スウェーデンから2011年に来日して早4年のオーサさん。日本語もほとんど完璧!

日本在住のスウェーデン人漫画家、オーサ・イェークストロムさんが感じる、日本の不思議を描いたコミックエッセイ『北欧女子オーサが見つけた日本の不思議』の最新2巻が刊行された。

1巻は発売前に重版決定、2巻も発売直後に重版が決まり、1、2巻ですでに累計10万部突破と売れている。

日本の漫画と出会い、13歳から絵を描き始め、スウェーデンで漫画家・イラストレーターとして仕事をしていたが2011年に来日し日本語の語学学校へ。卒業後、デザイン専門学校に通いながら描いた漫画で一躍、ブレイクを果たした経緯とは…?

―スウェーデンの通貨って、クローナでしたよね。10万部の印税を円からクローナに換算すると?

オーサ はい、クローナです…え!? それは言えません(苦笑)。

―ですよね(笑)。それだけ売れたら生活が派手になったりするのかと思ったんですが、今も変わらずシェアハウス住まいですし、生活に大きな変化はなさそうですね。

オーサ 仕事が忙しいですから、変わりません。ただ、お弁当を買う時や旅行をする時に問題がなくなりました。日常の中でお金の心配がなくなるのは素晴らしいことだと思います。

―外国に居住して金銭面が貧しいと不安になりますよね…。学生の時はどうでした? スウェーデンで働いて貯金をした後、来日したとのことですが、その貯金が減るストレスも?

オーサ 円の高さ(為替レート)も関係がありますよね。でもスウェーデンは借金制度があります。返さなきゃいけませんが、月に3万円もらえます。

―さすが高福祉国家! 貯金の目減りを気にしないで勉強できるのは羨ましい限りです。

オーサ 誰でもどこの国でも勉強できる、素晴らしいところですよね。

―その母国を出てまで日本へ来た原動力は漫画かと思いますが。最初は13歳で観たアニメ『美少女戦士セーラームーン』との出会いがあって…そこまで衝撃的だった?

オーサ あの頃のスウェーデンでは、女性向けのコミックスがほとんどありませんでしたので、初めて観た女性向けの作品でした。

―どんな漫画があったんですか?

オーサ 馬のコミックスくらいですね。馬に興味がないと面白くないです。

―内容の想像ができない(苦笑)。母国ではストーリー漫画『さよならセプテンバー』で単行本も出されていますが、なぜこの『北欧女子』から4コマを描き始めたんでしょう?

オーサ デザイン専門学校の宿題のためです。インターネットコミュニケーションという授業で、自分でブログを作って半年間、毎日更新しないといけませんでした。日本語があまり上手でありませんでしたので、ブログの内容を4コマ漫画にしました。

―それがコミティア(オリジナル同人誌の即売会)で販売し、イベント当日にKADOKAWAメディアファクトリーへ売り込んだ元の原稿なんですね。アメブロへ移動したのはなぜですか?

オーサ 読者のフィードバックを聞きたかったからです。(コミティアで知り合った)編集さんのアドバイスで、日本で一番人気があるブログのアメブロにしました。

―なるほど。そのコミティアで担当編集がついたんですね。

オーサ でも、その時点ではまだデビューは決まっていませんでした。

―青田買いということですよね。4コマへの転換は難しくなかった?

オーサ 逆に簡単といいますか。ストーリーのほうはコマ割りが大変でしたから。ただ、4コマでも背景をしっかり描こうと思いましたので時間はかかってしまいました。

担当編集者にネタをボツにされて…

TV出演やネットの仕事も増えてきたが「向いてない(笑)。緊張しちゃいます」だそう

―スウェーデンに4コマ漫画文化はあるんですか?

オーサ ありますが、西洋は横にコマを並べる方式で、コマの数は1コマでも2コマでも自由に描いて大丈夫です。私は日本の縦の形式に憧れていましたし、アイデアが多くても少なくても必ず4コマに入れないといけないのも面白いなと思っていました。

―『さよなら~』のリアルな絵柄とは全く違いますが、キャラのデフォルメはどうでした?

オーサ デフォルメは初めてでしたので、本当に集中しないとリアルな絵になってしまいます。1巻はとてもそれを意識して描きました。

―自分をデフォルメしてカワイく描くことに対してはどう思いましたか?

