1年半前よりタレント活動に加え、書家・宇都鬼(うっきー)として活動中のおさるが今年の一字を描き下ろし!

2015年の世相を漢字一文字で表す「今年の漢字」が12月15日、京都の清水寺で発表された。

安保関連法案の採決をめぐり、国民の関心が高まったことや、横浜市のマンション傾斜問題で杭打ちデータ流用で人々が不安になったこと、世界で続発したテロなどで暮らしの安全が脅かされたこと等を理由に「安」という字が選ばれたが…。

そんな中、あのお笑い芸人・おさる書家として活動し始めていた!という話題がネットで大反響。しかも来年の干支は“申(さる)”ということで、嫁でありタレント・山川恵理佳に支えられながら書の道を着々と登りつつある申年生まれの年男、おさるを直撃。そこに至った経緯を語ってもらうとともに、本人にとっての「今年の漢字」を書いてもらった!

-おさるさんは、書道家として「宇都鬼(うっきー)」と名乗り、さらに来たる新年は自分の生まれた申年だそうで、まさに“さる”尽くしですね。

おさる:そうなんですよ! だからこそ、書道家として申年の来年に間に合うように世に出たい! 今日は僕にとっての「今年の漢字」ということで、そういう気持ちを漢字に込めました。

-力強く、心を打つ字です! 初めて書かれたものを拝見しましたが、完全にその道を極める者の字じゃないですか! ところで「蝉(せみ)」って、どういう意味が込められているんですか?

おさる:これはですね、蝉の幼虫のように長年にわたって地中でエネルギーを貯めてきて、今年は書家として地上に頭が出るか出ないかの1年だったので、来年こそはそのエネルギーを爆発させ、世の中に一気に飛び立ち、鳴きまくる年にしたいという願いを込めています。今年でお師匠さんについて7年、右手にすごいパワーが宿っているわけですよ!

-おおっ、すごい勢いを感じます! でも「蝉」って、命が短いことで有名では…。

おさる:カミさん(山川恵里佳)もそこを心配してますけど(笑)。蝉も他の昆虫や動物に襲われなければ、1ヵ月くらいは長生きするんですよ!

-それでも短い気はしますけど(笑)。そもそも書道を始めるきっかけはなんだったんですか?

おさる:「墨」っていう雑誌の連載で書家の松川昌弘先生に指導を受けたのがきっかけだったんですけど、そもそもは母親が書道の先生をしていて、4歳の頃から字をきれいに書く訓練を受けてきました。

-4歳って早いですよ! 書く訓練って、例えば?

おさる:幼稚園から家に帰ってくると、絵本と鉛筆と紙が置いてあって、絵本の文字を写しなさいと。最初は楽しいからやるじゃないですか。でも書き終わったらダメ出しが始まって、遊ぶ時間がなくなるわけですよ! だから、終わらないと遊びに行けない。必死に書いていました。

-結構、スパルタ式ですね!

おさる:そうなんですよ! 小学校の時に40度の熱が出て、病院へ行った時になぜか母が問診票を書いてくれなくて自分で書いたんですけど、すぐに書き直しを命じられて。3回もですよ。理由を聞くと、母親に「人に出すものだよ。自分の1番を出さないとダメ」と怒られました。

アドリブで言ったサルの鳴き声が書家名に?

-そこまでですか…。で、それはいつまで続いたんですか?

おさる:実は母親がそろばんの先生もしていて、中学に上がった時に本の書き写しに加えて、そろばんをやらされそうになったので「やらない! 遊んでくる」って言って、床にそろばんをバーンって投げつけて。家を飛び出してやったんですけど。家に帰ったら、母親が暗闇の中、キッチンでそろばんのコマを拾っていて、その背中を見て悪いことをしたなーって反省しましたが、それ以降、書き写しはしていません(笑)。

-はははっ。書き写しは最後、どのレベルに達していたんですか?

おさる:初めの頃は「ガリバー旅行記」とかで、最後のほうは習っていない漢字がいっぱいありましたけど、夏目漱石の「吾輩は猫である」とか小説でしたよ。

-マジですか!? 大変な少年時代でしたね。それで今、また書道に戻っているというのは結局、字を美しく書くことが好きだったんですか。

おさる:そうですね。サインも筆で書いたり、ネタもすごくキレイな字で清書してましたし(笑)。最近だと、街で看板なんかに書いてある文字を見ると、僕だったらこう書くなとか、なんでこっちにハネたんだろうとか思って。そんな時は立ち止まって、しばらくの間、指で宙に字を書いてますから、傍(はた)から見ると日本語を練習している外国人みたいに見えるかもしれませんね(笑)。

-いやいや、ちょっとアブない人じゃないですか(笑)。ところで書家名の「宇都鬼(うっきー)」の由来は?

おさる:記者から1年半前に「書家名はなんて言うんですか?」って聞かれた時に「ウッキーーで~す!」とふざけて答えたんですよ。その時はボケで、本気じゃないですよ。

それからしばらくして、お師匠さんに会ったら、どうして知ったのかはわからないですが「ウッキー」に「宇都鬼」と漢字をあてた書や、書に押す印鑑まで作ってくれていたんですよ。「おめでとう!」って言われてプレゼントしてもらって…。そもそもはアドリブで言った、サルの鳴き声ですよ。

もう引き返されへんなと思って「いやいや、これは違うんです」って言えないし、せっかく書いてもらったわけだし、「まあいいか」と思って…。

-デジャブ!? 昔にも似たようなシーンがあったような気が…。

おさる:はははっ、占い師の細木先生に改名しなさいって言われて、「なんでも、まあ、いっか」で“モンキッキー”にしたことがありましたね。僕、「まあ、これでいいか」が多くて。

安心しないでください、離婚ありますよ!

