あの国民的バラエティ番組のスピリットを引き継ぎ“友達の輪”を!とスタートした『語っていいとも!』。
前回、俳優・監督・作家の大鶴義丹さんからご紹介いただいた第15回ゲストは芸人の玉袋筋太郎さん。
水道橋博士と浅草キッドを結成し、長年、多才な活躍。また「全日本スナック連盟」会長であり、格闘技など趣味のジャンルも幅広く、早速プロレスから酒の話までディープに展開した前回だが、2016年初っぱなはーー。(聞き手/週プレNEWS編集長・貝山弘一)
―僕は家では飲まずに平気で、外飲みでだいぶとことんいっちゃうほうですが。年齢は玉袋さんの1コ上で、さすがに最近は次の日の仕事考えて怖いなと。それなりに自粛するようになりましたが。
玉袋 ありますあります。怖いですよ、俺も。あとね、この間、タフな仕事があって「家でようやく飲めるわ」って、もうゴロっとして、グイグイやって。かみさんも「寝るわよ」とか言って、「いいからひとりで飲むわ」って飲んでたら、携帯電話が鳴って見たこともない番号でね。
うるせーな、ゆっくり飲んでるのによーってピッて出て、「もしもし!」って言ったら、「おい!」って。「え、誰?」「たけしだよ、バカヤロー!」つって。はぁいって!(直立に)。殿からの直電で、うん。それもう、サァーって冷めちゃって。ビビりますね、あれは。
―それは一番酒が抜けるでしょうね(笑)。
玉袋 直立不動で、はいはいはいって用件聞いて。ちょっとそれについては語れないことなんですけどね、えぇ(笑)。電話っていうのはびっくりしちゃって。ビシッとしましたねぇ~。わかってたら出ねーよ、怖くて。
―はははは、それ出ないのありなんですか?
玉袋 いやいや、そりゃ出ないといけないんでしょうけど。怖いですよね、しくじったんじゃないかと思って。まぁ、しくじりはなかったんですけど…。でも、そのγ(ガンマ)-GTPって話だとね、俺の親父もアルコール依存症で肝炎患(わずら)ってたんですよ。数値がね、3000ぐらい。
―あっ、それはすごいイッてますね。1500あたり超えたらちょっとヤバい…。
玉袋 スーパーカーですよね、ある意味。γ-3000GTPだっつって(笑)。すごいよ、それ日産の車じゃないんだから。死んじゃった春一番は5000超えてたって。そりゃ死んじゃうよ。
―そんな数字あるんですか! 偏差値だって75くらいまででそれ以上ないですよね…。
玉袋 死んじゃう、死んじゃう。即死だよ、そんなの。だからまぁ怖いよね。
「これ呼ばれたら、俺も死ぬしかねぇ」
―それでも、やっぱり呼ばれてしまうのか、自分の生き様として行かざるを得ないのか。
玉袋 うん。どうなんだろうね。で、どうせだったら安いケミカル焼酎じゃなくてね、高い焼酎飲んだほうがいいのかなと思って。高いワインとか。ケミカル焼酎とか飲んでさ、体壊すとちょっと損した感じするよね。
この間、蒲田のスナック行って、ママさんと話してて。やっぱ工場街のブルーカラーの人達が来るそうなんですよ。で、「俺なんか48だからまだ若いほうなんじゃないの?」って聞いたら、「いや、全然。結構、玉ちゃんなんて上のほうよ」って。「大体ね、うちの客は50代で死んじゃうの」つって、みんなケミカル焼酎飲んで、早く死んでるんだよ(笑)。すげーなと思ってさ。
―確かに昔だったら、そういうヤバい安酒飲んでコロっといっちゃうとかあったんでしょうけど、この時代でも…。
玉袋 そういう英霊達が多いわけですよ…。まぁ、だけどさ、すげーマニアックな雑誌で『酒とつまみ』っていう、こんな小ちゃい本があるんですよ、季刊誌で。それで「酔客万来」ってゲストの対談コーナーがあって、ずっと好きだから読んでたんですよ。でもどうして俺、呼ばれねえかなーって思ってたら、ついに呼ばれて。
嬉しかったんですけど、そのコーナーに出たゲスト3人ぐらい死んでますからね(苦笑)。高田渡(わたる)さんでしょ、中島らもさんでしょ…。こ~れもう呼ばれちゃってるんだな、俺って。
―はははは! それはまたスゴいラインナップですね。
玉袋 最高ですよね。これ呼ばれたら、俺も死ぬしかねぇ。そこの元編集長の大竹(聡)さんっていう人が来てくれてインタビューしたんだけどさ、その人も飲んべえだから、通風で足ひきずってきてるんだよ。それで飲んでるんだ。よくわかんないよね、それ。
―もう、性(さが)というか、業(ごう)だからどうしようもないんでしょうね…。
玉袋 うん、もうしょうがない。業ですね。命削ってるわ~。
―でも正直、親父さんのこともそうですし、自分でも怖さはあるんですか?
