間違いなく、2015年のアイドル界、最大の衝撃!
先日、1stアルバム『3776を聴かない理由があるとすれば』を発売した、3776(みななろ)。富士山の標高=3776メートルが名前の由来という“富士山ご当地アイドル”だ。
あのPerfumeをいち早く発見した掟ポルシェ氏や、アイドルものに強いタワーレコード新宿店なども激プッシュ。アイドルっぽくないヘンな曲なのに、なぜかカワイいという不思議な世界観で耳早いファンを巻き込んでいる。
現在、3776の唯一のメンバーとして活動する井出ちよのちゃん(14歳)とプロデューサーの石田彰氏をライブ後に直撃した!
―今回の1stアルバムが素晴らしすぎて、毎日ヘビロテしてます!
井出ちよの(以下、ちよの) おぉ! 申し訳ないっ!
―申し訳ない…? ライブ後でお腹もすいてると思うので、とりあえず何か注文をどうぞ。
ちよの いやいやいや、水でいいですっ。
―…一応、喫茶店なんで、飲み物とケーキでも注文してもらえますか?
ちよの じゃあ、烏龍茶とモンブランを…。申し訳ないっ!!
―「申し訳ない」が口癖なんですね(笑)。まずは3776のことを紹介してください。
ちよの はいっ。3776は富士山ご当地アイドルとして地域活性化のために活動しています! でも地元のファンが少なすぎて、地域活性化できてるのかどうかはわかりません(笑)。
―でも地元・富士宮市で行なっている定期ライブは、今のところほとんどのお客さんが遠方から来てくれる人たちなんですよね。
ちよの そうなんです。
すっかり洗脳されました
―今、音楽好きのアイドルファンから徐々に火が着きつつある3776ですが、「曲が変わっている」とよく言われますよね。
ちよの はい。ちょっとヘンな曲ばっかりなんです。曲の中に“3・7・7・6拍子”の変拍子が入ってたり、歌詞がちょっとおかしかったり。歌うのも難しくて、ライブの時は音程をハズしまくりですね。
―過去のライブ動画を見たんですが、新曲を歌った後に「ポカーンとしないでください」って、ちよのちゃんが言ってたのが面白すぎて。
ちよの あの時、会場の後ろのほうの人たちが死んだ魚のような目をしてたんです! 大抵、3776を初めて聴いた人の反応は「変わってるね」か「出直すわ」の2種類に分かれますね。
―アイドルっぽく盛り上がる曲じゃないので、初めて聴くとシュールに聴こえるんでしょうか。ライブの雰囲気も独特で、ミックス(ファンが曲中で叫ぶ「タイガー! ファイヤー!…」というアレ)をなぜか囁(ささや)き声で打ってる人がひとりふたりいる以外は、みんな静かに聴き入っていて。
ちよの 変拍子が多いからミックスを入れづらいんだと思います。3776のファンは、みんな静かに、のそーっと集まってくれる感じですね。
―のそーっと(笑)。
石田彰プロデューサー(以下、石田) たまにアイドルが何組も出るようなイベントに出ることもあるんです。そういうイベントだと、お客さんもずっと叫んでると疲れるし、3776みたいに“箸休め”的なアイドルもいてもいいのかなって最近は納得してるんですが(苦笑)。クラブにたとえると、メインフロアじゃなくて、アンビエントがかかってるチルアウトルーム、みたいな。
ちよの たぶん、そういう役割ですね。よくわかんないけど。
―なるほど(笑)。ちよのちゃん自身は3776みたいな音楽は好きですか?
ちよの 好きです! というか、活動を始めた頃はアイドルとか全然知らなかったので、「これが普通なのかな?」って思ってたんです。石田さんにだんだん洗脳されたんですよ。
石田 洗脳はないでしょ(笑)。
ちよの あるんですよ! あと、こういう曲を歌ってると、変わった音楽が好きなファンの方が集まってくるんです。それでファンの方からいろんな“楽曲派”のアイドルをオススメされて、私もすっかり洗脳されました。
自覚してないだけでヘンな曲ばっかり
―楽曲派アイドルとは、ざっくり言うと「音楽性にこだわりを感じさせるアイドル」をさす言葉ですよね。ちよのちゃんは元々、どんな音楽が好きだったの?
