1996年3月22日、ホラーゲームの金字塔とも呼べる作品が登場した――『バイオハザード』だ。
まるで悪夢にダイブしたかのような没入体験を実現した同シリーズは、世界累計6600万本以上というメガヒット作に。
発売中の『週刊プレイボーイ』11号ではそのエポックメイキングな世界を16Pで大特集! 日本のみならず、世界中を恐怖の渦に巻き込んできた20年を様々な考察とビジュアルで振り返っている。
その中から今回は『バイオハザード』シリーズを統括するプロデューサーである川田将央(かわたまさちか)氏に、制作の裏話や新作へのこだわりを伺ったインタビューをお届けする!
■『4』は永久に完成しないと思った
―川田さんが『バイオハザード』シリーズに初めて携わった作品は?
川田 最初は『3』ですね。ただ、途中からデザイナーとしてお手伝い程度に加わっただけでした。その後は多くのシリーズに加わり、プロデューサーという立場になったのは『4』のPS2版からです。
―『4』といえば、ゲームシステムの改革が行なわれ、アクション要素が飛躍的に上がった作品でした。新たなファンを獲得した一方で、従来のファンからは「ホラー度が下がった」「これはバイオじゃない」という批判もありましたよね。
川田 おっしゃる通りです。でもそれはある程度、想定内でした。初出となったのはゲームキューブ版だったんですが、実は『4』の最大のテーマは“フルモデルチェンジ”。従来の流れをいったん止めて、全く新しいゲームにしようというのが目標だったんです。
初期からのファンの方々が「これぞバイオ!」と思ってもらえるものを作る選択肢もあったのですが、過去のよかったものを拡大生産するだけではシリーズとして停滞してしまうという危機感もありまして。だから『バイオハザード』というブランドを次の10年もしっかり続けていくためには、一度どこかで旧来のものを壊して、新たな面白さを提供する必要があったんですよね。
―実際、『4』はゲームシステム面では特にその後のシリーズの礎(いしずえ)となっていますので、成功と言えますね。
川田 でも正直、『4』の制作中は、永久に完成しないんじゃないかと思うほど開発が難航したんですよ(苦笑)。
最高に面白いもので遊んでもらいたい
―『4』を作る段階でいくつものプロトタイプが存在していて、その中のひとつが『デビル メイクライ』(2001年)として発売されたというのは有名な話ですよね。
川田 そうです、そうです。でも『4』はそれ以外にも、プロモーションムービーを公開するぐらいまでがっつり作っていて、それをいったん完全にリセットしたりもしてるんですよ。レオンが悪夢のような幻覚の世界を進んでいく物語なのですが、もしかするとホラー的な恐怖度でいうと、発売された『4』よりもそっちのほうが上だったかも。
けど結果的に、ゼロから作り直して発売までこぎつけた『4』のほうが、ゲームとしては圧倒的に面白くなったと思っています。
―そういえば、『2』も同じように途中まで作ったものを、最初から作り直したという話を聞いたことがあります。
川田 本当にあともう数ヵ月後に発売しますというところまで出来上がっていたものを「ゲームとしてつまらない」という理由で全却下したらしいです。その幻の『2』もプロモーションムービーを公開していましたが、主人公はクレアとは違う別の女性だったんですよ。
余談ですが『0』でも同じように途中まで開発していたものを一から作り直してますね。その初期にあがってきた『0』のグラフィックが研究途中ということもあり厳しかったので、ボツにして試行錯誤を行なっていましたね。
―一から作り直しとなるとそれまでの制作費がパーになるわけで、客観的にビジネスとしてすごく痛手のように思えますが?
川田 否定はしません(笑)。でもクリエーターは、自分たちが納得できないものを世に出すということに抵抗感が強いんですよ。ビジネスとしての側面も考えなくてはいけないのはもちろんですけど、やはり最高に面白いもので遊んでもらいたいというのが制作スタッフのモチベーションですから。
ただ、面白さというものも多様なので難しいですね。うまくバランスを取っていきたいですが…。『リベレーションズ』と『リベレーションズ2』は原点回帰として、いかに怖がってもらうかに重点を置いて制作していたんですよ。
最新作はとことん振り切った異色作
―その他のシリーズ作品としては、ガンシューティング系の外伝作もいくつか発売されていますし、2012年には『バイオハザード オペレーション・ラクーンシティ』も発売。同作は『2』と『3』の舞台であるラクーンシティのif設定の物語で、プレイヤーはアンブレラ側の兵士となり、クリーチャーや敵対勢力の兵士と戦闘をするという異色作でした。
川田 『バイオハザード』はグローバルで展開しているタイトルですが、ファン層を考えた時に振り幅を広げるゲームがあってもいいだろうと考えました。そういう意味では今年5月に発売する『バイオハザード アンブレラコア』は、シューターゲームの要素をさらに進化・特化させていて、バイオらしくて狭く重苦しいステージで傭兵(ようへい)同士が戦うという対戦ゲームに仕上げました。
『バイオハザード』ブランドの振り幅という意味では相当振り切っていますが、ゲームとしては非常に楽しめる内容に仕上がっていると思いますね。
―シングルプレイモードもあるそうですが、やはり最大の醍醐味(だいごみ)はオンラインによる対戦モードですよね。
川田 ステージは街中や研究所などがあるんですが、プレイヤー同士が遭遇しやすいようにステージの広さ自体はあえて狭めにしているんです。でもその分、立体構造による高さの概念や細部の作り込みなど密度にとことんこだわっていますね。地下のダクトに忍び込んで2階にいる敵を狙撃したりできますし、こんなところまで入れるの!?といった裏道のルートも設定しています。ともかく尖(とが)った作品になってますよ。
―楽しみです! ありがとうございました! 今後のタイトルへの期待も高まる中、世界観を広げ続ける『バイオハザード』シリーズは、30周年までまだまだノンストップで走り続けそうだ。
●『週刊プレイボーイ』11号(2月29日発売)では「『バイオハザード』サバイバルホラーの20年史!」を16Pで大特集!
(取材・文/昌谷大介、牛嶋 健、日下部貴士(A4studio) 撮影/下城英悟)
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