玉袋 まぁ、親父は元々、体弱かったりするからさ、戦中戦後っちゅーか、要するに栄養が偏ってる時代だしね。結核やって、肺も片方とってたりする人だから。それに比べると俺はまだ頑丈かなと思ってるんですけどね。
―では、生き様として無頼的な。これでのたれ死んでも本望だみたいな。
玉袋 無頼なのかな。そこまではいってないと思うけどな~。逆にかっこわり~なと思ってきちゃってるし、最近。なんだろ、それもちょっとかっこ悪いよね。
「鬼! 鬼! つえ~つえ~」
―のたれ死んだら、逆に予定調和だろとか?
玉袋 うん、そうそう。やっぱ春一番とか見てるとそう思うもん。『リービング・ラスベガス』(※)になっちゃいけねーなと思って。主人公になっちゃってね。今48だから、50から飲み方変えていくんじゃないかな…。でも、やっぱ連続試合出場記録、10代の頃から飲み出して今まで途切れたことがないっていう記録はさ、続けていきたいって思うんですよ。(※ニコラス・ケイジ主演。アルコール依存症の男と娼婦のラブストーリー)
―家飲み含めて、本当に1日たりとも? 鉄人すぎですね!
玉袋 ないですね。だから、それは本当にすごい鉄人だと思いますよ。だって、世の飲んべえ達ってさ、野球はシーズンオフあるけど、俺たちないんだもん(笑)。
―はははは、確かに(笑)。
玉袋 オールシーズン飲んでるわけでしょ。いや、わっけわかんないもんな~。先週の土曜日も、俺が行ってるラドンセンターあるんだけどさ、サウナ。そこにいるおじさん達もつえーつえー。夕方5時から夜中の3時まで4~5軒飲んじゃって。帰って、もうぶっ倒れて、だめだ~、ツレ~って思ったら朝、ぷるるってメールが入って。12時ですよ。「これから迎え酒やりますから行きましょう」って。「う~行かなきゃ」って。着替えてる俺がいるんだよね、にんまりして(苦笑)。
―鬼の道ですね(苦笑)。
玉袋 鬼! 鬼! つえ~つえ~。
―でも基本的にそうやって、誘われた酒は断らない?
