと描き始めたものですが、近年では、あまり年齢、国、関係なく幅広い層に受け入れていただいています。

一方、歌舞伎は日本の誇る格式の高い伝統芸能。そんなイメージがありますが、元より大衆に向けられ、世に反する『かぶき者』達を描く事に端(たん)を発した総合芸術。

実は僕の目には、歌舞伎役者の方々が、海賊に見えてしかたないのです。永い年月、ほとんど相容(あいいれ)る事のなかった二極の文化ですが、“海賊というかぶき者”を軸にして、うまく融合できるかも知れません。それは今から皆さんの目で確かめてください。

市川猿之助さんを始めとする素晴らしいスタッフがその世界を現実のものにしてくれます。どうか足元にご注意を。ここは海。今は“大海賊時代”。楽しんでいただければ幸いです。」(『スーパー歌舞伎Ⅱ ワンピース歌舞伎』パンフレット 尾田先生コメントより、一部省略、文字表記はパンフレットのママ)

●11月25日(水)まで東京・新橋演舞場にて公演。来年2016年3月1日~25日(大阪公演)、次いで4月2日~26日福岡公演が決定。詳細はホームページにて http://www.onepiece-kabuki.com/

(取材・文/渡邊一郎【キャラメル・ママ】 (c)尾田栄一郎/集英社・スーパー歌舞伎Ⅱ『ワンピース』パートナーズ)