静岡県静岡市に国民的人気漫画『ちびまる子ちゃん』のテーマパーク『ちびまる子ちゃんランド』があるのを知っているだろうか?
東京在住の記者は存在すら全く認知していなかったが、静岡市出身の友人に確認してもあっさり「知らない」と返答されたほど…。
だが実は、施設の歴史は意外と古い。1999年、静岡市清水区のベイエリアにある複合型テーマパーク『エスパルスドリームプラザ』内にオープン。2008年にリニューアルしているという。
そして、その『ちびまる子ちゃんランド』に今、「アジアからちびまる子ちゃんのファンが殺到!」というから???
16年の歴史がありながら国内での知名度は決して高くない(はず…)。なのに、本当にアジアからの観光客が殺到しているのか? 今月公開の映画『ちびまる子ちゃん イタリアから来た少年』の宣伝じゃないの…?
そこで、疑惑のみを心に抱いて(苦笑)、新幹線で静岡駅に向かった。
先に答えを言おう。『ちびまる子ちゃんランド』は実際、外国人観光客が多く訪れウケていた!
「平成24年は1万6千人でしたが、今年は5万人。380%増です!」 (株式会社ドリームプラザ代表取締役社長・大井一郎さん)
そりゃ浦安のあそこや大阪のあれに比べれば、小さい数字とはいえ…。(念のため)本当に人気なんですか?
「実は私も異動するまで実感がなかったんですが(苦笑)、本当にすごい人気なんですよ。『エスパルスドリームプラザ』にいらっしゃる観光客のおよそ68%が『ちびまる子ちゃんランド』を訪れています」(前出・大井さん)
アジアでもTVアニメが浸透
以前は韓国人が多かったが、3年ほど前から主に中国人と台湾人に人気とか。とりわけ、台湾では1994年からアニメ放送を開始しているため日本同様に作品が浸透しているという。
「中国でも地方局を入れたら100以上という膨大な数のTV局があるから、毎日どこかのチャンネルで『ちびまる子ちゃん』は放送しています」(訪日外国人向けメディアの中国人記者)。
いずれも日本に負けず劣らず、作品そのものの認知度が高いのが人気の理由のよう。そんな380%増という来訪者の伸び率を支えるべく、おもてなし精神も炸裂。
「団体客には必ずちびまる子ちゃんの着ぐるみがお出迎えしています。また、非売品のうちわのプレゼントもしていますが非常に喜ばれております」(前出・大井さん)
登場キャラになりきって撮影ができる衣装レンタル(1回300円)も好評だそうで、女装を厭(いと)わず、まる子やたまちゃんの衣装を着て満面の笑みを浮かべた中華圏と覚しき男性グループの記念写真が館内に掲示されていた。
「静岡市が台湾の旅行博に参加した時は世代や男女問わず人気で、着ぐるみのまる子が登場すると多くの人が足を止めて写真を撮っていました。現地では静岡とちびまる子ちゃんの認知度は非常に高いんです。東京から静岡まではもちろん、JR静岡駅から『ちびまる子ちゃんランド』への行き方など具体的に質問される方も多くいます」(静岡市観光交流局シティプロモーション課)
現在、静岡鉄道もちびまる子ちゃんのラッピング電車を走らせているが、乗車方法の具体的な問い合わせもあるという。
特に観光客が大量に訪れるのは春節や夏休みなど大型連休で、記者の訪問当日は伺った時間が夕方だったこともあり、さすがに“殺到”というほどの風景は見られなかったが…。
それにしても、いかに認知度が高いとはいえ、なぜそこまで…。日本人がカナダ・プリンスエドワード島で『赤毛のアン』の世界観に浸ったり、フィンランドの『ムーミンワールド』でムーミンと2ショットを撮るのと同じような感覚なのか?
富士山静岡空港がアジアの玄関口に!?
「やはり、中国で観ていたアニメの世界を実物大で体感できるのが魅力だと思います。それに、好きだったキャラが着ぐるみでリアルに現れると興奮して楽しめるんでしょうね」(前出・中国人記者)
また、東京と大阪の中間にある富士山静岡空港が、中国・台湾からの観光客の多くに利用されていることも集客に関係しているとか。中国人の年間出入国は、全国6位の20万496人というデータもある(静岡県発表)。
さらに、台湾人観光客の約80%は富士山静岡空港を使用しており、来年にはチャイナエアラインが静岡―台北線を週6便へ増便を検討しているとか。
エアラインの充実を背景に『ちびまる子ちゃんランド』のインバウンド消費はさらに拍車がかかるのか!?
(取材・文・写真/渡邉裕美)