玉袋 断らないですね。もう、いつ何どき何時でも。猪木イズムですよね。
―挑戦されたら受ける、と(笑)。それ、もうできないな~。それこそ、次の日の仕事に穴あけたとか、トラブルしでかすとかヤバいことありそうで。
玉袋 うんうん。でもまぁ今は結婚したからね、起こしてくれるカミさんがいるから大丈夫だと思うんだけど。独身の時はやっぱしくじってミスもしてますよね。
師匠がまだコンサートとかやってる頃、その前の日にダンカンさんと飲んじゃって。気付いたらコンサート終わる時間ぐらいでさ。ほいで、いっそいで行ったら、終わってて打ち上げ会場になってたっていう。「おまえね、ここまで寝坊したら許す。もういいよ」って。
―ええっ、ホントですか。僕も若い頃、出張の前日に深酒して、上司の飛行機チケットまで持ってるのに寝過ごして乗り遅れたってのがありますけど…。
玉袋 ねっ、怖いよねー。でも連れション体質というか、付き合いわりぃなって思われるのも嫌だし。やっぱ付き合いイイやつ好きじゃないですか。
―確かに自分で言うのもあれですけど、寂しがりやなところもあるのか、先に帰りたくないんですよね。
玉袋 絶対やだ! 絶対やだ!
「オヤジ相手だったら400戦無敗」
―自分が最後の人間になるのがよくて。周りが途中で帰るのは寂しいけどしょうがない。けど、逆にそうさせたくないとか。
玉袋 そうでしょ。あと、自分が先に帰った後に、ぜってー俺の悪口言ってるだろうっていう妙な被害妄想とかね、うん。
―そうなんですか(苦笑)。いなくなった後、みんな何か楽しいことやってたら悔しいみたいなのはありますけど。
玉袋 もちろんもちろん、それもありますよ、それもある! 悔しい悔しい。だ~からやだ! 絶対帰らない。
あと、オフの日なんか昼からやっちゃたりするじゃないですか。そのね~背徳感。荻窪に昼12時からやってる店があるんですよ。そこにね、足が向いちゃって。バスロータリーに学生さんがいたり、営業マンがウロウロしてたりとか。それを背にこうね、飲む自分。た~!(嬉しそうに)
でも背徳感もあるんですよ。パッとこう、カウンターの端っこのほうで同じように飲んでるおじさんと目が合って。戦友がいた!みたいなね。無人島に生存者がいたみたいな気持ちになりますよね。
―ちなみに、おっ、玉袋だ!とか気づかれて、変に絡まれたりとか嫌な思いってないんですか?
玉袋 俺、ないですね、基本的に。これだけスナック行ったってないですね。「一緒に飲みて~」「おっ」って感じで入っていっちゃう。こっちから懐(ふところ)入っちゃうんで、そのタックルは速いですよ。グレーシーか桜庭ばりですよ。
―ははは(笑)、総合格闘技でいえば極めてると。オヤジ殺し的な。
玉袋 あ、もう俺は、オヤジ相手だったら400戦無敗ですから。
―あはは、人類最強だぞと(笑)。
玉袋 それは小ちゃい頃からそういう環境にいたからだと思うんですけどね。そこら中で酔っぱらってるオヤジとかいる環境だったんで、うん。本当に憧れてたんですよ、そういう姿に。新宿のしょんべん横丁とかで昼から飲んでる姿とかね。ああいう人達を小学生の頃から見てるわけで。
「俺もああいうオヤジになりてえな~」と思ってたら見事になりましたもんね。…まぁ、玉袋筋太郎っていう芸名もね、俺の宿命ですよ、これ。なんかさ、水道橋博士っていう芸名もらってたら、水道橋博士的な芸風っちゅーか、生き方になってたと思うんですよ。玉袋筋太郎って芸名をもらっちゃったわけだから玉袋筋太郎になっていかなきゃいけねーんだなって、自分のイメージがね。
―名前が自らを作る的な感じですか。
玉袋 そうそう。赤提灯(ちょうちん)でありさ、そりゃもう千住とか赤羽とかそういう生き方じゃないとダメだろうと。やっぱ代々木上原で飲んじゃいけねーだろとかさ。地方行ったら、必ずデリヘルを呼ぶとかね。
「あの孤独はすごいと思うわ、本当に」
―ははは、セットでね(笑)。バリューで。
玉袋 そうなんですよ。ギャンブルはやってなきゃいけねーとか。しかも競馬じゃなくて、競輪じゃねーとダメだとか、昔からあるんですよ、それは。東京なんだけど、巨人ファンじゃなくて、ヤクルトファン、日ハムファンとか。そういうイメージを自分で作っちゃったっていうのがあるんですよね。本名よりつきあい長くなっちゃったんで、玉袋筋太郎が。
―やっぱり高級ワインじゃなくケミカル焼酎飲んでなきゃいけないし(笑)。
玉袋 そうなんだよね。バールなんか行っちゃダメなんだって。
ーまあそれも自ら選んだ道なのか、名前から選ばれた道なのかはともかくとして…。それこそ北方さんなんかも、北方謙三としてのね、ずっと「試みの地平線」的な人生相談を受けてたつぞ、俺はハードボイルドだ!ってイメージを見せ続けている感じがあって。
玉袋 うん! 大変ですよね。なんかファンシーな世界とかさ、サン●オピューロランドなんて行けないわけでしょ?
