動物学者のムツゴロウさんこと畑正憲氏の集大成ともいうべき新連載コラムが1月25日発売の『週刊プレイボーイ』6号からスタート。
これまで心血を注いで関わってきた動物たちとのエピソードはもちろん、TV、映画などの映像作品や自著でも明かしてこなかった衝撃の事実を綴(つづ)ってくれるということで、御本人に直前インタビュー!
■ゾウのペニスはグニャグニャ曲がる
―いよいよ、新連載『最後のどうぶつ回顧録』が始まります!
ムツゴロウ 僕はね、今まで本当に危険なことは伏せていたんです。命がけなのは当然のことで、なんでも平然とやっているように見せてきました。だからといいますか、例えば、TVでは動物の糞(ふん)や尿を調べているシーンが多くて、一時期は「いつも糞を食べたり、尿を飲んだりしているの?」なんて言われていたんですよ(笑)。今回、"最後の"ということで、これまで「表に出さなくてもいいや」と考えていたことをすべて書こうと思っているんです。
―バラエティ番組などで、ムツゴロウさんが動物に襲われる映像を何度も見たことがあります。スリランカでアジアゾウに振り回され、最終的には踏みつけられそうになった衝撃映像とか...。
ムツゴロウ そうなんですよ! 最近はそんなシーンばかりを切り取って放送されるから、僕はカッカきているんです。野生のゾウだとわかって近づいていったのだから、ぶん投げられるのも当然。でも、そこだけを放送されたら動物の本質なんてわからないじゃないですか。あの時だって、僕は100日間、ゾウの群れと一緒に生活している。そうしたところも一緒に放送してくれないと、どうして僕がそういう行動を取ったのか伝わらないんですよ。
―その通りですよね。でも、どうしてゾウと一緒に過ごしたんですか?
ムツゴロウ だから、そこを書きたいんです!
―す、すみません...。
ムツゴロウ 僕自身、「俺は何をしているんだろう」っていう心の葛藤がありましたし、ゾウが僕をひとつの生き物として認めてくれる瞬間も感じることができた。最終的には、あるオスゾウが僕をメスゾウだと思って恋をしてね。ある時、そのオスゾウが上にのしかかってきて、僕のお尻をまさぐってきたんです。僕もその時に初めてわかったんですが、ゾウのペニスは鼻と一緒でグニャグニャ曲がるんですよ。しかも、ものすごく大きい。
―その後、まさか...!?
ムツゴロウ そこから先のゾウとの恋物語は連載で読んでください。そうそう、オオカミの時も忘れられないなぁ。オスのオオカミが発情のプレゼンテーションをしてきたんです。あおむけで寝ている僕に対して、うまいこと前脚を使って僕をうつぶせにさせるんですよ。ちょうど、メスのオオカミが腹ばいになっているような状態ですね。そこに乗っかってきて、ペニスを僕のお尻にコンコンとやってくる。しかも、そこがピッタリとお尻の穴だった。あれにはビックリしましたね~。
発情期のほうが動物と仲良くなりやすい
―いろんな意味でスリリングです! 発情期の動物に近づくのは危険じゃないんですか?
ムツゴロウ 僕の考えでは、全くの逆。発情期のほうが動物と仲良くなりやすいんですよ。だって、発情するたびに相手を殺していたら、種の保存なんてできないでしょ? 心の中では親密になりたいと思っているはずなので、その感情を引っ張り出してあげると、手のひらを返したようになついてくる。それはどんな動物でも一緒です。
―なるほど。動物に怖さを感じたりしないんですか?
ムツゴロウ 本当によく聞かれるんですけど、僕はそういう時に自分の命のことを考えていない。動物同士、お互い仲間だと思って接していると、たとえ噛(か)まれてもヨシヨシっていけるんですよ。
―以前、TVでムツゴロウさんが野生のアナコンダ(大蛇)に首を絞められるシーンを見たことがありますが、とてもヨシヨシってできる状況ではなかったような...。
ムツゴロウ あの時は野生のヘビがどのようにして人間を捕食して、どのくらいの力で絞め殺すのか調べたかった。そうするには体感するのが一番じゃないですか。これまで僕はいろんなヘビに絞められてみたんですけど、野生のヘビじゃないと本気で絞めてこないんですよ。でも、あの時、胴体に巻きつかれていたら肋骨(ろっこつ)を折られていたでしょうね。首だったから骨が折れずにすみました(笑)。ノドがつぶされるので呼吸ができませんでしたけど。僕は3分間なら耐えられますから。
―普通の人間なら間違いなく死んでいますよ! コラムでは、他にはどんな動物を取り上げる予定でしょうか?
ムツゴロウ ジャガーにチーター、リカオン。それにライオン...まだまだたくさん出てきますよ。
―すでに第4回までの原稿をいただいていて、シロクマとヒグマが登場します。ものすごくリアリティがあって、その場にいたムツゴロウさん以外には書けない内容になっていました。
ムツゴロウ 人間として動物に深入りした場面をぜひ見てもらいたい。TVだと動物の交接シーンを撮っても放送できませんでしたし、奇抜なことに焦点を当てられがちになる。つまり、すべてを伝えきれていないんですよ。僕が体験してきたこと、研究してきたことは人生の宝。それをちゃんと残さないといけないと思いましたし、『週刊プレイボーイ』を通して最後に伝えたいと思ったんです。
―楽しみにしています。ありがとうございました!
(取材・文/高篠友一 撮影/本田雄士)