-そんなこんなで決まった書家名、奥さんの反応は?

おさる:名前がどうこうよりも「お師匠さんが書家としてやっていいって認めたわけだから、あとは書くだけだよ! アンタの人間性は最悪だけど、でも字は最高だから書き続けて! お金が入ってこなくても私がフォローするから」って激励してくれましたよ。

それで、カミさんはオファーのあった仕事をすべて受けてくれて。深夜の通販番組から、イベントの歌って踊るお姉さんまで…。33歳、2児の母で「えりかお姉さん」って呼ばれるのがキツイって嘆き、「えりかママ」に変えたりしながら頑張ってくれてるんです。そこまでやってくれて家族が不自由なく暮らすことができていますね。

-感動しました! それでも、奥さんからは「アンタの人間性は最悪」って言われているわけで。それってどういうこと?

おさる:なんですかね、ふたりの記念日とか、特に誕生日にプレゼントをあげないからですかね。なんもプレゼントしないわけではなくて、書で「バッグ」とか「ピアス」とか書いて、あげたりしてるんですけど(笑)。カミさんには「番組のネタにはできるけど、本当にこれだけで済ませやがった!」って怒りはあるかもしれませんね。結婚前はちゃんとあげてたんですけどね…

-はははっ。でも奥さんは家族のために頑張ってるわけですから、今年はちゃんとしたほうがいいですよ…

おさる:今年は「靴」を。淡い墨でバーンっとしぶきがちょっと入ったりしてる、書としてはクオリティーが高いやつをプレゼントしますよ!

-いつまでも、そんなことしていたら捨てられますよ!

おさる: 確かに、事あるごとに「あんたみたいな、こんな変わり者はいないよ。私、よく結婚したなと思う。わかってたら結婚してない」とは、よく言われてます。今のところは書道家の道をフォローしてくれていますが「(明るい安村風に)安心しないでください。離婚ありますよ!」って感じです。来年、流行るかな?

-流行りませんよ(笑)! では、おさるさんにとって、書道とはなんですか?

おさる:明日の会心の一文字を生み出すためには、何十年と練習を積み上げて行かねばなりません。そういう意味では、書くことは「生きる道」です。

また、芸人としての目線でいえば「紙の上の舞台」ですよね。やっていて思うのは、究極、TVと一緒。墨をつけて、筆で書くというのは決まっているけど、何をやってもいい。小さく書いても大きく書いても、上下左右も関係なし、ギャグや小話から入ってもいいし、裸で書いてもいい。ただ書を見る人の心を打つ何かがなければダメです。見ている人を感動させてなんぼです。

今年の漢字「蝉」を抽選でプレゼント!

-おおっ、いいこと言ってる気が! ちなみに、おさるさんにとっての奥さんとは?

おさる:(かなり食い気味で)師匠です!! 後ろのチャックついてて、おばあちゃん出てくるんじゃないかっていうくらい、本当に老成した的確なアドバイスを瞬時に言うんですよ! そんなに考えずにパッと言う。

TVに出て不完全燃焼で、家で反省していると「反省しなくていいよ! 反省しても次も同じことするんだから。そんな時間があるんなら字を書いて!」と促すわけです。

僕が「次、出た時に100点の自分を出せなくていいの?」と食い下がると「それでいいんだよ! 65点のおさるが欲しくて、番組は呼ぶんだよ! MCさんがおしいく料理してくれて、100点になるでしょ。大体、100点のおさるなんてあったことある?」と畳掛けられて終了。でも常に僕を納得させて、安心させてくれるわけです。本当にありがたいですよ。

-感謝してるんだったら、クリスマスぐらいは奥さんにちゃんとしたプレゼントあげてくださいよ!

おさる:いや、ないですよ。23日の次に24日が来るくらいの感覚しかありませんから(笑)。書のことしかできませんし!

(取材・文/週プレNEWS編集部 撮影/松井秀樹)

★宇都鬼(おさる)さんの書いた今年の漢字「蝉」を抽選で1名の方にプレゼント!

郵便はがきに、郵便番号、住所、氏名、性別、年齢、職業、宇都鬼(おさる)さんへのメッセージをご記入の上、下記までご応募ください。〒101-8050 千代田区神田神保町3-13-1 集英社 週プレNEWS「宇都鬼の書」係。締め切りは1月27日(水)当日消印有効とさせていただきます。発表は発送を持って代えさせていただきます。応募された方の個人情報を本企画以外の目的で利用することはありません。個人情報の取り扱いには十分配慮しております。

おさる1968年9月19日生まれ。大阪府出身。趣味=バイオリン、大道芸 特技=水泳一級、上級救命技能、パラグライダーA級 ○お笑いコンビ「アニマル梯団」でデビュー、「タモリのボキャブラ天国」(フジテレビ系)でブレイク。その後、”モンキッキー”に改名するも、再び”おさる”に改名。タレントの山川恵里佳との間にふたりの子供がいる。現在、書家の「宇都鬼(うっきー)」としても活動、初応募した「第33回東京書作展」で優秀賞、以降、受賞を重ねる。第35回においては部門特別賞(3011人中上位17人)に。最近嬉しかったのは、東京書作展 選抜作家展2015で、京新聞賞をもらったこと。今年は内閣総理大臣賞を狙う