―ははは、ですよね。やっぱ飲むのは銀座だろとか。六本木も行ってるようですが(笑)。
玉袋 でもそれは俺もね、影響を受けたのは『トラック野郎』のさ、星桃次郎イズムでね。女は買うもんじゃねえといけねーとか、そういうの入ってるんですよね。それもう若い頃から実践してましたから。北方さんじゃないですけど、ソープへ行け!とか。高校時代からね、あるんだよな。
で、この間、やっぱ西村賢太先生と話したんだけど。西村賢太先生も藤澤清造って作家のね、没後に弟子名乗って。のたれ死にした人だから、「賢太先生ものたれ死にだね」とかって。俺ら同じ歳だからふたりで話するんですよ。
―西村さんも風俗の話が結構出てきますよね。主人公に自分を投影させつつ…。
玉袋 そう。で、一緒に飲み出したのが1年半ぐらい前かな。「俺はどうせ52ぐらいで死んじゃうんだから」っていうことを言い出すわけよ。そうすると俺はやっぱ寂しがりやだから、そんなこと言っちゃダメだと。「60になった西村賢太が描く北町貫多が俺は読みてーんだから」ってことをね、涙ながらに語ったことがあったんだけどさ。うん。ちょっとくさい話なんだけど(笑)。
でも、この間、対談したら、やっぱ60過ぎてもやりてえみたいな。作家で書きてえから、のたれ死にはなりたくねえなーってのは言ってましたね。
―その主人公、貫多的なものって、玉袋さん自身も共感するキャラなんですか?
玉袋 う~ん。でも貫多はまぁ、ひとりだからな、言ったって…。俺はやっぱ寄っちゃったからさ。たけしさんというか、その軍団という帰依(きえ)するところに。そういう男的な部分はあるのかもしれないですけど。まぁ、そこまでひどい男じゃねーしさ、ははは!
―そこまでひどくはなれないし。孤独を突き通せない?
玉袋 かー! あの孤独はすごいと思うわ、本当に。つえーなと思って。尊敬しますよね、俺は。
●この続きは次週、1月10日(日)12時に配信予定!
●玉袋筋太郎 1967年6月22日生まれ、東京都出身。1986年にビートたけしに弟子入りし、翌年お笑いコンビ浅草キッドを結成。90年にテレビ朝日『飛び出せ笑いのニュースター』に出場し、10週連続で勝ち抜き、5代目チャンピオンに輝く。自ら立ち上げた一般社団法人「全日本スナック連盟」会長でもあり、スナックという地域の社交場に玉袋が突撃訪問する『玉袋筋太郎のナイトスナッカーズ・リターンズ』がJ:COMテレビにて放映中。また店長となり、スナックの選び方、楽しみ方を教わりながら一緒にお酒を酌み交わす「スナック玉ちゃん」も隔月で開催。現在、TBSラジオ『たまむすび』、TOKYO MX『人生酒場~唄は夜につれママにつれ~』『バラいろダンディ』などにレギュラー出演中
(撮影/塔下智士)