野坂昭如氏について語る、みうらじゅん氏(左)と宮藤官九郎氏(右)

昨年末の12月9日、作家の野坂昭如さんが亡くなった。小説やエッセイの執筆だけでなく、歌手やTVタレント、さらには参議院議員までこなした野坂さんは“元祖マルチクリエーター”とでもいうべき存在だった。

直木賞を手始めに、生前は数々の賞を受賞した野坂さんだが、実は1998年に意外な賞も受賞している。それが「第5回みうらじゅん賞」。

『週刊プレイボーイ』本誌で対談コラム「大人になってもわからない」を連載中のみうらじゅん氏が対談相手の“クドカン”こと宮藤官九郎氏と振り返ったーー。

当時の受賞理由について、みうら氏はこう語る。

「昔から野坂さんの小説は大好きでよく読んでたけど、確かあの当時、昔のレコードが一気に再発されて。それを順番に聴き直してたら、歌手としてもスゴい人なんだなってあらためて思ったんだ。『バージン・ブルース』とか『黒の舟歌』とか名曲だよね。あと、『ダニアース』のCMがあまりにも衝撃的すぎたもんで、これはもう無条件で受賞だねっていう(笑)」

そんな野坂さんに、みうら氏は一度だけ会ったことがあるという。

「80年代の終わり頃かなぁ、『11PM』に呼ばれて出演したことがあって。藤本義一さん、浜村淳さん、野坂さんをはじめ歴代の面々がズラッと並んでる末席に、俺と鴻上尚史さんが呼ばれて。『大島渚を考える』っていうテーマの討論コーナーで、大島さんご本人もいらっしゃったんだけど」

大島さんと野坂さんといえば、大島さんの結婚30周年記念パーティーの席上で野坂さんが大島さんを殴った「野坂の右フック」事件が有名。因縁あるふたりだけに、番組での討論は緊張感のあるものとなった。しかし、その場にいたみうら氏にとっては…、

「いざ討論が始まったら野坂さんと大島さんの直接対決ばっかり盛り上がって、こっちには全然話が回ってこなくて。だけど、ボーッとしてるのも悪いから話に入っていく機会を窺ってたんですよ。すると鴻上さんも同じこと考えてたのか、先陣切って何か発言したんですよ。

そしたら野坂さん、『うるせぇ、バカヤロー!!』って、ひと言で鴻上さんを一蹴しちゃって(笑)。気の毒だなぁと思いつつ、だけど俺も必死だったもんで、今しかないってことで決死の思いで発言したんですよ、『その言い方はヒドいじゃないですか!』って」

そこでみうら氏は、野坂さんに衝撃的なひと言を返される。

野坂氏がみうら氏に発した、衝撃的なひと言!

「すると今度は野坂さん、『おまえみたいなサングラスかけてるようなヤツの話なんて聞きたくねぇんだよ!!』って(笑)」

野坂さんをあまり知らない世代の読者のために説明すると、野坂さんはデビュー当時からサングラスがトレードマーク。当然、TVに出演する時もサングラスをかけていた。

当然ながら、みうら氏も「おかしいでしょ!? つーか、その時、野坂さんだってサングラスかけてたし、なんなら俺、野坂さんに憧れてサングラスをかけ始めたようなとこあったから、ものすごい不条理で(笑)」とその場での内心を明かし、当時を振り返った。

しかし、そうした無茶苦茶な振る舞いすらも「野坂さんらしい」(宮藤氏)とされる、今となっては微笑ましいエピソード。みうら氏も「無頼派な感じっつーかね。まあ、今となっては大切な思い出ですよ(笑)」としみじみ、野坂さんのようにカッコよく長生きしたいものだと語り、その死を惜しんだ。

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(撮影/三浦憲治)