オーサ ちょっと恥ずかしい(笑)。こういうキャラのスタイルは鼻もなく、目もドットになっていますから現実の私から遠いです。年齢も全然わからないですし…。デフォルメはどうしてもカワイくなるから仕方ないですが、担当さんから初めは「もっとデフォルメしたほうがいい」と言われましたね。

―日本の漫画編集の担当制に戸惑いは?

オーサ 逆に担当さんのほうが大変だったと思います。私が何を言いたいのかわからなかったりとか。

―ネタを直された時はどうでした? 自己主張が当たり前の教育を受けているだけに「これは私の作品なのに」と受け入れがたいこともありそうな…。

オーサ 私の場合は意外と出版社や担当さんの意見に頼ってしまいます。というのも、私は外国人なので日本のマーケットや読者に関してはわからないです。ただ、日本語を直してもらった時、私が言いたいことから遠いからまた直すとかはありましたね。

―ネタをボツにされてモヤモヤしたこともない?

オーサ えー、これ面白いのに…と、思う時はありますよ。

―例えば、どんなネタで?

オーサ マスクのことです。私はノーメイクの時にマスクを使うと便利なことを発見して、毎日使っていたら電車で会うクラスメートが体調を心配してくれました。マスクは風邪や花粉症の時に使うものなのに、私が使い方のマナーを守らなかったからボツにされたと思いましたね。

―若いコとかノーメイクの時に使っているし、礼儀は問題ないかと。

オーサ 本当ですか!? じゃあ勘違いかもしれません。この間、仕事で広島へ行った時、新幹線の中で出版社の方が「寝る時にマスク使いますか?」とも言ってくれて。それはプライバシーを守るため…?

―車内は乾燥しているので、喉(のど)のためだと思います。

オーサ …また、わからなくなりました。

アメブロで人気になった理由はわかりません

ここ最近、ほぼ毎日3食お味噌汁を食べるほどハマっているとか

―日本滞在4年の今も日本の不思議はたくさんあるようですね。

オーサ まだまだわからないから、たくさんあります。ですが、慣れましたら日本の不思議がわからなくなると思いますので、その場合は深い研究をするか日本人の考え方など心理的なことを描かなきゃいけないですね。でも自分の話じゃなくてもいいかもれません。外国人の友達と話をすると、みんな面白い経験がありますからね。

―それでもやっぱり自分で経験したネタがいいですよね?

オーサ はい。そのためにはまず家を出る。道を歩いていて面白いものを見ても「へー」くらいしか思えないので、友達と会いますね。

―会うのは日本人と外国人のどちらがいいんですか?

オーサ 日本人の方がいいかもしれません。普通に質問をしても反応が面白いですからネタになりそうです。

―どんな質問をするんですか?

オーサ 例えば、日本人の友達に「一番好きな漢字はなんですか?」とか。だって、聞いたら、「ない」と言われるんですよ。ないことにびっくりしました。私にとって漢字は絵のようなイメージですから、誰でも好きな絵があるんじゃないかと…。

―漢字は英語で“チャイニーズ・キャラクター”ですものね。でもスウェーデン語で同じことを聞かれたら?

オーサ ないと思います(笑)。

―(笑)。本がヒットした要因は、もちろんオーサさんの好奇心旺盛な視点だと思いますが、自分ではどう分析されていますか? 本に描いた「日本人は外国人にどう日本を見られているのか気になる」以外にもありますか?

オーサ まずはコミックスが好きな読者が多いと思います。

―確かにスウェーデンとは母数が違うでしょうね。

オーサ 私が気づいていない面白さもあるんだと思います。例えば、日本語を結構間違えていること。擬音も間違えていますし。それが日本人の読者にとって、カワイい、面白いという魅力になっているかもしれません。あとは、日本でコミックスを描いている外国人が少ないこともありそうです。

―売れると思っていました?

オーサ 思ってなかったからビックリしました! それに、本当に運が良くて、出版前にアメブロで人気になったんです。編集さんも私も何もしていないから、なぜ人気になったかわかりません。

●このインタビューの続き、後編は明日配信予定です。

 

 

 

●オーサ・イェークストロム1983年生まれ、スウェーデン出身。2011年より日本に住み、日本の不思議をテーマに4コマ漫画を描き始める。現在は漫画以外にもトークショーやTVなど活動の場を広げている。ブログで4コマ漫画を更新中【http://ameblo.jp/hokuoujoshi】