ちよの 洋楽をすごい聴いてました。マイリー・サイラスさんとかレディー・ガガさんとか、ケイティ・ペリーさんとか。お母さんが洋楽好きなので、ちっちゃい頃から聴いてたんですよ。
―もしかして、音楽一家?
ちよの う~ん。おじいちゃんはカラオケの大会で何回も優勝してるそうなんですけど…。なんか、カラオケボックス主催のおっきい大会でも優勝したって言ってました。ウソかもしれないけど。
―ちよのちゃんも歌がうまいので、きっとホントだと思いますよ(笑)。石田さんに伺いたいんですが、元々、U2やポリスを聴いて音楽を始めたそうですね?
石田 はい。最近のバンドではバンプ・オブ・チキンなんかが好きです。
―3776の曲とは似ても似つかない! 楽曲派と呼ばれるアイドルのひとつの特徴は、過去のトガッた音楽からの影響をはっきり感じさせるところにあると思います。3776の曲を聴いた時も、PILや突然段ボールなどのニューウェーブ、ジーザス&メリーチェインなどのシューゲイザーの影響を感じたんですが…。
石田 いやぁ…。そうやっていろんなバンド名をあげてもらうんですけど、僕自身はほとんど名前も知らないんですよね(苦笑)。僕は元々、AKB48みたいなアイドルがやりたくて、チームMⅡという3776の前進にあたるグループを作ったんです。チームMⅡの頃は普通のアイドルっぽい曲も半分くらいあったんですが。
ちよの アイドルっぽかったですかぁ? やっぱりちょっとヘンな曲ばっかりでしたよ。本人が自覚してないだけで。
石田 えー、そうかなぁ…?
―まあまあ(笑)。いわゆるアイドルっぽい弾けた曲は確かに多かった気がしますが、それがどうして今みたいな不思議な音楽性になったんですか?
石田 せっかく「3776」という数字だけのグループになったので、3・7・7・6拍子を入れてみたり、ちょっと面白いことをしてたら受け入れてくれる人が意外に多かったんですね。だからそっちの方向に進んだんだと思います。僕は「俺の曲を聴け!」っていう感じでもないので、誰も楽しんでくれなきゃ、こうはなってなかったです。
ちよのがいたからこうなった
―「変な曲」とは言われますが、歌詞も音の世界観も、ちよのちゃんが歌ってこそカワイくなる、高度なアイドルポップスだと思います。『3.11』や『避難計画と防災グッズ』という曲なんかは、実際に今の時代に中学生でソロアイドルをやっている、ちよのちゃんに完璧に“当て書き”して作ってますよね。
石田 はい。曲は基本的に歌うコをイメージして作ってます。だから3776の音楽がこうなったのは、ちよのがいたからだし、結局、本人が納得してやってくれてるからこんな変わった曲になったと思うんですよね。これで結構、本人もまんざらでもないみたいで。
ちよの それはアレですよ、私が普通のアイドル曲をやっても売れないから、だったらこういう変わった曲でもいいかなって思ったからですよ。
石田 ははは(苦笑)。しかも、ちよのは怖いもの知らずなんです。普通に考えたら恥ずかしがりそうなことも物おじせずにやってくれて。『避難計画~』にもおばさんが喋ってるようなセリフが曲の後ろに入っていますが、そういうのは本人が自分で考えてきてくれたものなんです。
―ちよのちゃんはお芝居をしたり、表現することが好きなの?
ちよの はい、好きですっ! ちっちゃい頃からお母さんとミュージカルをよく見てました。映画とかアニメも好きです!
―アイドルは?
ちよの 好きでした! 詳しくはなかったんですけど、よくTVの前で歌ったり踊ったりしてるコだったから、幼稚園の頃からずっとアイドルになりたかったんです。
◆この続き、インタビュー後編は明日配信予定!
(取材・文/西中賢治 撮影/佐賀章広)
■3776(みななろ) “富士山ご当地アイドル”として活動する、井出ちよの(2001年5月3日生まれ)のソロユニット。10月28日、1stアルバム『3776を聴かない理由があるとすれば』を発売。2016年1月16日に、東京・渋谷のO-nestにてワンマンライブを開催予定! 公式サイトもチェック http://m3776.com/